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日本に段々と擦り寄る韓国の「徴用工解決策」 保守系野党議員が「屈辱的外交惨事」と批判!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
2017年に来日した際の安倍総理(当時)とのツーショット(金基賢議員のHPから)

 韓国政府は日本企業に元徴用工らへの支払いを命じた大法院(最高裁)の判決には「三権分立上、介入できない」として傍観しているが、その一方で、日韓関係の破局を防ぐためそれなりの打開策も模索しているようだ。打開策はいずれも最高裁の判決を踏まえているもののそれでも徐々にではあるが、日本もある程度受け入れ可能な折衷案を見いだそうと苦心しているようだ。

(参考資料:3件だけではない「元徴用工裁判」 最高裁で9件、地裁で20数件が係争中 原告人は約1千人!

 1.「1+1」案

 昨年6月に大阪で開催された「G20サミット」への文在寅大統領の出席に合わせて検討され、日本側に内々に打診されたのが「1+1」案で、日本の企業だけでなく、日韓請求権協定に基づく日本の経済協力金で恩恵を受けた韓国企業も元徴用工らに慰謝料を支払う案である。

 この日韓企業による「折半案」は「国際法に反している韓国最高裁の判決に基づく日本企業の支払いには応じられない」とする日本政府の拒絶にあって霧散した。

 2.「2+1」案

 次に、韓国内で検討されたのが韓国政府と韓国企業が基金を創設し、これに日本企業が参加する案だが、この案は「加害者である日本企業の責任を韓国政府と韓国企業が共同で分担するのは道理に合わない」と元徴用工らが同意しなかったことから立ち消えとなった。

 3.「1+1プラスアルファ」案

 三つ目の策は、昨年12月に与党「共に民主党」の文喜相国会議長(当時)が提案した日韓の企業からの寄付と両国国民からの寄付で「記憶・癒し・未来財団」なる名称の基金をつくり、元徴用工らを金銭的に支援する案である。

 「文喜相案」と呼ばれるこの案は日本企業の寄付については強制でも義務でもなく「自発的」とすることで日本に受け入れさせ、同時に韓国人には日本企業の寄付は大法院判決に基づく賠償責任に代わるものであると納得させることで折り合いをつける折衷案であった。

 文議長が主導して超党派による立法化に乗り出したが、慰安婦問題に取り組んでいる「正義記憶連帯(旧:挺対協)」などが「なぜ加害国が考えて要請すべきことを韓国の国会が積極的に物乞いするのか。文議長は日本に免罪符を渡そうとしている」と猛烈に反対し、また日本も「この案であっても韓国の国際法違反状態を是正することにはならない」(滝崎成樹アジア太平洋州局長)として拒絶反応を示していた。

 日本企業の金銭拠出が強制的でないことから韓国とのパイプ役の河村建夫・日韓議員連盟幹事長らは一考に値すると韓国国会の動きを注視していたが、韓国国会が今年5月に議員任期満了と共に解散となり、発案者の文議長も政界から引退したこともあって廃案となってしまった。

(参考資料:韓国国会に再提出された「徴用工問題解決案」とその世論調査結果

 4.韓国政府の日本企業資産購入案

 韓国政府が賠償金を立て替え、元徴用工らの賠償権利(債権)を購入することで日本企業の資産現金化を防ぎ、その後については日本側と協議する案である。

 この案もまた、裁判所の判決尊重を前提としていた。韓国政府が「被告人」である日本企業に代わって元徴用工らに代位弁済をすれば、民法上は和解が成立する。刻々と迫っている元徴用工らによる日本企業資産売却を防ぐための応急策だが、請求権が韓国政府に残るため日本企業の責任は消滅されない。

 5.先日本企業の賠償,後韓国政府の補填案

 日本企業が一旦、賠償に応じれば、後に韓国政府が(賠償金)全額を埋める案だが、これもまた、大法院の判決を前提としている。この案を報じた「朝日新聞」(10月31日付)によると、日本企業の支出が補填されたとしても、判決が履行される点には変わりがないので日本政府としては応じられないとのことだ。

 今後「敗訴した以上、判決に従って日本企業が支払いに応じるのが筋」の韓国と「日韓条約で解決済なので日本企業は支払う必要はない」とする日本の主張がどのように折り合いが付くのか定かではないが、日本側の対応次第では落としどころとして4と5の案のミックスも考えられなくもない。しかし、5の案については保守系野党の「国民の力」が反発しているのが気がかりだ。同党の重鎮議員である金基賢議員は「度が過ぎ、耐えられない屈辱的外交惨事である」と辛らつに批判していた。

 韓日議員連盟のメンバーでもある外交統一委員会所属の金議員は自身のホームページで5の案が日本政府によって拒絶されたとの「朝日新聞」の記事を引用し、「GSOMIAを持ち出し、ノー安倍、ノージャパンを叫んでいた連中らはどこに隠れてしまったのか」と、文政権のこれまでのスタンスを槍玉に挙げたうえで「表では大きな声を上げ、国民を欺き、裏では猫をかぶり国民の税金で日本に卑猥な取引をしようとしているならば、いかさま師のレベルである」と扱き下ろした。

 さらに「日本総理の訪韓イベントのため国格を棄損する裏取引は絶対に許せない親日行脚である」と断じ、「反人類的な罪を犯した日本企業に罪を償うようどなりつけることができないまでも賠償の素振りさえみせれば税金でカバーしてあげるならば、李完用(日韓併合条約に調印した首相。韓国では親日派、売国奴の代名詞となっている)でさえ感服する屈辱である」と問題視していた。なお、韓国政府は「朝日新聞」の記事について「事実無根である」として、案そのものの存在を否定している。

(参考資料:日本企業資産「現金化」時の日本の報復措置への韓国の対抗措置「プランB」

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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