東京五輪出場権を獲得した韓国「下部リーガーたちの反乱」とは?
韓国サッカーが東京五輪・男子サッカーの出場権を獲得した。東京五輪のアジア最終予選も兼ねたAFC U-23アジア選手権の準決勝でU-23オーストラリア代表を2-0で下し、3枠あるアジア代表の一角を務めることになった。9大会連続のオリンピック出場だ。
戦前は「死の組」と不安視されるも3戦全勝
大会前は、厳しい戦いになるのではないかと心配されていた。
中国、イラン、ウズベキスタンと同じグループCに属することが決まった昨年9月の組分け抽選会直後は「死の組に入った」と各種メディアで報じられ、決戦前はキム・ハクボム監督が希望したイ・ガンイン(バレンシア)、ペク・スンホ(ダルムシュタット)の招集が不発に終わったことも懸念材料に挙げられていた。
それでも初戦の中国戦ではアディショナルタイムにゴールを決めて1-0。第2戦のイラン戦では2-1。第3戦のウズベキスタン戦でも2-1の勝利を飾って「死の組」グループCを首位で突破した。
準々決勝のヨルダン戦では同点に追いつかれるも後半のアディショナルタイムに決まったFKで勝利をもぎ取り、昨日の準決勝オーストラリア戦では後半に2点を奪って2-0。無敗全勝で東京五輪出場切符を手にしたのだから立派の一言に尽きるだろう。
個人的に驚いたのは出場選手が毎試合異なったことだ。中国戦からイラン戦では8名、イラン戦からウズベギスタン戦では6名、ウズベキスタン戦からヨルダン戦では7名、ヨルダン戦からオーストラリア戦では5名と、先発イレブンを毎試合入れ替えた。
唯一の欧州組として期待されていたチョン・ウヨン(SCフライブルク)の調子が悪いとみると容赦なく控えに回し、常に早めの選手交代で先手を打つなど、今大会を通じてフィールドプレーヤー全員をピッチに送り込んだキム・ハクボム監督の用兵術と采配はさすがだった。
最低観客242人もあったKリーグ2の選手たち
何よりも印象的だったのは、大会を通じて活躍したのがKリーグ2出身だったということだ。
中国戦の決勝ゴールとイラン戦の先制ゴールを決めたイ・ドンジュンは、釜山アイパークで昨季のKリーグ2MVPであるし、イラン戦とヨルダン戦でゴールを決めたチョ・ギュソンはFC安養(アニャン)所属。
ウズベキスタン戦2ゴールのオ・セフンは昨季まで牙山(アサン)ムグンファに属し(今季から尚州尚武)、ヨルダン戦で値千金の決勝FKを決めたイ・ドンギョンさえも2018年は安養に籍を置いていた。
今大会に招集された23名中、Kリーグ2経験者は8名。これに昨季までV・ファーレン長崎に所属したイ・サンミン(蔚山現代)やアビスパ福岡で2年半プレーしたウォン・ドゥジェ(蔚山現代)など日本のJ2経験者も含めると、10名が2部リーグ育ちの選手なのである。
ただ、同じ2部リーグでも日本と韓国では差がある。
日本のJ2は1999年に始まったが、韓国で2部リーグがスタートしたのは2013年(当初はKリーグ・チャレンジという名称だった)。昨季で7シーズン目を終えたが、クラブ数は10チームにしかならない。
観客数も少ない。2019年度のKリーグ1(1部リーグ)も1試合平均観客数が8013人と1万人に届かなかったが、K2はそれよりもさらに低い2794人。1万人を超す試合もあることにはあるが、最低が242人にしかならなかった試合(10月2日の全南ドラゴンズ対水原FC)もあるほどだ。
そんな不人気なKリーグ2を経験した若者たちが、東京五輪の出場チケットを韓国にもたらしたのだから痛快だろう。『スポーツソウル』でも「2部リーガーたちの反乱」だと彼らの成長と活躍を称えている。
いずれにしても今回の予選突破で9大会連続のオリンピック出場を決めた韓国。
最近、ナイキ・コリアと12年・2400億ウォン(約240億円)の大型契約で締結し、今年の春には新ユニホームが発表される予定。デザイン一新された新しいユニホームに袖を通して臨む東京五輪ではどんな戦いぶりを見せるだろうか。
(参考記事:【画像】韓国代表のエムブレムが変わる?海外で流出した新デザインに賛否)
今後はオーバーエイジ枠の人選や前出した欧州組の招集問題などが話題になりそうだが、引き続きその動向を注視していきたい。