バルサがモラタの獲得を望む理由。シャビの要求とストライカーの必要性。
冬の移籍市場が、開幕しようとしている。
スペインでは、1月3日から正式にマーケットが開く。だがすでにマンチェスター・シティからのフェラン・トーレス獲得を決めているように、積極的な動きを見せているのがバルセロナだ。
バルセロナは今季途中に成績不振を理由にロナルド・クーマン前監督を解任。後任にシャビ・エルナンデス監督を招聘した。
だが道のりは平坦ではなかった。チャンピオンズリーグでは、21年ぶりのグループステージ敗退が決定。リーガエスパニョーラでは7位に位置しており、消化試合数が1試合少ないとはいえ首位レアル・マドリーと勝ち点18差となっている。
何かを変えなければいけないのは明らかだ。そこで、バルセロナとシャビ監督は動いている。フェランを獲得するために、移籍金固定額5500万ユーロ(約66億円)を支払うことを決断した。そして、いま、アルバロ・モラタ(ユヴェントス)の獲得を検討している。
■オペレーションの状況
ただ、容易なオペレーションにはならないだろう。
モラタについては、“関係者”が複数いることで、状況が複雑になっている。保有権を有しているのはアトレティコ ・マドリーで、レンタル先はユヴェントスだ。アトレティコ 、ユヴェントス、バルセロナの3クラブの合意が必要になる。
また、ここで重要になるのがアントワーヌ・グリーズマンの存在だ。グリーズマンは今夏、レンタルの形でアトレティコに復帰した。その際、ある一定の条件が満たされた場合、アトレティコ側に4000万ユーロ(約52億円)での買い取り義務が生じるという契約が交わされていた。
バルセロナとしては、グリーズマンの買い取りをフリーにする代わりに、アトレティコにモラタの譲渡を望むという交渉が可能になる。一方でユヴェントスとはレンタル期間の短縮やレンタルフィーの負担や補填について話し合わなければならない。
■ストライカーの成功
バルセロナで、ストライカーが成功するのは難しい。
今夏、メンフィス・デパイ、ルーク・デ・ヨング、セルヒオ・アグエロの3選手がバルセロナに到着した。アグエロは心臓の問題で引退の決断を余儀なくされ、L・デ・ヨングは今冬の移籍市場で放出されることが濃厚となっている。
モラタを望んでいるのはシャビ監督だという。しかし、バルセロニスタが忘れてはならないのは、ペップ・グアルディオラ監督とズラタン・イブラヒモビッチの関係性だ。
バルセロナは2009年夏にインテルからイブラヒモビッチを獲得した。それはグアルディオラ監督の要望だった。移籍金4990万ユーロ(約64億円)+サミュエル・エトーというオペレーションで取引が成立した。
だがグアルディオラ監督はイブラヒモビッチを重宝しなかった。正確に言えば、メッシのファルソ・ヌエベ(偽背番号9/ゼロトップ)への信頼度が増していき、9番タイプの必要性がなくなっていった。だが当然、イブラヒモビッチからすれば、寝耳に水の話だった。
「グアルディオラはまったく僕を理解していなかった。僕のプレーを、全部彼が決めようとしていた。時には、直感でプレーしたかった。だけど、その度にグアルディオラが求めていることが頭をよぎって、できなかった。(バルセロナにいた時は)考え過ぎていた」とはイブラヒモビッチの言葉だ。
「グアルディオラは、個性の強い選手が好きではない。僕は、彼にとって、問題になっていた。彼がその問題を解決できそうになかったから、僕自身が移籍を決断して解決したんだ」
イブラヒモビッチは200−10シーズン、リーガで16得点をマーク。だが最終的には1年のレンタルののち、移籍金2400万ユーロ(約27億円)で売却された。
■モラタの挑戦
過去に、マドリー、バルセロナ、アトレティコ でプレーした選手はミケル・ソレールとベルント・シュスターの2名のみだ。モラタの移籍が成立すれば、史上3人目の選手になる。
また、モラタは移籍によって資金を動かしてきたスペイン人史上最高の選手になっている。ユヴェントス、マドリー、チェルシー、アトレティコへの移籍で、合計2億500万ユーロ(約261億円)の移籍金とレンタル料が発生してきた。
フェルナンド・トーレス(9400万ユーロ/約128億円)のレコードを大きく塗り替え、世界的に見てもクリスティアーノ・ロナウド(2億3000万ユーロ/約296億円)、ネイマール(3億1000万ユーロ/約403億円)に迫る勢いだ。
一方で、シャビが求めたとはいえ、先述の通りバルセロナはストライカーにとって難しいクラブだ。キャリア通算で公式戦471試合176得点61アシストを記録しているモラタだが、バルセロナに適応するかは未知数である。それでも、モラタを望むのは、シャビに何かしらの算段があるのかもしれない。