韓国外相の交代で日韓関係はどうなる!
韓国の外相が変わる。韓国史上初の女性外相であった康京和(カン・ギョンファ)外相が退き、鄭義溶(チョン・ウィヨン)大統領外交安保特別補佐官が後任となる。
御年74歳になる鄭義溶次期外相は駐米公使、駐ジュネーブ代表部大使などを歴任した熟練外交マンである。一般的には米国通として知られているが、前職の国家安保室長時代に太くはないが、日本とも独自のパイプを築いている。実際に昨年、懸案解決に向け大統領特使としての訪日話も持ち上がったこともあった。
(参考資料:未解決の「日韓紛争」ランキング「ワースト10」)
韓国国内ではバイデン新政権発足に伴い米韓関係の再構築と米朝対話の復元のため米朝首脳会談をお膳立てをした手腕を買って外相に起用したとの見方が有力だが、停滞している日韓関係の打開に向けて「一石」を投じたとの見方も一部にはある。
鄭次期外相は外交統一委員会の人事聴聞会(5日)で委員から質問を受ける前に所信を表明していたが、日本については米国、中国に続いて3番目に取り上げ、以下のように発言していた。
「日本は近い隣国で、朝鮮半島と北東アジア地域の平和と安定のため協力しなければならないパートナーである。両国間には懸案があるが、外交的対話と疎通を通じて解決の知恵を模索し、建設的で未来志向的な協力が再開できるよう可能な努力を傾注していく。特に両国の人的、経済的交流を復元し、環境・保健などの分野での協力を拡大していく」
韓国は先に公表した国防白書で日本を「パートナー」から「隣国」に格下げしていたが、鄭次期外相は再び日本を「パートナー」扱いしていた。「隣国」に格下げしたことを日本のメディアが大きく取り上げたことを意識したのか、それとも日本がアグレマン(同意)を出す前に姜昌一前韓日議連会長を駐日大使に任命したことに日本政府が不快感を示したことを気にしたのか、できるだけ事を荒立てないよう努めていた。しかし、質疑応答となると、一貫して原則論に終始した。
例えば、「文大統領は韓日関係では過去史(歴史)問題と領土問題を一括りにした宿題と現在と未来のための協力というツートラックの立場を明らかにしている。ここ1~2年をみると、徴用工問題や慰安婦問題、そして経済制裁問題韓日間の正常な交流と協力に大きな障害となっている。大統領は新年辞で相当積極的に解決の意識を示していた。外相としてこの過去史の問題をどう解決するのか?解決策はあるのか?」との与党「共に民主党」の李庸ソン議員の質問には「議員が言うようにツートラックを維持すべきだと思っている。過去史問題では原則を維持し、対応していくつもりだ。ただ、その過程で韓日両国は相互自制し、冷静な姿勢を維持すべきだ。十分な対話を通じて多くの懸案が賢明に処理できればと思っている」と述べ、韓国独自の努力ではなく、これまでのように日韓相互協力による解決を強調していた。
また、知日派と称される「共に民主党」の代表である李洛淵議員が「文大統領の残りの任期の間に日本との懸案が解決されるのが望ましいが、そうした目標を持っているのか」と質したところ、鄭次期外相は「現実的で、合理的でかつ原告が同意できるそうした案を何度も(日本側に)提示しているが、日本が頑固である」と事態が進展しないのは日本に問題があるとの認識を示していた。
(参考資料:日本に段々と擦り寄る韓国の「徴用工解決策」 保守系野党議員が「屈辱的外交惨事」と批判!)
李議員に配慮して一応は「もっと接近できるよう方法を探ってみる」と更なる努力を示唆してみせたが、李議員が「東京五輪まで妥結点を探せるのか」と畳みかけたところ「現実的には難しい」と、東京五輪までの解決が容易でないとの見通しを口にしていた。
鄭次期外相は文大統領が新年辞で日本政府に賠償を命じたソウル地裁の判決について「困惑している」と発言したことや、元徴用工裁判判決との関連で日本企業の資産強制売却は「望ましくない」と語ったことについて「大統領の考えが変わったのか」と聞かれると、「変わったわけでない」と前置きしたうえで「大統領の発言は裁判所が強制措置を取る前に対話で解決されるのが望ましいとの趣旨と理解している」と、一連の裁判の判決に関する文大統領の認識は今も変わりがないことを強調していた。
文大統領は新年辞で朴槿恵政権下の2015年に日本との間で交わされた日韓慰安婦合意について「両国による公式的な合意」であることを認めたが、鄭次期外相はこの点について「手続き上、問題があった。密室合意であったので大統領選挙では5つの政党の大統領候補が全員、当選すれば韓日合意を破棄すると公約していた。しかし、文大統領は大統領就任後にその公約を破棄した」と述べ、文大統領の決断を「政治的に困難な決断であった」と評価していた。
聴聞会では同じ「共に民主党」の李相ミン議員から「過去に日本帝国主義が犯した部分について今の日本の世代にその責任を押し付ければ両国の葛藤と対立を深めるだけだ。我が国も国民をまともに保護できなかった責務がある。日本が当然償わなければならない責務だが、韓国政府が代理弁済したらどうだろうか。文政権がリーダシップを発揮して決断を下して解決すべきで、次の政府に委ねる事柄ではない」と解決策として韓国政府による「代理弁済」案を提示したが、鄭次期外相の答えは素っ気なく、たった一言「そのことは理解しているが、現実には国内の被害者中心で考えなくてはならないので苦悩している」の言葉で終わっていた。
鄭次期外相の発言を検証する限り、外交の司令塔が変わったからといって、元徴用工問題や元慰安婦問題をめぐる文政権の原則、政策が大きく変わることはなさそうだ。