TBS「サンモニ」ジャニー喜多川氏の問題を放送「勇気ある告発にどう向き合うかが問われている」
ジャニーズ事務所創業者のジャニー喜多川氏が所属タレントに性加害をおこなっていたとされる問題で、これまで報道に消極的だったテレビ局に変化が見られる。
TBSの情報番組「サンデーモーニング」は4月23日、ジャニーズ事務所の元所属タレントが「ジャニー喜多川氏から性被害を受けていた」と告発した問題を紹介。コメンテーターの青木理さん(ジャーナリスト)が「こうした勇気ある告発にどう向き合うかは、日本社会全体が問われる課題なんだと肝に銘じなければいけない」と指摘した。
ジャニー喜多川氏の問題については、ジャニーズ事務所が「告発について真摯に受け止めている」などとする文書を関係先に送っていたことが判明。それを受けて、TBSのほか、複数のテレビ局の報道姿勢が変化している。
「ジャニーズ事務所の調査結果に注目しなければいけない」
サンデーモーニングがこの問題を取り上げたのは、番組開始から48分後。直近の一週間の動きを振り返るコーナーで、約1分半があてられた。
「ジャニーズ事務所に所属していた男性が、創業者・ジャニー喜多川氏から性被害を受けたと明らかにした問題。ジャニーズ事務所、問題がなかったなどと考えているわけではない、とする文書を関係先に送っていたことがわかりました」
関口宏キャスターはこのように説明。そのうえで、ジャニーズ事務所が関係先に送った「文書」の内容について、次のように紹介した。
- ジャニー喜多川氏が故人であることから、全ての事実を確認することが難しい
- 告発等については、真摯に受け止めている
- 社員や在籍するタレントのために、相談窓口を設けた
- すでに退社したタレントへの個別の対応についても、準備を進めている
その後、関口キャスターがコメンテーターの青木理さんにコメントを求めると、青木さんは神妙な面持ちで、次のように語った。
「ジェンダーの平等とか性的少数者の人権とか、あるいは、性暴力の問題については、世界的に猛烈な勢いで認識のアップデートが進んでいる。こうした勇気ある告発にどう向き合うかは、日本社会全体が問われる課題なんだと、改めて肝に銘じなければいけない。もう一つ、ジャニーズ事務所が調査結果を発表するということなので、どんな調査結果が出されるのか、我々も注目していかなくてはいけない」
関口キャスターは「はい」と受けただけで、特にコメントしなかった。
ネットメディアがジャニーズ社長の「文書」をスクープ
ジャニーズ事務所が関係先に「釈明文書」を送っていたことが明らかになったのは、4月21日の夜のことだ。
元朝日新聞記者の尾形聡彦さんが編集長を務めるネットメディア「Arc Times」が同日夜、「スクープ」として報道。同事務所の藤島ジュリーK.社長から関係先に送られたとされる「文書」の全文を掲載した。
その後、東京新聞や朝日新聞などの新聞社や通信社が、同様のニュースを報じた。
さらに、翌22日になると、これまで「ジャニー喜多川氏の問題」に対して消極的な姿勢をみせていたNHKやテレビ朝日、日本テレビといったテレビ局も、このニュースを報道した。
元所属タレントの「記者会見」で事態に変化
この問題については、週刊文春が長年にわたり詳細な報道を展開してきた。だが、新聞やテレビはまともに報じてこなかった。
事態が変化したのは、今年3月。英国のBBCが「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」と題したドキュメンタリー番組を配信。ジャニー喜多川氏から性被害を受けたという元所属タレントの肉声を紹介し、反響を呼んだ。
4月12日には、元ジャニーズJr.の岡本カウアンさんが外国特派員協会で記者会見。週刊誌やネットメディア、新聞がその模様を報じた。
朝日新聞は4月15日の社説で「ジャニーズ事務所の対応はきわめて鈍い」と批判するとともに、「メディアの取材や報道が十分だったのか。こちらも自戒し、今後の教訓としなければならない」と論じた。
しかし、テレビ局の反応は鈍かった。NHKが午後のニュースで短く報じたものの、民放各局は全く報じないか、短いニュース動画をネットで配信する形がほとんどだった。
そのような「黙殺」の状態が解かれつつある。元所属タレントの告発を受けて、ジャニーズ事務所が動いたことで、ようやくテレビ局も重い腰をあげた格好だ。