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インフルエンザの流行 500日ぶりに終わる

倉原優呼吸器内科医
(写真:イメージマート)

2022年12月から続いたインフルエンザの流行がようやく収束を迎えました。それにしても、なぜこれほど長期にインフルエンザの流行が続いたのか、また今後私たちはどう注意すればよいのか、解説したいと思います。

2022年12月からずっと流行

例年、インフルエンザは冬季に流行し、春季には流行が終わるというのが常識でしたが、コロナ禍では「季節性」のサイクルが大きく狂ってしまいました。

定点医療機関あたりのインフルエンザの新規感染者数は、1人超で流行期入り、10人超で注意報、30人超で警報、と定義されていますが、2022年12月以降ずっと流行期が続いていました(図)。

図. インフルエンザの定点医療機関あたりの新規感染者数(参考資料1をもとに筆者作成)
図. インフルエンザの定点医療機関あたりの新規感染者数(参考資料1をもとに筆者作成)

歴史的に長い流行期に、医療現場ではもはや流行が常態化していたわけですが、5月10日付で報告された第18週ぶんで定点医療機関あたり0.45人と報告され、長いトンネルを抜けて、約500日ぶりに流行期を脱するにいたりました。

なぜ約500日も続いたのか?

もちろん、新型コロナの流行が影響したことは疑いようもありませんが、なぜインフルエンザの流行は約500日も続いたのでしょうか?

理由の1つとして、検査閾値が下がったことが挙げられます。これまでは、シーズン以外の時期に発熱したとしても、インフルエンザの検査はそれほど行われていませんでした。

しかし、コロナ禍に入って新型コロナとインフルエンザの「ダブル流行」が起こり、医療現場では2つのウイルスの同時検査が当然のように行われることになりました。

感染症の流行にはさまざまな要因が関連する(イラストACより使用)
感染症の流行にはさまざまな要因が関連する(イラストACより使用)

そのため、風邪症状レベルであっても、受診してこられる患者さんに対してインフルエンザを含めた抗原検査が適用されることが増え、見かけ上の報告数が多くなったということは十分考えられます。

これほど検査閾値が低くなると、定点医療機関あたり1人超というのが流行期の目安として妥当なのか今後再検証が必要かもしれません。

約500日続いたその他の理由として、その他呼吸器系ウイルス感染症の流行がパンデミック後まもなく急減したことが挙げられます。実際に、コロナ禍初期はインフルエンザの流行がほとんどみられず、これは新型コロナへの感染対策が功を奏したと言えるわけですが、その反面、集団での免疫が不十分になったという見解もあります。それゆえ、地域で流行が始まると、収束により時間がかかってしまうようになったのかもしれません。

インフルエンザ以外にも、RSウイルス感染症や溶連菌感染症など、これまで散発的な発生だったものが、歴史的な流行になっていることは報道されている通りです。

まとめ

では、インフルエンザに感染しておけば安心なのかというと、それは正しくありません。特に小さな子どもや高齢者がいるご家庭では、インフルエンザが与える医学的・社会的影響は大きいです。

流行期にある場合は、手洗いや消毒などの手指衛生、密な環境でのマスク着用はすすめられてよいでしょう。

また、地域全体で感染症の罹患率や重症度を下げるためのワクチン接種は引き続き検討してよいでしょう。ちなみに、経鼻インフルエンザワクチン「フルミスト」が来シーズンから使用される予定です。注射が難しいようなケースでは一考の余地があるかもしれません。

(参考)

(1) インフルエンザに関する報道発表資料 2023/2024シーズン (URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou_00014.html)

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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