ひとり旅の達人が教える! ソロ温泉を充実させる秘訣は「推し宿」をもつこと
近年よく聞く言葉に「推し活」がある。
自分にとってイチオシの人に情熱を注ぐ活動のことで、お気に入りのアイドルやキャラクターなどを金銭面も含めて応援する人たちが典型例だが、「推し活」は、温泉の世界にも存在する。
意識的か無意識的かは別にして、温泉ファンはお気に入りの温泉や旅館に何度も通う。「定宿」という言葉は、宿泊することでその宿を応援する、まさに「推し活」の一種といえよう。
そんな「推し温泉」「推し宿」をもつことは、温泉旅行を充実したものにしてくれる。
宿との相性が居心地を左右する
筆者はソロ温泉(ひとりでの温泉旅)を好む。日常から離れ、「空白の時間」をもつことが大きな目的である。だからこそ、その温泉や宿との相性も重要だ。
たとえば、筆者は温泉の質を重要視して宿を選ぶが、いくら温泉が気に入っても、その宿の空間に馴染めないと、居心地の悪さを感じてしまう。
たとえば筆者の場合、ラグジュアリーな空間よりも、昔ながらの「ザ・和室」といえる空間が好みである。だからといって、古ければよいというわけではない。
言葉で表すのは難しいが、「使い込まれた美しさ」「肩ひじ張らなくて済む実家のような親しみやすさ」を感じられる空間と言えば伝わるだろうか。とにかく感覚的に「居心地がいいなあ」と感じられるかどうかは、重要なポイントである。
宿の客層も居心地のよさを左右する。客室が多い大型ホテルだと、どこに行ってもにぎやかで、温泉に入っていても落ち着かない。やはり、ある程度静かな時間を過ごせるくらいの規模が向いている。
また、家族連れやカップルに人気の宿も、ひとり旅だと居心地の悪さを感じてしまう。そういう意味では、小規模の落ち着いた宿のほうがソロ温泉にはふさわしい。
もちろん、感覚の問題なので、上記のような条件をすべてクリアしていても、どこか居心地の悪さを感じることはある。こればかりは、一度、宿泊してみないとわからない。
「定宿」は温泉めぐりのモノサシ
だが、いくつかの温泉宿を訪ねているうちに、いずれ「ここは居心地が良い」と感じる相性のよい空間に出会えるだろう。
そうした宿はソロ温泉の拠点となる。「あの宿なら確実に空白の時間を愉しむことができる」という場所をもてれば心強い。ふとソロ温泉に出かけたくなったとき、その宿に頼ることができる。「帰る場所」があれば、新規の宿も積極的に開拓できるだろう。
こうした定宿は、温泉めぐりをする際の基準にもなる。「定宿」と比べてどうかが、自分好みの温泉を見極める際のモノサシになるので、宿を選ぶ際にブレが生じづらくなる。
自分のモノサシを知ることは、宿選びで失敗する可能性が減ることにつながる。
「推し宿」はいつまでもあるとは限らない
定宿が見つかったら、「推し宿」として積極的に活用しよう。
温泉は永遠に湧き続けるわけではない。災害などで突如源泉が止まることもある。宿も永久に存続するわけではない。客が入らなければ淘汰されてしまう。近年は、後継者不足やコロナ禍などが原因で、すさまじいペースで温泉宿が休・廃業している。
だからこそ、支援が必要である。私たちができるいちばんの支援は、宿泊することだろう。「定宿」として定期的に通う。そうした「推し活」が、自分のお気に入りの空間を守ることにつながる。
定期的に宿に通っていれば、宿の人に認知してもらえる。常連となれば、心の交流が生まれ、それがさらなる居心地のよさにつながる。「推し宿」は、ソロ温泉を充実したものにしてくれるはずだ。