ジョセフHC(日本代表)、相良監督(早大)らが受賞!ジャパンラグビー コーチングアワード2019
今年は14名のラグビー指導者が栄誉を受けた。
日本ラグビー協会は5月7日、優れた指導者を表彰する「ジャパンラグビーコーチングアワード2019」の受賞者を発表した。
ジャパンラグビーコーチングアワードは、指導者(S&Cコーチ等のスタッフを含む)の資質向上、学習意欲の高い指導者コミュニティ創出を目的として2017年に創設された。
その選考基準は、結果が最優先ではない。
第1回から選考委員を務める日本協会の今田圭太氏(技術委員会委員 ハイパフォーマンスコーチング部門長)は「結果よりもコーチングの内容を重視しています」と語る。
「中学世代からナショナルチームまで幅広く選考していますが、特に中学世代では勝敗に関わらず、選手の将来を考えたコーチングを行った指導者を選ばせて頂いています」(今田氏)
選手の資質を開花させて勝利に導くコーチング、独自の哲学を体現して好影響を与えている指導者を評価、表彰するアワードだ。
そんな内容重視のコーチングアワードで、2019年度の【最優秀賞】に輝いたのは、早大を11年ぶりの大学選手権優勝に導いた相良南海夫監督だ。
選手の主体性を重視し、各コーチの役割分担を明確にしたコーチングが評価された。
そして【優秀賞】には、全国高校ラグビー大会“花園”で悲願の単独優勝を果たした桐蔭学園の藤原秀之監督。
選手個々の判断力が光るラグビーで、春の選抜大会、夏の7人制大会、冬の花園の高校3冠を達成。チームの個性に合わせた試行錯誤を毎年積み重ね、頂点を極めた。
【優秀賞】に輝いたもう一人は、流通経済大学女子ラグビー部の井上愛美ヘッドコーチ(HC)。
現役引退からコーチ就任3年目で、チームを第6回全国女子選手権で優勝に導いた手腕、姿勢が評価された。
そして【特別大賞】に輝いたのは、男子15人制日本代表のジェイミー・ジョセフHC。
ラグビーワールドカップ2019で日本代表を初のベスト8へ導き、「ONE TEAM」のスローガンも流行語大賞を受賞するなど社会に多大な影響を与えた。
また【特別賞】には、優れた統率力で第30回ユニバーシアード夏季競技大会 2019における金メダル獲得に貢献した鈴木貴士氏(ユニバーシアード男子7人制代表HC)。
さらに同大会で女子7人制代表を率い、「人とボールが動き続けるラグビー」を掲げて同じく金メダルを獲得した稲田仁氏(ユニバーシアード女子7人制代表HC)も選出された。
3種類あるコーチ賞は、中学世代から大学まで6名の指導者が受賞した。
チームに変革を起こし、これまでのチーム力を明らかに飛躍させた指導者へ贈られる【変革賞】。
改革者として評価されたのは、関西学院大の牟田至監督。
学生主体の運営方針でチームを活性化し、関西大学Aリーグ3位、全国大学選手権ベスト8という成績を残した。
地方からの果敢なチャレンジと開拓精神で、新しいラグビー文化を全国にアピールした指導者へ贈られる【フロンティア賞】は3名。
1人目は、徳島・城東高の伊達圭太監督。
徳島県内屈指の進学校で、限られた戦力のなかでパフォーマンスを最大化させるコーチングにより、春のセンバツで予選リーグ2勝、冬の花園でも2回戦進出を果たした。
2人目は、埼玉・浦和高の三宅邦隆監督。
選手に自主性を持たせるコーチングにより、全国屈指の進学校ながら花園ベスト16進出を達成。
部員51人中、中学時代のラグビー経験者はわずか3人であり、まさに優れたコーチングによる成果と言えるだろう。
3人目は、U17東海ブロック代表の桑原立監督。
有望な高校生が集うコベルコカップ2019で、U17東海ブロック代表を初めてカップトーナメント進出へと導いた。
強豪の近畿ブロック代表を押しのけ、予選1位通過する快挙だった。
そして3つめのコーチ賞【スキルコーチング賞】は2名選出。
これはチーム全員のスキルレベルを著しく伸ばし、選手個々の強みを十分に引き出した指導者に贈られる賞だ。
1人目は佐藤善信氏(全国ジュニア群馬県スクール代表監督)。
選手全員が高いスキルを誇り、特にハンドリング、キッキングの技術が高かった。
2人目は衛藤伸仁氏(全国ジュニア大分県代表監督)。
ボールを積極的に動かすラグビーを展開。巧みなオフロードパスで見る者を魅了した。
そして最後の【日本代表カテゴリーコーチ賞】は、年代別代表に7人制、女子代表を加えた日本代表カテゴリーが対象だ。
U20日本代表の水間良武HCは納得の選出だろう。
2019年に下位グループから、世界トップ12か国による20歳以下の最高峰大会「U20チャンピオンシップ」への昇格を決めた。
チームミーティングで選手にプレゼンテーションさせるなど、主体性を育むチーム作りが評価された。
そして女子15人制日本代表を率いたレスリー・マッケンジーHCも選出。
スコットランド女子代表を敵地で初めて撃破。スピードとパスワークを全面に押し出す戦い方が奏功した。
選考委員の一人である日本協会の今田氏は、学び続ける指導者の増加が日本ラグビー界の発展に寄与すると信じている。
「この賞を通じて、コーチとして学び続け、自分の頭で考え、新たな戦術、コーチングを生み出そうとしている指導者の方を応援したいと考えています」(今田氏)
またラグビー界の発展だけではなく、さらに大きな広がりも目指している。
「今後はもっとこのアワードが広がっていって欲しいと思っています」
「いわゆる監督やスキルのコーチがメインになっていますが、コーチングに関わる全ての人、例えばS&Cやアナリスト・栄養士なども表彰していきたいと考えています」
「またラグビーの枠にとどまらず、他競技とも連携した形を構築していきたいとも考えています。役職の概念、競技の壁を越えるモデルケースとしてこのアワードが認知されていくことが理想です」(今田氏)
2020年度のコーチングアワードは、新型コロナウイルスの影響下における取り組みも評価対象になるはずだ。
1年後の受賞者は、果たしてどんな顔ぶれになるのだろうか。