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グローバルに進行する少子化

島澤諭関東学院大学経済学部教授
写真はイメージです(写真:イメージマート)

日本の2023年の合計特殊出生率(以下、出生率)が1.20と過去最低を更新したことが話題となっています。

政府は日本の少子化を危機的と表現し、少子化傾向を反転させるべく躍起になっていますが、世界の少子化はどうなっているのでしょうか?

まず、世界全体で見た出生率の推移を見てみましょう。なお、本記事で使用する出生率のデータはWorld Bank Open Dataから取っています。

図1からは、世界で見ても少子化が進んでいることが分かります。世界を均してみれば、少子化は日本特有の現象ではなく世界的な規模で起きているのです。

図1 世界の出生率の推移(世界銀行のデータをもとに筆者作成)
図1 世界の出生率の推移(世界銀行のデータをもとに筆者作成)

マクロで見れば世界的に少子化が進んでいることが分かりましたが、2022年現在、世界各国・地域の出生率はどうなっているのでしょうか?

図2と参考表1から、世界各国・地域の出生率の現状を見ると、最高はニジェール6.75、最低は香港0.70(国では韓国0.78)、平均値は2.26(210か国・地域)、平均値未満は117か国・地域(55.7%)、人口の置換水準(ここでは2とした)を上回るのは108か国・地域(51.4%)、低出生率の罠(=1.5)以下は45か国・地域(21.4%)、1未満は3か国・地域(1.4%)あることが分かります。

図2 2022年現在の世界の出生率(世界銀行のデータをもとに筆者作成)
図2 2022年現在の世界の出生率(世界銀行のデータをもとに筆者作成)

人口の置換水準を上回るのは108か国・地域で全体の51.4%と半数以上を占めますが、ほとんどがアフリカや中東に位置しています。

さらに、2010年代から2020年代にかけて出生率が低下した国・地域は189か国・地域と全体の90%と世界規模に少子化が進んでいることが確認できます。

ちなみに、2010年代から2020年代にかけて出生率が増加したのは、スロヴェニア(Slovenia)、ヴェトナム(Viet Nam)、アンティグア・バーブーダ(Antigua and Barbuda)、モルドヴァ(Moldova)、モンテネグロ(Montenegro)、北マケドニア(North Macedonia)、セーシェル(Seychelles)、ドイツ(Germany)、ボスニア・ヘルチェゴビナ(Bosnia and Herzegovina)、ポルトガル(Portugal)、ギリシャ(Greece)、セルビア(Serbia)、クロアチア(Croatia)、ブルガリア(Bulgaria)、ハンガリー(Hungary)、スロバキア(Slovak Republic)、チェコ(Czechia)、ルーマニア(Romania)、カザフスタン(Kazakhstan)、ウズベキスタン(Uzbekistan)の20か国となっています(参考表2)。

要するに、少数の例外があるとはいえ、少子化はグローバルな現象で、大袈裟に言えばホモ・サピエンスが直面している現象であるといえます。

果たして、日本が異次元の少子化対策と銘打って少子化対策を実施したからといって、経済発展とともに進行するグローバルな少子化に打ち克つことができるのでしょうか?

参考表1 2022年の世界の出生率(世界銀行のデータをもとに筆者作成)
参考表1 2022年の世界の出生率(世界銀行のデータをもとに筆者作成)

参考表2 世界の出生率の推移(世界銀行のデータをもとに筆者作成)
参考表2 世界の出生率の推移(世界銀行のデータをもとに筆者作成)

関東学院大学経済学部教授

富山県魚津市生まれ。東京大学経済学部卒業後、経済企画庁(現内閣府)、秋田大学准教授等を経て現在に至る。日本の経済・財政、世代間格差、シルバー・デモクラシー、人口動態に関する分析が専門。新聞・テレビ・雑誌・ネットなど各種メディアへの取材協力多数。Pokémon WCS2010 Akita Champion。著書に『教養としての財政問題』(ウェッジ)、『若者は、日本を脱出するしかないのか?』(ビジネス教育出版社)、『年金「最終警告」』(講談社現代新書)、『シルバー民主主義の政治経済学』(日本経済新聞出版社)、『孫は祖父より1億円損をする』(朝日新聞出版社)。記事の内容等は全て個人の見解です。

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