なぜレアルはエムバペの“適応”を焦らないのか?ヴィニシウス、ロドリゴ…攻撃的3トップの必要性。
ディフェンディングチャンピオンの挑戦が、始まる。
レアル・マドリーは昨季、ドブレーテ(2冠)を達成。リーガエスパニョーラとチャンピオンズリーグで優勝を果たし、スペインとヨーロッパを席巻した。
今夏、そのチームに、キリアン・エムバペが加わった。ビッグイヤーを獲得したクラブに、世界最高峰のストライカーが入団する。普通に考えれば、戦力は増強である。
■新たな銀河系軍団は
銀河系軍団を彷彿とさせる移籍だった。だがデイビッド・ベッカムがマドリーに加入した当時、彼は28歳だった。ロナウド(26歳)、ルイス・フィーゴ(30歳)、ジネディーヌ・ジダン(31歳)。彼らは良く言えば経験豊富、悪く言えばアスリートとして老い始めていた。
しかしながら、一方でエムバペは25歳だ。ヴィニシウス・ジュニオール(24歳)、ロドリゴ・ゴエス(23歳)、ジュード・ベリンガム(21歳)と彼らは十分に若い。
近年、若手推進プロジェクトを推進してきたマドリーとしては、その成果が実ってきているとも言える。
肝心のエムバペの適応だが、フットボールはビデオゲームではない。最強チームにスタープレーヤーを入れ、ボタンを押して、座して待つ…というやり方で、うまくいくわけはない。
マドリーは昨季、システムチェンジを行った。カリム・ベンゼマの退団を受けて、カルロ・アンチェロッティ監督はゴールを奪うパターンを確立しなければいけなかった。ベリンガムをトップ下に嵌め、【4−4−2】で戦う決断を下した。
ただ、今季は異なる。
マドリーは従来の【4−3−3】にシステムを戻した。エムバペ、ヴィニシウス、ロドリゴを3トップで使うためだ。加えてベリンガムをインテリオールに据え、攻撃の時にトップ下にズラす。【4−2−3−1】の可変システムを採用すれば、問題はない。
■エムバペの役割
エムバペは、パリ・サンジェルマンの7シーズンで、308試合に出場して256得点を記録している。だが、それはエムバペが自由にプレーできていたからだ。
マドリーでは、違う。アンチェロッティ監督はエムバペを3トップの中央に置いている。エムバペの好みのプレーエリアである左サイドには、ヴィニシウスがいる。
エムバペに求められるのはフィニッシャーとしての役割だ。また、CFとして、ポストワークとスペースランニングを行わなければいけない。それはパリSGでエディンソン・カバーニ、マウロ・イカルディ、ゴンサロ・ラモスといった選手たちが担っていたタスクだ。
エムバペはマドリーで中央寄りのポジションに置かれている。例えば、アタランタ戦(UEFAスーパーカップ)、マジョルカ戦(ラ・リーガ開幕節)で、エムバペはいずれも7本のシュートを打っていた。トータルで14本。アタランタ戦では、1ゴールを記録している。一方、エムバペのチャンス・クリエイト数はゼロだった。
「エムバペは前線でプレーする。システムはワイドなものだ。しかし、重要なのはモビリティになる」とはアンチェロッティ監督の弁だ。
「昨シーズン、ヴィニシウスがどのポジションでプレーしたかを問われたら、答えるのは難しいだろう。左ウィングではなかった。時に中央、時に左サイドでプレーしていた。ベリンガムも同じだ。中央、左サイド、右サイド、いろいろなところでプレーした。ロドリゴは、右サイドでスタートしたとして、彼もまた左サイドにいく。だから重要なのはモビリティだ」
「エムバペをチームに当てはめるのは、問題にならない。大事なのは、彼自身が言ったように、適応すること。それぞれの選手が、自分の才能と能力を、チームのために使うことだ」
マドリーは先日、ベリンガムがトレーニング中に負傷。1カ月の離脱が見込まれている。
ベリンガム不在のなか、どのようにエムバペを嵌めていくか。異なる問題が生じたが、アンチェロッティ監督は慌てていない。昨季、ドブレーテを達成した自信が、彼らを支えている。