Yahoo!ニュース

26年W杯の出場「32から48」とGL「8組・1組4チーム」から「16・3チーム」で日本はどうなる

坂東太郎十文字学園女子大学非常勤講師
1組が3に減って16組へと変更(写真:ロイター/アフロ)

 2026年のサッカーFIFAワールドカップ(W杯)本大会(カナダ・メキシコ・アメリカ3カ国共催)から現行の32から48チーム制へと拡大されます。グループリーグ(GL)も今の8組制から16組制へ再編されるなど大きな変更を予定しているのです。気の早い話ですが、そうなったらいかなる景色に変わるのか。FIFAランキング(22年10月6日発表)から予測してみます。

主な変更点

 出場チームの拡大は1998年フランス大会でそれまでの24から今の32に広げられて以来。日本が初出場した大会でもあります。48枠への拡大を地域別でみると以下の通り。

欧州 13→16へと3増

アフリカ 5→9.5へと4.5増

アジア 4.5→8.5へと4増

南米 4.5→6.5へと2増

オセアニア 0.5→1.5へと1増

 なお北中米カリブ海は3.5→6.53増ですが、0.5は開催国ゆえの大陸間プレーオフ枠です。

 次に本大会GLです。今大会までの8組・1組4チームで上位2チームが決勝トーナメント(決勝T)に進む方式を大幅に改めて

16組・1組3チームで上位2チームが決勝T進出

となります。

ポット1は「見慣れた光景」ただし……

 ではFIFAランキング(22年10月6日発表)を単純に当てはめて出場チームとポット分けを試みてみましょう。なお開催国が26年は3チームで扱いが正式に定まっていないため便宜上、北中米カリブ海でランク最上位のメキシコ(13位)を開催国枠としてカウント。

 ポット1は開催国+ランク上位15チームで構成されそうです。開催国のうちメキシコとアメリカはランク上もポット1なので扱いに苦慮するとしたらカナダです。ただしポット3には入れるので便宜上そのままにしておきます。

【ポット1】FIFAランク順です。

1位 ブラジル(南米1)

2位 ベルギー(ヨーロッパ1)

3位 アルゼンチン(南米2)

4位 フランス(ヨーロッパ2)

5位 イングランド(ヨーロッパ3)

6位 イタリア(ヨーロッパ4)

7位 スペイン(ヨーロッパ5)

8位 オランダ(ヨーロッパ6)

9位 ポルトガル(ヨーロッパ7)

10位 デンマーク(ヨーロッパ8)

11位 ドイツ(ヨーロッパ9)

12位 クロアチア(ヨーロッパ10)

13位 メキシコ(北中米 開催国)

14位 ウルグアイ(南米3)

15位 スイス(ヨーロッパ11)

16位 アメリカ(北中米1)

 まあまあ見慣れた光景です。ただし当然ながら今大会までの「ポット1=開催国とランク出場国上位7」が広がるため半数がポット2から繰り上がります。

日本が入るであろうポット2は

 次に日本が入るであろうポット2を推測してみます。

【ポット2】FIFAランク順です。

17位 コロンビア(南米4)

18位 セネガル(アフリカ1)

19位 ウェールズ(ヨーロッパ12)

20位 イラン(アジア1)

21位 セルビア(ヨーロッパ13)

22位 モロッコ(アフリカ2)

23位 ペルー(南米5)

24位 日本(アジア2)

25位 スウェーデン(ヨーロッパ14)

26位 ポーランド(ヨーロッパ15)

27位 ウクライナ(ヨーロッパ16)

28位 韓国(アジア3)

29位 チリ(南米6)

30位 チュニジア(アフリカ3)

31位 コスタリカ(北中米2)

32位 ナイジェリア(アフリカ4)

 ヨーロッパ以外は同一地域がGLで対戦しないという今までの規定通りだと日本の属するアジアはポット1に1つもいないので、どこと当たってもおかしくありません。

 また、ここまではFIFAランキングと矛盾なく選ばれる可能性が十分です。初出場もありません。

ポット3はランク48以外が7つも出場

 なかなか興味深いのがポット3。なおこの試算ではFIFAランキングでポット2までに入れなかったチームが大陸間プレーオフに回ってランク上位が勝つと仮定しています。

【ポット3】FIFAランク順です。

37位 アルジェリア(アフリカ5)

38位 オーストラリア(アジア4)

39位 エジプト(アフリカ6)

41位 カナダ(北中米3)※開催国なので扱い未定

43位 カメルーン(アフリカ7)

44位 エクアドル(南米7)

46位 マリ(アフリカ8)

48位 コートジボワール(アフリカ9)

50位 カタール(アジア5)

51位 サウジアラビア(アジア6)

54位 ブルキナファソ(アフリカ10)

60位 パナマ(北中米4)

64位 ジャマイカ(北中米5)

68位 イラク(アジア7)

70位 アラブ首長国連邦(アジア8)

105位 ニュージーランド(オセアニア1)

 ここでランキング48以外のチームが8つも出てきます。最大の理由はヨーロッパが16枠に止まっていて48位以内ながら、これが理由で出られないチームが7つもあるから。代わりに恩恵を受けるのがアジア・アフリカ勢でマリ、ブルキナファソが初出場。「0.5枠の悲哀」から脱して1枠を得るオセアニアにも朗報です。

最も高確率のGLは「欧州×日本×アフリカ」

 では日本はいかなる組み合わせになるでしょうか。ポット3のなかで同一地域のアジア(16分の5)とは当たらないのを前提とすると以下の通り

1)ポット1の欧州勢と当たる場合(確率16分の11)

 その場合、ポット3の相手はアフリカ(16分の6)、北中米(16分の3)、南米(16分の1)、オセアニア(16分の1)。

 つまり日本の対戦相手として確率が最も高いのはポット1が欧州で3がアフリカです。過去のGLでの対アフリカ勢との結果は2勝1敗1分け。仮に日本にとって死の組が起きるとしたらポット1が欧州強豪で3に南米が来た場合か。

2)ポット1の南米勢と当たる場合(確率16分の3)

1)からポット3の南米勢と当たる可能性が消えて対策はやや容易になるもポット1がブラジル、アルゼンチン、ウルグアイと「どれも怖い」。

3)ポット1の北中米勢と当たる場合(確率16分の2)

1)からポット3の北中米勢と当たる可能性が消えます。本来最も与しやすい組になりそうですがポット1の北中米勢が盛り上がるはずの開催国というのが難。しかも今大会のカタールなどと異なって実力でポット1に入れる強豪だからやりづらそうです。

予選で意外と苦労する日本にとってアジア枠拡大は朗報

 アジア枠の拡大は日本にとって「本大会に出場する」だけを考えたらいいことずくめです。例えば「ドーハの悲劇」に見舞われ出場権を逸した94年アメリカ大会におけるアジア枠は「2」で日本は最終予選で3位に終わっています。

 枠が「3.5」に広がった98年大会も実は同じ3位(A・B2組のうちB組2位でA組2位とプレーオフで勝利)ながら初出場を果たしたのです。拡大に救われたとの解釈もできましょう。今大会アジア予選はA・B2組のうちB組2位。2006年大会から「4.5」に枠が広がっていたからいいようなものの、3.5のままであったら98年と同じプレーオフでした。案外と予選で苦労しています。でも8.5あれば安心です。

「奇数のGL」ゆえの難しさ

 本大会GLの戦い方は大きく変わってきそう。「4分の2が決勝Tへ」から「3分の2」へと変更されるから確率は上がります。しかし1組の総試合数6(1チーム3)から総試合数3(1チーム2)となる分だけ初戦の重みが増すでしょう。

 3が奇数というのも考え物。現行だと最終戦(3試合目)は公平性を保つために同時間帯で行われるのに対して3ではできません。1チームが試合のない日が必ず出てくるのです。

 おそらく日程は、

ポット1vsポット3

ポット2vsポット3

ポット1vsポット2

の順。「2勝すれば文句ない」はその通りながら、ままならぬのが勝負事。日本がポット2としたら、「ポット1vsポット3」の結果を知った上で別日にポット3と対戦します。

 順当にポット1が勝っていれば「絶対に負けられない戦い」となり、ポット3が初戦で番狂わせを演じたら演じたでやりにくい。心情面だけで想像すればポット3が一番気楽です。休みなく2試合やって目指すは勝利のみ、でいいから。

十文字学園女子大学非常勤講師

十文字学園女子大学非常勤講師。毎日新聞記者などを経て現在、日本ニュース時事能力検定協会監事などを務める。近著に『政治のしくみがイチからわかる本』『国際関係の基本がイチから分かる本』(いずれも日本実業出版社刊)など。

坂東太郎の最近の記事