文在寅大統領の対日政策に変化なし!「元徴用工」「元慰安婦」問題も新駐日韓国大使に一任か!?
文在寅大統領が昨日(18日)の年頭記者会見で2015年の日韓合意について初めて「公式的な合意である」と認める発言を行った。
また、日本政府に元慰安婦への賠償を命じた先のソウル地裁の判決についても触れ、「正直言って、少し困惑している」と心境を吐露した。さらに、元徴用工裁判で差し押さえられた日本企業の資産現金化については「強制的な現金化は両国の関係において望ましいとは思わない」と、否定的な考えを初めて明らかにした。こうしたことから日韓関係者の間では文政権が「厳しい状況にある」(菅義偉首相)日韓関係を打開するため手を打つのではとの憶測が流れている。
確かに、2015年の日韓合意を両国による「公式的な合意」であると認めたこと自体は文大統領がこれまで「合意は真実と正義の原則に反しており、内容も手続きもすべて誤りである」と批判し、合意見直しを求めていただけに日本にとっては一歩前進と言えなくもない。
しかし「少し困惑している」の発言の真意は日本の主権免除が認められ、原告の請求が棄却却下されるとの期待とは逆の判決が出たことへの困惑ではない。元徴用工問題を抱えている最中に新たな難題が加わり、問題解決が一層難しくなったことへの困惑である。
日本企業の資産現金化についても「強制的な現金化は両国の関係において望ましいとは思わない」との考えを述べ、現金化される前に手を打つべきと初めて大統領としての立場を表明したものの、その解決策については従来通り「両国による協議」と「元慰安婦の同意」が大前提となっている。
「日韓条約」(1965年)と「日韓合意」に基づき「解決済み」との立場に立つ日本政府は元徴用工の問題も、元慰安婦の問題も韓国と協議する筋合いではないとして一貫して韓国政府に適切な対応、即ち日本が納得できるような解決策を求めているため両国の溝は依然として埋まっていない。
総じて、文大統領の発言は①日本の特派員から質問が出たので答えたまでの話で事態を改善するため意図して、積極的に発言したものではない②このままでは日本企業の資産が現金化されかねないので日韓関係に悪影響を及ぼしたくなければ日本も協議に応じて一緒に解決すべきと日本にプレッシャーを掛けたに過ぎない。
文大統領は日韓の歴史懸案については大統領になる前から「被害者の名誉回復と補償、真実究明と再発防止の約束という国際社会の原則がある。韓国政府はこの原則を必ず守る」と強調してきた。
実際に大統領になって初めて行った記者会見(2017年8月17日)でも「慰安婦問題が日韓会談で解決されたというのは正しくない。両国間での合意(日韓請求権協定)が、一人一人の権利を侵害することはできない」と述べ、2019年1月の年頭記者会見でも日本企業に賠償を命じた大法院の判決について「韓国は三権分立の国で判決は尊重せざるを得ない。日本は判決に不満があったとしても『仕方がない』との認識をもつべきだ」と、日本に韓国の判決を受け入れるよう迫っていた。
昨年の年頭記者会見(1月14日)でも「被害者の同意なしに政府間でいくら合意しても問題解決に役立たないことは(2015年の)慰安婦合意の際に切実に経験した」と述べたうえで「韓国政府は数回解決策を示した。立法府も努力した。日本も解決策を示して、韓国と知恵を合わせて一緒に考えるべきだ」と日本の対応を求めていた。この年の8月15日(解放記念日)の演説では「大法院の判決は大韓民国の領土の中では最高の法的権威と執行力を持つ。私たちは一人の個人の尊厳を守ることが国にとって決して損害にはならないとの事実を確認する」として、日本が「国際法に反する」として是正を求めている韓国裁判所の判決を遵守する姿勢を鮮明にしていた。
昨日の文大統領の記者会見での日本関連発言は米韓関係や南北関係に比べ、扱いが小さく、国民の関心も総じて低かった。韓国における日本の比重は下がっており、文大統領にとっては日本との関係改善は必ずしも支持率急落の歯止めとはならない。むしろ、原則を曲げてまでの日本への譲歩は岩盤層の支持離れを誘発する恐れがある。従って、日本がある程度歩み寄らない限り、来年5月までの任期までに何が何でも史上最悪の日韓関係を立て直す考えも、意欲もない。
日本が協議に応じて、日本政府も元慰安婦も納得できる解決策を探ることは容易ではないが、文政権としては何もしないわけにもいかず、今後は前韓日議連会長で知日派の姜昌一新駐日大使の交渉力に期待しているようだ。ある意味では全権を委ねていると言っても過言ではない。
水面下の交渉がまとまればよし、まとまらなければ何もせず、次の政権に委ねることも文大統領は視野に入れているのかもしれない。