新型コロナウィルス、日本企業の88%が生産・物流に支障と回答
【1.調査結果】
日本企業を対象(n=12,966)にしたアンケート結果、新型コロナウィルスによって日本企業の88%が生産・物流に支障と回答した。問題が生じていないとする企業は12%にとどまり、事態の深刻さが明らかになった。
2020年2月13日、未来調達研究所株式会社は、中国の武漢を発生源とする新型コロナウィルスについて、日本企業への緊急アンケートを実施。サプライチェーン・物流・調達関連従業者から実務の実態を調査した。
新型コロナウィルスについては、中国政府が団体旅行を禁止したため、各国の観光業に大影響を及ぼしている。同時に、企業のサプライチェーンにも甚大な被害を及ぼしている。
(調査の補足)
結果、全体の69%が「問題あり」、19%が「調査中」、12%が「問題なし」とした。ただし、19%の「調査中」とした企業も、そのほとんどが中国からの納期遅延はあるとしており、支障があるとカウントした。
【2.代表的な声】
●中国では一律10日から再開予定だったが、メドたたず(大手電機メーカー)
●中国当局の指導で再開できないところは、テレワークを推奨している。ただ生産自体は見込みがつかず(大手電機メーカー)
●部品調達も難航中。省内の調達と比べ、省を越えると調達が苦戦。部品会社も再開したばかりで見通しは、まだ現地も見えていない。今の在庫だと、このままだと4月か5月に品薄の可能性あり(大手電機メーカー)
●春物は店頭に並んでおり、在庫も充分。今すぐに影響ない。今後、つまりは夏物などについては不透明。影響次第(大手アパレルメーカー)
●輸入できないとなると、国内生産になる可能性もゼロではない。供給が追いつかず、店頭での欠品・値上げあるかも(大手食品メーカー)
【3.調査結果の内容】
サプライチェーン・物流・調達における具体的な影響は次の通り。
(1)一次、二次、中国取引先の生産停止
●一次中国サプライヤの生産停止(作業者不足等)
●一次中国サプライヤ窓口不在により情報確認できず
●二次中国サプライヤの生産停止(作業者不足等)
●二次中国サプライヤの状況把握困難
●一次中国サプライヤが商社の場合、業務停止に伴い、二次中国サプライヤへ発注不可、二次への支払い遅延
●防塵マスク等の入手不足により再稼働できず
●中国の各省から工場再稼働認可がなされない
●最終出荷前の(日本企業による)同席検査できず停滞
●一次中国サプライヤが工場停止のため、資金繰りが悪化し、工員不足、二次中国サプライヤへ注文できず
(2)中国国内の物流問題
●道路閉鎖による物流遮断
●トラックドライバーの不足
●エアー便の集中による取り合い
●一次サプライヤの有する金型を代替国(日本、ベトナム等)へ輸送できず
(3)間接的な影響
●取引先(日本あるいは他国)が中国から完成品や部材、原材料を仕入れており、供給停止
●中国にある二次サプライヤ以降の情報は、そもそも取引開始時に入手しておらず、現時点でも解明できず
【4.対策案】
アンケート結果を見ると、現時点であげられているのは次の通り。
●国内、あるいはベトナム等での代替生産
●国内既存保有在庫の使用
●国内にある中古部品の再利用
●代替品の検討
●中国国内での停滞の場合は、ハンドキャリーなどの応急処置
●ひたすら催促
●手の打ちようがない
●フォースマジョールの申請
なお、「手の打ちようがない」という回答は、金型使用のメーカーから多く挙げられた。金型が中国に存在する場合、それを日本や他国に運ぶのも、同じ金型を作成するのも(短期間では)困難というものであった。
また、「フォースマジョール」とは不可抗力条項と訳される。これは予想不可能な事象が起きたときに契約の履行を免れるもので、顧客に対して商品供給が難しい旨を伝えることを指す。
【5.その他】
著者(坂口孝則)の属す未来調達研究所株式会社では、これ以降、最新情報をレポートとして無料公開していく予定。