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「アナ雪」最新作、ファンならばここを見る!

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ドレスやヘアのディテールまでしっかり考えられている(2018 Disney)

 ファンが待ち望んでいた「アナと雪の女王」最新作が、まもなく公開される。先日オスカーを受賞したばかりの長編アニメ「リメンバー・ミー」と同時上映の「アナと雪の女王/家族の思い出」は、通常の短編より長い22分の特別作品。そしてその22分すべての瞬間に、作り手の細かい配慮と努力が込められているのだ。

 彼らの注意は、隠れていて見えないところや、普通の人ならまず見逃すであろうところにまで及ぶ。今作を生んだウォルト・ディズニー・アニメーションスタジオを訪ね、アーティストたちに、こだわりポイントを聞いた。

ドレスとヘアに表れる"仲良し姉妹"感

 今作の舞台は、オリジナル「アナと雪の女王」から数ヶ月後。アナとエルサが久々に姉妹一緒に過ごすホリデーだ。ホリデーは毎年めぐってくるものだが、エルサはずっとアナと離れた部屋で暮らしてきたので、共に祝うのは、大人になってからこれが初めてなのである。

 この、"ふたりは一緒"という要素は、ビジュアルのあちこちで表現されている。まずは、ドレスの色。「同じ色ではないが、統一が取れているだろう?素材も、ふたりともベルベット。このひとつ前に、『アナと雪の女王/エルサのサプライズ』という短編があったけれど、この姉妹が本当に一緒なんだというストーリーを語るのは、これが初めてになる。だから僕らは、このふたりは今やひとつなんだということを、さりげない形で観客に伝えたかったんだよ」と、プロダクション・デザイナーのマイケル・ジアイモ。

マイケル・ジアイモ(右)とグリセリダ・サストロイナタ=レミー(撮影/Alex Kang)
マイケル・ジアイモ(右)とグリセリダ・サストロイナタ=レミー(撮影/Alex Kang)

"お揃い"感は、髪にもある。アナとエルサの髪型は、基本的には1作目と同じ。だが、「見慣れた中にも何か新しい要素を入れたい」と思っていたところ、キャラクターデザイン担当のグリセリダ・サストロイナタ=レミーが、ヘアアクセサリーのアイデアを出してきたのだ。

「今回、アナとエルサはふたりとも似たヘアアクセサリーをしている。でも、エルサのは左から右に向かって流れる感じで、逆にアナのは右から左なのよ。そんなふうに、さりげなく対になっているの」(サストロイナタ=レミー)。ふたりのヘアアクセサリーについているベリーも、「縫い付けてあるのではなく、エルサの魔法による霜でくっつけてある」らしい。

ヘアアクセサリーについているベリーは、エルサの魔法による霜でくっついている(2018 Disney)
ヘアアクセサリーについているベリーは、エルサの魔法による霜でくっついている(2018 Disney)

 アナとクリストフの服も、釣り合うようにデザインされた。「今回は、初めて彼らにカップルの服装をさせたんだ。お揃いではないけれど、お互いと似合っているよね?」(ジアイモ)。ふたりの仲が順調であることは、ここからも伝わってくる。

随所に登場する雪の結晶、山羊、鐘のモチーフ

 ホリデーシーズンの色といえば、普通は赤と緑。だが、寒色、とくにブルーが基調となる今作では、モチーフがホリデーの要素を強調する。

 その代表は、山羊と鐘。鐘は、もともと伝統的なホリデーのモチーフ。山羊は、「アナ雪」の舞台であるアレンデール王国の文化が、ノルウェーを参考にして生まれたことから選ばれた。「映画の最初で鐘が鳴るシーンを見てもらえれば、その鐘にも山羊のマークがついているのがわかるよ」と、ジアイモ。アナのスカートや首まわり、お城でのパーティで使われているテーブルクロスにも、山羊や鐘の刺繍がほどこされている。

エルサの胸元のモチーフとオラフの蝶ネクタイは、雪の結晶をベースにデザインされたもの。アナの服の首まわりには、鐘の模様の刺繍がある(2018 Disney)
エルサの胸元のモチーフとオラフの蝶ネクタイは、雪の結晶をベースにデザインされたもの。アナの服の首まわりには、鐘の模様の刺繍がある(2018 Disney)

 もうひとつ、たびたび登場するのが、雪の結晶だ。エルサのドレスの胸元にある飾りも、雪の結晶の半分。また映画の最後には、オラフも雪の結晶を模した蝶ネクタイをする。

 見えない部分も、手を抜いていない。たとえば、エルサはドレスの上に薄手のケープを羽織っているが、普段は隠れている部分にも、ちゃんとデザインが施されているのだ。「ケープがどう揺れるのか、ドレスの素材にどう反応するのか、そんなところまで計算されているんだ」(ジアイモ)。

歌にも貫かれた姉妹の要素

 仲良し姉妹の要素は、歌にも貫かれている。ただし、こちらはあくまで偶然だ。今作に登場する新曲を書いたのはケイト・アンダーソンとエリッサ・サムセル。アンダーソンは、オリジナルの歌を書いたクリステン・アンダーソン=ロペスの妹なのである。

スティーヴ・ワーマーズ=スケルトン(右)とケビン・ディーターズ監督コンビ(撮影/Alex Kang)
スティーヴ・ワーマーズ=スケルトン(右)とケビン・ディーターズ監督コンビ(撮影/Alex Kang)

「最初にミーティングをした時は、その事実を知らなかったんだよ」と、スティーヴ・ワーマーズ=スケルトンと共同監督を務めたケビン・ディーターズ。「彼女らが作った歌を聞き、彼女らにやってもらおうと決めた後に気づいたんだ。これは家族についての映画だし、なんとも素敵な偶然だと思ったよ。この姉妹もまた、お互いの仕事ぶりを誇りに思っているんだ」(ディーターズ)。

 同時上映の「リメンバー・ミー」もまた、家族についての物語。こちらはメキシコが舞台だが、家族愛は、国境を越えて共感できるテーマだ。プロデューサーのロイ・コンリは、「この年に限らず、家族とは、ということを思い出すために、人々が将来もずっとこの映画を見てくれることを願う」と語る。

 そのメッセージを日本の観客に伝えるのが、神田沙也加と松たか子だ。最後に、コンリも大絶賛するふたりの歌声を、本日解禁になった映像でお届けしよう。この映像でも、先のコメントにある、ケープで隠れた部分のドレスのディテールなどがわかるので、歌を聴きつつ、ぜひ細かいところまで見てみてほしい。

「アナと雪の女王/家族の思い出」は、「リメンバー・ミー」と同時上映で、3月16日(金)全国ロードショー。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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