インフルエンザ抗原検査キットの販売解禁を求める声 医療機関では新型コロナ・インフル「同時検査」が可能
2シーズン連続でインフルエンザの流行が起こっておらず、今年はオーストラリアで大流行がみられたことから、日本でもインフルエンザの流行が起こる可能性があります。さて、インフルエンザシーズンに発熱した場合、新型コロナとインフルエンザの両方を検査することになります。すでに「同時抗原検査キット」が医療機関向けに流通しており、これが市販されれば医療機関の業務負担は軽減するでしょう。
今冬、医療機関では両方検査することが多くなる
医療機関ではPCR検査などの精度が高い検査が普及しており、新型コロナとインフルエンザを同時に測定できる施設が多いです。
インフルエンザが流行している場合、医学的には両方の検査を実施することが望ましいでしょう。しかし、インフルエンザと新型コロナを鑑別することは現実的に難しいです。
新型コロナ・インフルエンザ・かぜの3つについて、それぞれの症状に違いはあるものの(表1)、これだけで鑑別するのは至難の業です。
さて、現在インフルエンザの抗原検査キットは市販されていません。
そのため、新型コロナの検査が陰性でも、インフルエンザの可能性がある有症状者は、結局、発熱外来を受診することになります。新型コロナの抗原検査キットだけが普及しても、医療機関の業務負担の軽減にはつながりません(図1)。
新型コロナの抗原検査キットはすでに市販
新型コロナの抗原検査キットは、ドラッグストアなどで市販されています。
薬事承認された抗原検査キットは表2のとおりです。承認済の「体外診療用医薬品」または「第1類医薬品」と書かれた検査キットを使用し、未承認の「研究用」は使用しないようにしましょう。
「同時抗原検査キット」は医療機関向けにすでに製品化
実は、インフルエンザと新型コロナのどちらも同時に検査できる抗原定性検査の技術はすでに確立されており、医療機関向けに販売されています(表3)(3)。
検体採取法や結果の確認方法は、新型コロナとインフルエンザはほぼ同じで、2つの検査が合体した「同時抗原検査キット」も存在します(図2)。10~15分程度で検査結果が判明することから、インフルエンザの抗原検査も併せて広く流通させたほうが、医療逼迫は軽減するのではないかと考えられます。
そのため、政府の規制改革推進会議では、インフルエンザと新型コロナの同時流行によって発熱外来が逼迫する前に、「インフルエンザ抗原検査キット」や「同時抗原検査キット」の市販を解禁すべきという見解も出ています(4)。
しかし、今回の新型コロナ抗原検査キットの市販については、パンデミックの状況に鑑みて、あくまで特例的な対応であったことを厚労省は強調しています。
ゆえに、現時点ではインフルエンザ抗原検査キットの解禁は難しいようです。
まとめ
医療現場にとって一番最悪のシナリオは、インフルエンザの流行と新型コロナの第8波・9波が重複して、医療逼迫を招くことです。
新型コロナとインフルエンザは全く別のウイルスですが、医療機関の負担軽減という観点から考えると、新型コロナの抗原検査キットだけ市販するのでは不十分です。
インフルエンザの抗原検査キットや、新型コロナとインフルエンザの「同時抗原検査キット」を流通するメリットは大きく、可能であれば解禁の方向に動いていただきたいところです。
(参考)
(1) Similarities and Differences between Flu and COVID-19(URL:https://www.cdc.gov/flu/symptoms/flu-vs-covid19.htm)
(2) 新型コロナウイルス感染症の一般用抗原検査キット(OTC)の承認情報(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27779.html)
(3) 新型コロナウイルス感染症の体外診断用医薬品(検査キット)の承認情報(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11331.html)
(4) 規制改革推進会議. 第8回 医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ 議事概要(URL:https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2201_03medical/220831/medical08_minutes.pdf)