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「最後のチャンス」、クリスマスの演説で挽回(?)したスペイン国王フェリペ6世

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者
12月にスペインを訪問したモレノ・エクアドル大統領夫妻と。(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

スペイン国王フェリペ6世の10月3日の演説は、カタルーニャ人に大きな失望を与えた。

前回の記事:カタルーニャの選挙に向けて (2) スペイン国王の演説に対する疑問。王室とEU(欧州連合)と。

しかし国王は、クリスマス恒例の演説で多少の挽回をしたようだ。

欧州の国王がクリスマスにテレビ演説を行うのは、日本では英国のエリザベス2世の例で知られているかもしれないが、スペインでも同様に行っている。

プチデモン氏「最後のチャンス」

クリスマスイブを前にして、プチデモン氏はロイターのインタビューに答えた。

氏は「(カタルーニャ自治権を停止した根拠となった条項)155の国王には、訂正をする最後の機会がある」と述べた。つまり、恒例の国王のクリスマス演説は「重大な間違い」を正す最後の機会だとメッセージを発したのだった。

「国王はスペイン政府の警察に参加することを決めたのだ」「彼は155の君主となることを望んだ。異なる複数の解決方法を歓迎しうる国の国王ではなくて、スペイン政府の国王であることを望んだのだ」。インタビューの間、国王が以前の発言を修正するようにうながし、「最後のチャンス」を利用するように求めた。

国王の演説はどう変わったか

クリスマスの日曜の夜9時の放送で、国王フェリペ6世は「共によく生きるのに困難な年」であり、「カタルーニャの状況によって特徴づけられた」と認めた。複数のメディアが報じた。

クリスマスの演説のせいか、大変まじめな様子ではあるものの、前回よりもずっとリラックスした柔らかい口調であった。

動画や画面はこちら:スペインの有力紙「EL PAIS」のサイト

そして、スペインが「成熟した民主主義」として導くことができるに違いないカタルーニャの問題を「克服するために、全ての社会の妥協」が必要になるだろうと述べた。

選挙後、国王は政治家達に「特に多様なカタルーニャ社会の複数性を尊重する」ことを期待していると述べた。「道筋は、安定を見出すためには、対立にはなりえない。そして、すべての人の妥協と責任感によって、対立ではない道を経なければならないだろう」とも語った。

国王は、今回は語る場所を変えて演説した。背後に映っているのは、2枚の無難な絵と、写真立ての家族写真と、赤いポインセチアであった。

しかし突然ここまで内容が変わるとは、一体何なのだろうかと、日本人としてはとまどってしまう。

「国王」「王室」と一口に言っても、色々あるのだ。前回の記事にも書いたように、世界では王室・皇室がある国は、圧倒的少数派である。日本の皇室を見ている感覚で世界の王室を見ると、大勢を見誤る可能性があると、つくづく感じた。

ともあれ、これで少しはスペインとカタルーニャの対立が収まるといいのだが。

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省機関の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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