国力10倍のロシアによる侵略に抵抗し善戦するウクライナの姿と日本の防衛力増強の意義
最近では中国の軍事力が急激に台頭してきたのを受けて、「もう日本が軍拡競争してもどうせ太刀打ちできないのだから止めるべき」という指摘が一部から出ています。日本国内の一部からだけでなく中国側から指摘する声さえもあります。
これは「2060年の将来予測」で中国のGDP(国内総生産)は日本の約10倍になる(現在は3倍の差)という数字を受けて、もう日本は対抗しても無駄だという中国大阪総領事館による威嚇行為になるわけですが、目の前に見えている重大なことを見落としてはいないでしょうか?
ウクライナとロシアのGDPは10倍の差
そう、現在行われているウクライナの戦争こそが「国力10倍の相手に戦って負けていない」のです。ロシアのGDPはウクライナの10倍もあります。航空戦力も10倍、砲戦火力や装甲戦力でも数倍から10倍の差がありました。しかしウクライナはロシアの侵攻を跳ね返し、首都キーウと第二都市ハルキウを守り抜き、反攻作戦を仕掛けて国土を奪回しようとしています。
もちろんウクライナ単独では簡単に負けていたでしょう。しかし世界中がロシアの侵略を非難し、ウクライナを支援している状況が、この徹底抗戦での善戦を作り上げました。開戦した2月24日から8カ月が経過してもなおウクライナは戦い続けています。
専守防衛の日本が目指すのはこの在り方です。もともと戦争とは防御側が有利になるものです。古来より攻める側は守る側の数倍の戦力(数だけではなく火力など総合的な力)が必要と謂われています。これに加えて世界中を味方に付けて支援を受ければ、10倍の戦力差だろうと埋めてしまうことができるのです。
中国はおそらく核戦力抜きの通常戦力のみでならロシアより強力な相手でしょう。ですが日本はウクライナが渇望しても得られないアメリカ軍の直接参戦という味方を得られます。平時の西太平洋のアメリカ軍駐留戦力では中国軍に対して劣勢ですが、有事にアメリカ本土からの増援戦力が救援にやってくれば逆転することが可能です。日本はその間に自前の戦力で持ち堪えなければなりません。
日本が防衛費をGDP2%に軍拡する決断を行うのは、ウクライナ危機を受けてドイツがGDP2%に軍拡を決断したのを真似したというだけではありません。ロシアよりも強力な中国という仮想敵に対する備えです。そして例え将来に国力が10倍となる相手であろうとも、現在のウクライナが国力10倍のロシア相手に戦えている以上、意味はあるのです。