コミュニケーション４つのスキルを整理する

英語力で考えたらわかりますが、コミュニケーション能力を分解すると次の４つのスキルに分けられます。それは「リーディング」「ライティング」「リスニング」「スピーキング」の４つ。

このうち、よく学校教育で言うところの「読み書き」が「リーディング」「ライティング」です。授業では「リスニング」がメイン。先生が話していることを聞き、ノートにとる。それを後で読んだり、書き写したりして、勉強します。絶対的な量で考えたとき「話す」――つまり「スピーキング」の時間が少ないことが、日本の学校教育の特徴と言えるでしょう。

とはいえ読み書きの「書く（ライティング）」は、そこに費やす時間が多くても、表現豊かな文章を書く機会は少ないと言えるでしょう。先生が黒板に書いたこと、答案用紙に書かれた単語や定型的な文章を書き写すことが大半です。

「聴く（リスニング）」と「読む（リーディング）」は言語をイメージ化するスキルです。反対に、「書く（ライティング）」と「話す（スピーキング）」は、頭でイメージしているものを言語化するスキル。

日本の学校教育の基本「読み書き」の「書き」は、前述したとおり、先生が言っていることや、教科書の文字を書写したりする行為ですので、頭の中でイメージしていることを言語化する、本来の「ライティング」ではありません。したがってこの「文章を書く」というスキルを手に入れるには独自の学習が必要でしょう。

これらの慣習は、社会人になっても受け継がれます。どちらかというと学生時代よりもさらに受け身になり、「書く」という行為が少なくなる傾向があります。学生時代はたくさんノートに文字を書いた人も、社会人になってあまり書かなくなるのです。講師として、企業経営者や管理者を相手に研修するときに私は強く感じます。

会議中でもメモをとる人は少ない。私が講演やセミナーをする際、ノートもメモ用紙も持たずに会場入りする人もいます。資料を配らず、「私の話を聴いてメモをとってください。皆さん自身が書いた記録が今日の研修資料となります」と言うと、戸惑う管理者がたくさんいます。

受動的だと「想像力」が豊かにならない

受動的と能動的とで分けると、「聴く（リスニング）」と「読む（リーディング）」は受動的であり、「書く（ライティング）」と「話す（スピーキング）」は能動的な行為です。

人は受け身でいると、感度が鈍くなり、イメージする力が弱まっていきます。

自分が頭でイメージしていることを言語化する。しかも誰かに理解してもらうために言語化するというプロセスをはさむと、かなり頭を整理しなければなりません。想像力、表現力を鍛えないとできないのです。したがって、ものを書く、話す……という能動的な行為、しかも誰かを相手にし続けることで、創造性が身に付いてくるのです。

いっぽうで、何かを読んだり、人の話を聴いたりする受動的なコミュニケーションばかりしていると、言語をイメージ化する力が養われません。人の話を聴いて頷いたりすることはできても、「自分の意見を言え」と言われると、とたんに何も言葉が出なくなるのです。

「コミュ障」を克服するには

最近、ライトな感覚で「コミュ障」という言葉を使う人が増えています。（本来の意味でのコミュニケーション障がい、ということではなく、なんとなくコミュニケーションが苦手、という意味で）

実際に、社会人でも、自分の意見が言えない、自分が思っていることをうまく表現できないという人がたくさんいます。英語を含め、他言語を勉強していい点数をとってもうまく話すことができない、という人とよく似ています。これは日本の学校教育が、かなり受動的なコミュニケーションに偏っているからではないかと私は推察します。

「コミュ障」を克服したいという人は、日頃から、誰かに理解してもらうための文章を書いたり、話して聞かせる努力をしたいですね。