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一芸突出型の原石が集う「ビッグマン&ファストマンキャンプ」開催。近年は強豪校からも選抜、その理由は

多羅正崇スポーツジャーナリスト
2019年のビッグマン&ファストマンキャンプ(写真:筆者撮影)

未完成ゆえに注目されず、やがてラグビーの道から逸れていく高校ラガーがいる。

無名校ゆえに日の目を見ず、将来像が描けないまま、フェードアウトしていく有望選手もいる。

そんな未完成の原石たちを集め「日本ラグビーは君に注目している」と伝えられないか。大学ラグビー関係者に彼らを見てもらえないか――。

そんな想いから、2018年にスタートした日本ラグビー協会の人材育成合宿が、通称「ビッグマン&ファストマン キャンプ」(Bigman&Fastman Camp)だ。

ラグビーが上手いかどうか等、完成度は問わない。

未完成だが、図抜けたサイズを持っている(ビッグマン)、もしくはスピード系の能力が抜群(ファストマン)という“一芸突出型”の原石を集め、最先端のプログラムを指導する。

2022年は7月27 日(水)からの3日間、推薦・他薦・自己推薦によって集まった40名が、長野・菅平高原(ホテルやまびこ・53番グラウンド)で3日間のキャンプを行う。

【2022年度第2回TIDユースキャンプ(Bigman&Fastman Camp)】日程

  • 7月27日(水) 午後:集合、開講式、練習
  • 7月28日(木) 午前:練習/午後:練習
  • 7月29日(金) 午前:練習/午後:閉講式、解散

ラグビー無名校の中にも日本代表のポテンシャルを持つ選手はいる。

事実、2019年W杯メンバーで日本代表のPR木津悠輔は、ラグビー少人数校の大分・由布高校出身。当初、木津は高校卒業後に消防士になろうとしていた。

また、2022年の日本代表にデビューしたPR竹内柊平(宮崎工業)、FL飯野晃司(愛知・三好高校)も全国トップレベルのラグビー強豪出身ではない。

今キャンプの目的のひとつは「未来の木津悠輔」「未来の竹内柊平」「未来の飯野晃司」になりうる逸材に刺激を与え、日本ラグビーの発展に寄与する人材を育てることだ。

ただ無名校ばかりではなく、近年は全国強豪からの選抜もある。

その理由について、今キャンプの発起人で、ユース戦略TID(タレント発掘育成)マネージャーの野澤武史氏は話す。

野澤氏は毎年5月からの2か月半、全国9ブロック(北海道、東北、関東、東海、北信越、近畿、中国、四国、九州)を回ってきたタレント発掘の専門家だ。

ビッグマン&ファストマンキャンプの発起人で元ラグビー日本代表の野澤武史氏(写真:筆者撮影)
ビッグマン&ファストマンキャンプの発起人で元ラグビー日本代表の野澤武史氏(写真:筆者撮影)

「強豪校の部員は増加傾向にあり、他校にしてみれば羨ましい身長180センチ、体重120キロという選手であっても世に出る可能性が高いとは言えません。そうした選手にもきっかけを掴んでほしい、という思いがあります」(野澤氏)

全国トップレベルの一部は、1学年だけで40~50人という大所帯。しかも逸材が揃っている。

強豪校の監督も悩ましい。他校であれば間違いなく主力になるレベルの選手であっても、どうしても試合機会が少なくなる場合がある。

そんな可能性のある有望選手にも光を当て、キャンプを糧に飛躍してほしい――。それが野澤氏の狙いというわけだ。

キャンプの成果は第1回(2018年)から出ており、第1回参加者の「7、8割」(野澤氏)がラグビー強豪大学へ進学。

第1回参加者では、明大中野八王子高校のLO松本光貴(明治大学)は、飛び級でU20日本代表に選出。鹿児島工業の神田康生(流通経済大学)らも大学の第一線で活躍中だ。

まさに選手にとっては人生が変わるかもしれないキャンプ。

そして、スカウト側にとっては将来性を見極める目が試される場、3日間の真剣勝負だ。

【2022年度第2回TIDユースキャンプ(Bigman&Fastman Camp)】メンバー

(ポジション・名前/所属/身長・体重)

PR佐藤秀梧(田無工業高校2年)178/140

PR濱田海斗(大阪桐蔭学園高校2年)186/133

PR一ツ橋孟也(常翔学園高校2年)172/130

PR木村大祐(洛水高校2年)180/128

PR馬煜城(夢野台高校2年)185/125

PR栗山学(和歌山工業高校2年)176/120

PR田能開成(早稲田大学高等学院2年)186/119

PR橋口航大(鹿児島実業高等学校2年)183/117

PR横尾双太(東福岡高校2年)181/121

PR小田島采輝(國學院久我山高校2年)174/121

PR/FL益子龍磨(県立太田第一高校2年)185/115

PR小田大樹(科学技術高校2年)175/115

PR樋口颯汰(金光藤蔭高校2年)180/115

PR三角正裕(熊本西高校2年)178/115

WTB永井つかさ(東京都市大学塩尻2年)181/70

LO小菅隼輝(鷲宮高校1年)193.4/87

FL古賀大輝(佐賀工業高校2年)192/80

LO/NO8吉川輝(明大中野八王子高校2年)192/110

LO林琢磨(茗溪学園高校2年)191/97

FW井上和輝(福岡工業大学附属城東高校1年)191/100

LO桑山翼(明和県央高校2年)190/100

LO/FL岩渕宏紀(佐野日大高校2年)190/85

LO/NO8黒髪拓(田無工業高校2年)189/100

LO/PR後藤大輝(福山工業高校2年)188/108

No.8/LO松澤慶(早稲田佐賀高校2年)188/93

No.8松浦一誠(愛知県立高蔵寺高校2年)175/90

LO/FL山口英之介(熊谷高等学校2年)187/81

CTB/LO魯亨衍(浪速高校2年)187/85

LO谷山優斗(京都工学院2年)190/95

SH生出龍雅(立命館慶祥高校2年)176/64

WTB/FB長谷川諒(報徳学園高校2年)184/78

WTB濱谷陸斗(札幌山の手高校2年)174/68

WTB上杉壽人(高津高校2年)166/62

WTB岡田健(茗溪学園高校2年)177/78

WTB新居渉乃進(芦屋高校1年)172/70

SO中田和志(作新学院高等学校2年)185/75

SO/CTB普門晃輔(高松北高校2年)170/81

WTB松尾佳大(東福岡高校2年)180/72

WTB/FB後藤祭(長崎南山高校2年)170/72

WTB梅木颯斗(黒沢尻工業高校2年)180/81 

スポーツジャーナリスト

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める

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