役員報酬不正受領で日産西川社長辞任は不可避
日産自動車の西川廣人社長が、株価に連動する役員報酬制度(SAR)について、社内規定に違反して不当に数千万円を上乗せして受け取ったことが、社内調査の結果で判明し、9月4日に開かれた監査委員会で報告されたと報じられている(【(日経)日産の西川社長、報酬数千万円上乗せか 社内規定に違反】【(朝日)日産・西川社長ら、報酬巡り不正の疑い 調査結果報告へ】)。
今年6月10日発売の『文藝春秋7月号』に掲載されたグレッグ・ケリー前代表取締役のインタビュー記事【西川廣人さんに日産社長の資格はない】で、株価に連動した報酬を受け取る権利の行使日を変更し、当初より4700万円多い利益を得たとの疑いが指摘されていたが、その事実が、社内調査の結果で確認されたということだろう。
当時、このケリー氏のインタビュー記事に関して、私は、『文春オンライン』で、西川氏が、カルロス・ゴーン前会長の事件について、どのような発言し、どのような対応を行ってきたのかを振り返り、詳しく解説した(【日産・ケリー前代表取締役が明かした「西川廣人社長の正体」】)。
この記事を、是非、改めて読んで頂きたい。
ここでも述べているように、そもそも、世界に衝撃を与えた日産自動車会長ゴーン氏の事件は、逮捕直後、西川社長が日産本社で記者会見を開き、「社内調査の結果、本人の主導による重大な不正行為が大きく3点あった」と述べ、検察当局に社内調査の結果を報告した経緯を明かし、自らの心情について、
「残念」という言葉ではなく、(それを)はるかに超えて強い、「憤り」ということ、そしてやはり私としては、「落胆」ということを強く覚えております
と述べたところから始まった。
ところが、その後、ゴーン氏ら有価証券報告書虚偽記載の逮捕事実は、まだ現実に支払われてもいない「退任後に支払うことが約束された報酬」についてだったという“衝撃の事実”が明らかになった(【ゴーン氏事件についての“衝撃の事実”~“隠蔽役員報酬”は支払われていなかった】)。
その一方で、西川氏は、現実に、4700万円もの不正な報酬を受け取っていたことが、ケリー氏の文芸春秋のインタビューで指摘されていたが、今回、日産の社内調査によっても明らかになった。
西川氏の不正は、検察と結託してゴーン氏を追放したクーデターの正当性に重大な疑問を生じさせることは言うまでもない。不正が正式に取締役会に報告された時点で、西川氏が社長を辞任するのは当然である。日産自動車は、これまで西川氏が行ってきたことを全面的に検証し、今、東京地裁で公判前整理手続が進められているゴーン氏の事件への会社としての対応も再検討すべきだ。