昭和はロイヤルティ、平成はモチベーション、令和はエンゲージメントの時代か?
■ モチベーションに関する悩み
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。「絶対達成」をテーマにしていますから、意識の高い経営者やビジネスパーソンが私のセミナーや講演に足を運んでくれます。
このように足を運んでくれた方々の数は、過去10年で、のべ1万人を軽く超えます。そして、それだけの数の経営者、マネジャーが書くアンケートに長く触れていると、時代の変化を体験することができます。
さて、この10年で、最もアンケートに書かれたキーワードは、ダントツで「モチベーション」です。
「部下のモチベーションを上げる方法を教えてほしい」
「どうやったら若手のモチベーションを高くできるか」
このように書かれます。
このコラムを読んでいる人の中にも、仕事がうまくいかないのはモチベーションが足りないせいだ。部下の達成意欲が低いのは、モチベーションが低いのが原因だ。こう考えている人も多いことでしょう。
ところで、そもそもこのモチベーションという概念は、比較的新しいものだとご存知ですか。
統計によると、この言葉がメディアで取り上げられ、一般的に使われるようになったのは2001年以降のようです(※坂口孝則著『モチベーションで仕事はできない』参照)。
どうでしょう。モチベーションという言葉は、2000年に入る前はほとんど職場でも使われていなかったということです。50歳を過ぎた、私と同年代の方々は、思い当たる節があるはずです。そうです。
「そういえば、社会に出たころ、モチベーションなんて言葉を使ったことがなかった」
と。
■ エンゲージメントとは何か?
いっぽう昨今は、エンゲージメントという表現も盛んに使われるようになりました。
「内発的動機づけ」という意味のモチベーションに対し、エンゲージメントは、絆や愛着という意味で、ビジネスにおいては、会社に対する貢献意欲という意味で使われることが多いと思います。
経営者の方々と話していても、
「社員のエンゲージメントを向上させたい」
「社内エンゲージメントを高める研修を、お願いできませんか」
このように、言われることが増えました。
モチベーションは、やや「自分目線」。対するエンゲージメントは、どちらかというと「組織目線」。周囲との関係性が前提だからです。
したがって、モチベーションという言葉を使うときは、特定の人を指すケースが多い。たとえば「部下のモチベーションが……」という感じで。
いっぽうエンゲージメントは不特定です。多くの人が「社員のエンゲージメントを……」と使います。
■ ロイヤルティについても解説する
エンゲージメントを理解するうえで、別の言葉をここで紹介しておきましょう。それはロイヤルティです。社員のロイルリティといえば「忠誠心」。
どちらも「組織目線」の言葉ですが、エンゲージメントの「愛着心」に対し、ロイヤルティは「忠誠心」です。カタカナのままではわかりづらいですが、漢字で表現すると、意味がとてもクリアになります。
まとめると、昭和はロイヤルティ、平成はモチベーション、令和はエンゲージメントの時代なのかもしれません。
忠誠心が求められた昭和時代の反動から、自己実現の欲求に応えるべきという風潮が平成時代に広がりました。しかし組織目線から個人目線へ極端に価値観が振れたため、令和になってもう一度、組織目線へと回帰しているように見えます。
■ 経営の原理原則とは?
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。大事なことは、組織で決めた目標を達成するかどうか。時代によってこの原理原則が変わることはありません。
思想でもなければ、価値観でもない。時代によって移り変わることのない真理と言えます。
なので、ロイヤルティ、モチベーション、エンゲージメントというのは、組織目標を達成させるうえでは、すべて関係のない概念です。
会社に対する忠誠心や愛着心があってもなくても、個人としてモチベーションが高かろうが低かろうが、ビジネスをしている以上、あたりまえのように達成させるのです。その努力をすることです。
ですから、先述したとおり、私のセミナーに参加して、
「部下のモチベーションを上げるにはどうしたらいいのか」
と経営者がアンケートに書くこと自体、おかしな話です。
あたりまえのことを、あたりまえ以上にやるときだけ、ロイヤルティやモチベーション、エンゲージメントなど、時代に合ったキーワードを使うようにしましょう。
そうでなければ、このような新語に惑わされないことが大事です。