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#給付金 岸田総理、首長さん200万人と4万人の子ども差別は嬉しかったですか?#所得制限 #子育て罰

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

年末なのに、日本には、岸田政権の給付金のせいで悲しい思いをしている200万人と4万人の親子がいます。

200万人は給付金の所得制限で排除された世帯主年収960万円の親子です。

4万人は10月1日以降に離婚した世帯の親やDV避難者の親子です。

年末にやはり日本は親子に冷たく厳しい子育て罰の国であることを見せつけられ、教育・こども政策の研究者として悲しくて悔しくてなりません。

1.所得制限は産児制限、超少子化の日本ではタブー

子育てもし、納税・年金・社会保険で貢献するメンバーを排除するチームは維持できない

私は、もともと児童手当への所得制限導入に対し強く反対してきました。

それは、2つの理由があります。

1.超少子化の日本では所得にかかわらず子育てしやすい政策が必須

2.高所得層の子どもたちを差別すれば、国民が分断され日本国の国家統合・社会統合が揺らぐ

1.について、すでに来年秋から世帯主年収1200万円以上の家族は児童手当すら打ち切られ、ゼロ支援になることが菅前政権で決定してしまいました。

自民党は給付金騒動をきっかけに夫婦合算700万円までの中所得層を児童手当・教育の無償化から排除する党内の動きもあります。

こうした所得制限の厳格化は、生まれる子どもがたくさんいる多産国での産児制限のためには有効です。

しかし日本は超少子化の国、21世紀後半の国の衰亡すら懸念される状況にあって、もっともしてはいけないタブーともいえる政策が実現されてしまっているのです。

2.については、高所得層子育て世帯(私自身は年収960万円を高所得層と言わなければならない日本の没落のほうが課題だと思いますが)と言われる人々が、日本というチームを支えるためにもっとも頑張っている人々だということを忘れてはいけないということです。

もともと年少扶養控除が撤廃され、高所得子育て世帯にはなんの優遇策もありません。

累進課税制度のもとで高齢者や低所得者、他人の子のために多額の納税・年金・社会保険料を支払い、自らの子どもも育て、日本国に貢献する。

このような頑張るメンバー(国民)を、差別し排除するチーム(国)に未来はあるのでしょうか?

給付金騒動によってあきらかになったのは、高所得者だから差別していい、金持ちの子どもの給付金はけしからんと騒ぎたて、醜く分断された国民の姿でした。

吉村大阪府知事、橋下徹氏、谷原章介氏、杉村大造氏ら超高所得層が反対なさるのは、年収960万円で子育てし国に貢献しているのに、何の支援も国から受けられない国民の苦しみをわかっていないからでしょう。

子ども若者支援への所得制限による子どもの差別・排除は国家統合、社会統合をゆるがせる大問題です。

子育て世代は、こんな冷たく厳しい国で子どもを産み育てたいと思うでしょうか?

※子ども若者支援制度についての所得制限が問題しかない第三文明2022年2月号においても、詳しく述べています。

2.DV避難者、離婚・別居中の親子も放置される年の瀬

給付金のもうひとつの課題は、一番大変な親子を見捨てたことです。

DV避難者への支給、10/1以降の離婚・別居親への給付金は自治体任せ、連立与党公明党や野党の要請があったにもかかわらず、岸田官邸は改善の通知すら出していません。

さらに困難な親子への支援にいち早く取り組んだ明石市長・泉房穂氏のところには、内閣府(官邸)から脅しのような警告が送られたそうです(泉市長Twitter)。

DV避難者や10/1以降離婚・別居の親子への給付金は、自治体の首長の判断であるため、多くの自治体ではもっとも困難な親子が見捨てられているのです。

この給付金政策に強い影響力を持つ木原官房副長官は、ご自身に近い子どもには大変お優しいようですが、そうでない子ども若者のことはどうでもいいのでしょうか?

だとしたら為政者としての資質に疑問を呈す国民も多いのではないでしょうか。

給付金、年内支給を実現しました!と多くの自治体では自慢げに発信していますが、いちばん困難な親子を切り捨てて、なにがうれしいのでしょう?

私には理解できません。

3.岸田総理、聴く力と丁寧で寛容な政治はどこへ?

児童手当の所得制限強行をすれば「成長と分配」ではなく「衰退と分断」が起きます

こども家庭庁より先に、子ども同士の差別・分断をなくしてください

給付金騒動が示した本当の問題は、児童手当や教育の無償化に所得制限を導入し、中所得子育て世帯まで切り捨てようという自民党の冷たい方針です。

とくに2022年秋からは、世帯主年収1200万円以上の世帯は、児童手当・教育の無償化(高校・大学)から完全に排除されます。

子どもが日本学生支援機構の奨学金を借りたくても、ここにも所得制限があり子ども自身が学びたくても国の奨学金を借りることすらできないのです。

このような政治は岸田総理のおっしゃる「丁寧で寛容な政治」でしょうか?

子どもを差別し分断し、ゼロ支援の子どもたちを置き去りにする政治で、親子は幸せになりますか?少子化は解消しますか?

いまこの国で起きているのは、「成長と分配」ではなく「衰退と分断」ではないでしょうか。

日本国は児童手当の所得制限によってますます親同士、子ども同士を分断し、子育てしづらい国にしようとしています。

2021年の年の瀬にあたって岸田総理に心からお願いします。

高所得子育て層、DV避難者、離婚・別居親、排除された親子の悲しい思いと現実にこそ聴く力を発揮してください。

こども家庭庁より先に、子ども同士の差別と分断をなくしてください。

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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