バンクシーの「非公認」展覧会は著作権侵害にならないのか?
「テレビ局が仕掛ける2つのバンクシー展、実はどっちも"非公認" 本人からも"フェイク"揶揄されるが...」という記事を読みました。
ということだそうです。本人が公認しない状態で展覧会を開いて著作権侵害にはならないのでしょうか?
所有権と著作権は別の概念です。たとえば、CDを店で適法に購入することで、CDというプラスチックの板の所有権は購入者のものになりますが、そのプラスチックの板に記録された音楽の著作物の著作権が購入者のものになったわけではありませんので、著作権者の許可なく、複製したり、ネットにアップしたりすることはできません。
絵画などの美術の著作物を展示する場合には著作権者による展示権の許諾が必要です。そして、バンクシーの絵の著作権はほぼ確実にバンクシーに帰属しています(バンクシーが著作権買取契約を結ぶことは想定し難いです)。
しかし、この例外として以下の規定があります。
所有者であっても(著作権がまだ切れていない)美術の作品を勝手に複製したりすることは許されませんが、展示会における展示だけはOKということです。展示される絵画が、バンクシーの同意の元に購入または寄付してもらった作品であれば、(かつ、展覧会には出展しません等の特別な契約がない限り)、その所有者さえOKすれば、著作権者であるバンクシーが何と言おうと著作権侵害にはなりません(道義的な話はまた別です)。
この規定がないと現代美術の展覧会を開催するために、画家(またはその遺族)の許諾を取らなければならないということになってしまうので当然の規定と言えます。
なお、45条2項の規定により、美術館ではなくオープンな場所に恒常的に展示する場合はこの例外の対象外なので、著作権者(通常は、画家または彫刻家)による展示権の許諾が必要になります。
また、47条1項の規定により、展覧会のパンフレットやカタログに作品の写真を載せるために複製権の許諾を得る必要はありません。これも、いちいち(所有者ではなく)著作権者に許諾を取る必要があったとしたら展覧会のパンフレットなど作っていられないので当然の規定です。
ところで、著作権法の展示権に関する制限規定はややこしくてなかなか覚えられないですが、常識的にこうなってないと困るだろうと考えてみればわりと頭に入れやすいです。