レノファ山口:前半戦ラストマッチは黒星。自分たち主導で運べず、松本に1-2
J2リーグ前半戦の締めくくりとなる第21節全11試合が7月1日、各地で行われた。前節の熊本戦で11試合ぶりに勝利していたレノファ山口FCは維新百年記念公園陸上競技場(山口市)で松本山雅FCと対戦。連勝を目指したが、隙を突かれて失点し1-2で敗れた。順位は21位のまま。
明治安田生命J2リーグ第21節◇山口1-2松本【得点者】山口=三幸秀稔(前半40分) 松本=工藤浩平(前半16分)、セルジーニョ(後半40分)【入場者数】5892人【会場】維新百年記念公園陸上競技場
レノファの最大の敗因は、松本の土俵で戦ってしまったことだろう。不用意な形で2度のリードを許し、最後は堅守で逃げ切られた。ボールは繋げていたが常に松本の守備陣にフタをされた状態。三幸秀稔と小野瀬康介、佐藤健太郎と星雄次など少人数での局所的なコンビネーションは見られたものの、チーム全体のオートマティックな動き出しは少なく、ゲームを自分たちから動かすことはできなかった。レノファはもっとわがままに、自分たちの良さを出してもいいはずだ。
一瞬の隙から先制許す
ゲームを見ていくと、松本はこれまで先発起用を続けていたFW高崎寛之をベンチスタートとし、前半はFW山本大貴を今季初めてスタメンに並べた。「新しい動きを入れなければチームは上昇していかない」と反町康治監督。チャンスこそ多くは作れなかったが、意表を突いた起用でレノファの守備に多少なりとも混乱を与え、マークがフリーになる時間を作る。
前半16分、スローインの流れから縦パスをテンポ良く繋いだ松本は、MF工藤浩平がネットを揺らし1点を先行する。このときスローイン前にプレーがやや長く途切れ、レノファの守備陣は集中できていなかった。マークも甘く、GK村上昌謙は声を張り上げていたが、「リスタートのところでやられた。声が届いていない部分があった」と天を仰いだ。もったいない失点の典型例のような形でゴールを挙げられ、レノファは1点のビハインドとなる。
その後はレノファがボールを持つ時間が長くなり、相手陣内に何度か入っていく。上述した通りフィニッシュまで行くにはアイデアや運動量が足りなかったが、前半40分には縦の早い展開からFW岸田和人がドリブルを駆って攻め込み、そのまま強いシュート。これはGK鈴木智幸に阻まれるも、DF橋内優也ともつれて膝を突いた岸田が執念を見せて立ち上がり、こぼれ球に反応。岸田のパスを受けたMF三幸秀稔はコースを狭められながらも左足を振り抜き、ゴールを射貫いた。
後半は松本ペース。レノファは後手に
試合を振り出しに戻したレノファ。カルロス・アルベルト・マジョール監督は前半を「ポゼッションもサイド攻撃もでき、点も決めることができた」と総括し、ハーフタイムでは、ボールを奪いに行く動きとFWの裏への動き出しを中心に指示。逆転を狙って後半に入っていく。
ところが立ち上がりから守勢となる。松本は後半のスタートからFW高崎寛之を投入。レノファは対応が遅れただけでなく、セカンドボールも回収できず、松本にほぼ一方的に攻め込まれてしまった。いくつかのピンチはGK村上のセービングで逃れたものの、松本は後半35分、MFセルジーニョを投入して勢いを倍加。ついに同41分、MF岩間雄大のクロスにセルジーニョが頭で合わせ再び勝ち越しに成功する。
一方のレノファもFW大石治寿、MF米澤令衣、MF小塚和季を矢継ぎ早にピッチに立たせチャンスを伺う。とはいえ相手のディフェンスもパフォーマンスは衰えず、レノファのボールホルダーは常に自由を奪われた状態。左右に振る大きな展開から大石がシュートを打つ場面こそあったが、ゴールを脅かすには至らなかった。最終盤、1ゴールの三幸がこの日2枚目のイエローカードで退場となり、万策尽きる。ゲームメーカーを欠き1-2で試合を閉じることになった。
自分たちの持ち味に「自信」を持て
マジョール監督はポゼッションとサイド攻撃の組み合わせでゴールに迫る戦術を採っているが、守備にも重点を置き、2戦連続でDF宮城雅史をアンカーに置いて相手の攻撃ルートを遮断。また、DF廣木雄磨が「(監督から)チャンスのときには行っていいと言われているが、守備は絶対にバランスを取って欲しいと言われている」と話すように、サイドの選手にも守備を強く意識させている。この戦い方が前節・熊本戦の無失点に繋がったことは言うまでもない。
しかし、失点を防ぐことにばかりに意識が向いてしまうと重心が重くなり、セカンドボールも拾えなくなる。今節はネガティブな面が露呈。ずるずると下げさせられてクロスを放り込まれ、ヘディングで決められた2失点目は言い訳ができない。実力差以上に成熟度の差がある中で、自分たちから松本の土俵に乗ってしまっては勝ちきれない。
攻撃の構築も未だ霧の中。レノファの選手はボールポゼッションの技術は高く、ショートパスの連続ならば相手に取られずいつまでも繋ぐことができる。足りなかったのはシュート意識だが、今節はシュートに行く前に簡単にボールを失った。多用したクロスは相手に囲まれていた分だけ精度が低くなり、中央でも収めきれなかった。
MF佐藤健太郎は「個人のチャレンジやコンビネーションは出せていた。自分たちの技術とコンビネーションを高めることをやり続けるしかない」と話す。そうした個々の伸長に加えて、まだ何を付け加えたり捨てたりする必要はあるかもしれない。いずれにせよ残り試合は21試合しかなく、ぶれない軸を後半戦の早い段階で持っていたい。ただはっきりと言えることは、レノファはもっと自分たちの技術に自信を持ち、得意とする部分を出すことだ。
次節もホームゲームとなる。今節は試合開始前に気温が30度をはるかに上回った。この盆地特有の気候も平均年齢の若いレノファには有利。チームが取り組むべきことは山ほどあるが、地の利さえも存分に生かして後半戦の初戦を飾りたい。