バレンティンがヤクルトと交わした契約にある「守備率と併殺打の出来高」に抱いた疑問
ウラディミール・バレンティンの残留が決まった。東京ヤクルトスワローズと交わした来シーズンの契約には、新たな出来高がついているという。
いくつかの記事から、その出来高について記した部分を抜粋してみた。
守備率が高く、併殺打が少なければ、出来高を得られる???
守備率は「(刺殺+補殺)÷(刺殺+補殺+失策)」で計算される。フライやライナーに追いつけず、ヒットになれば、守備率は変動しない。一方、追いつきながらもグラブに当てて落とし、失策が記録されれば、守備率は下がる。送球についても、同じようなことが言える。外野手→本塁と外野手→カットマンでは、前者の方が距離は長く、悪送球で失策となる可能性は高まる。
併殺打についてはこうだ。三振すれば、併殺打にはならない。三振&盗塁失敗の「併殺」は起こり得るが、これは「併殺打」ではない。引用した記事には併殺打と併殺の両方があるものの、バレンティンの走塁(打ってから一塁まで)ということからすると、併殺打に限った出来高だと判断できる。
出来高を得るために、果敢には打球を追わず、わざと三振する。バレンティンがそんなことをするとは思わない。とはいえ、疑念を抱かせる可能性はある。例えば、バレンティンの三振率が、併殺打となり得る場面だけ、異常に高かったらどうだろう。
こんなこともないとは言いきれない。シーズン最終戦の勝敗に、ヤクルトのクライマックスシリーズ進出がかかっているとしよう。1点を追う9回裏1死一塁の場面で、バレンティンが打席に立つ。この時点で、バレンティンは併殺打をあと1本打つと、出来高がもらえなくなる。結果は見逃し三振。次の打者もアウトになり、ヤクルトはクライマックスシリーズ進出を逃すが、バレンティンは併殺打の出来高を手にする――。
ボール球だと判断して見送った結果かもしれないが、ファンとしては、たとえ併殺打の可能性があっても――内野手が捕球した場合、いい当たりの打球ほど併殺打になりやすい――打ってほしかったと思うのではないだろうか。
もしかしたら、私がどこかで勘違いしているだけなのかもしれない。また、守備率と併殺打の数という単純な出来高ではなく、細かい条件がついていて、疑念は生じないのかもしれない。少なくとも、守備機会や打席などの下限はあると思われる。故障によってシーズン1打席に終わり、併殺打が0本だった場合、出来高はもらえないはずだ。
それとも、この出来高はジョークのようなものなのだろうか(どこが笑いのツボなのかはわからないが)。メジャーリーグにはこれまで、思わず笑ってしまう出来高がいくつかあった。ラトロイ・ホーキンスがヒューストン・アストロズと交わした2009年の契約には、ナ・リーグのベスト・ヒッティング・ピッチャーになれば2万5000ドルという出来高がついていた(当時のアストロズはナ・リーグに属していた)。ホーキンスはそれまでの14年間で、通算6打数0安打、5三振だった。2009年は65試合に登板したが、打席には一度も立たなかった。
また、アレックス・ロドリゲスがテキサス・レンジャーズと結んだ10年2億5200万ドル(2001~10年)の契約には、出来高の一つとして、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズかディビジョン・シリーズでMVPならそれぞれ15万ドルと記されていた。リーグ・チャンピオンシップ・シリーズと違い、ディビジョン・シリーズにMVPはない。