全国では80.6%…日本における下水道の普及率の現状をさぐる(2023年公開版)
多くの人にとって社会生活には欠かせないインフラ、下水道。衛生・公衆環境の整備の指針の一つとなる、下水道の普及率の現状を公益社団法人日本下水道協会や国土交通省の下水道資料室における公開値から確認する。
直近となる2021年度末(2022年3月末時点)における都道府県別の下水道普及率は以下の通りとなる。
徳島の18.7%から東京の99.6%まで数字の変動が大きく、先行記事の上水道普及率と比べても随分と状況が異なる実態が見えてくる。全国で均すと80.6%との結果が出ている。
これを分かりやすいように普及率の順に整理し、上位・下位を抽出したのが次のグラフ。
上位はおおよそ人口密集地域、下位は比較的人口の密度が低い地域で占められている。これはコストパフォーマンスを原因とするところが大きい。例えば値の上では一番低い徳島県だが、同県の公式サイトによると、下水道の普及率が低いことについて次のような説明がされている(【徳島県庁コールセンター すだちくんコール】)。
Q)徳島県はなぜ下水道の普及率が他県に比べて遅れているのですか?
A)本県は台風の常襲地域であり、浸水被害に悩まされてきたことから、汚水処理より浸水対策の整備に力を注いできた経緯があります。
また、吉野川などの大河川の流域に市街地が形成されており、人口密度に比べて川の水量が豊富で、水の汚れをそれほど意識する状況になかったことも、その一因だと考えています。このようなことが原因で、下水道の整備が遅れたと考えています。
また国土交通省の資料室内にある「汚水処理の普及」によれば、地域間格差が大きい理由として、人口が集約されていない場所は下水道による一括処理ではなく、合併槽などによる個別処理の方が望ましいとの解説もある。
個々の環境の違いによるところも大きく、単純に下水道普及率の値が環境のよし悪しを決める決定的な要素ではないものの、整備が望まれているもののコストなどの問題で立ち遅れている場所があるのも事実。今後の環境整備の推進に期待したいところだ。
他方、今後は多くの地域で人口の漸減と高齢化・地方の過疎化が予想されるため、地方、中でも人口密度が低い地域における下水道事業の採算性の問題が、これまで以上に大きな問題点となる。効率面で多様な決断が求められることになるだろう。
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