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愛されるホンダが復活? ジュネーブショーで電気自動車発表

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
写真提供:本田技研工業株式会社

3月5日のジュネーブショーで、電気自動車のプロトタイプを発表

 ホンダという自動車メーカーの持つ他メーカーにはない魅力をして、4年前に「ホンダのカリスマ性は花開くのか?」という記事を書いた。

 この時はホンダS660という軽自動車のミッドシップオープンスポーツカーが登場したことを受けての記事だったが、それと同じように多くの注目を集めそうなホンダのクルマが間もなくお披露目される。昨日2019年2月27日の17時35分に、本田技研工業株式会社はスイスのジュネーブで開催される2019年ジュネーブモーターショーにおいて、新型電気自動車「ホンダ e」のプロトタイプモデルを世界初公開する、というニュースリリースが流れたからである。

 先に紹介した「ホンダのカリスマ性は花開くのか?」という記事にも記したが、ホンダという自動車メーカーはまるでアップルなどと同じように、我々が何を差し置いても注目するような素性をもともと備えたブランドである。そして時に世の注目を一気に集めるクルマを送り出す。4年前のホンダS660の登場時にもまさにそれを感じたが、今回の電気自動車のコンセプトモデル「ホンダ e」に関しても同じように思える。

 今回公開する電気自動車のプロトタイプは、2017年のフランクフルトモーターショーで発表され、同年の東京モーターショーでも公開された「ホンダ・アーバンEVコンセプト」をベースとしながら市販に向けて進化させたモデル。そのコンセプトが放っていた存在感や愛らしさからすると、市販に向けた要件が多く入るため一般化した部分もあるが、それでもなおデザインで多くの人の目を引く要素は備えている。

写真提供:本田技研工業株式会社
写真提供:本田技研工業株式会社

 実際にニュースリリースでも「エクステリアは、Hondaのスモールカーが作り上げてきた走りの楽しさと愛着を感じる親しみやすさをシンプル・クリーンに表現」といった具合で、デザインにおいての特徴を説明している。さらにデザインに関しては、「新たに採用したポップアップ式のドアハンドルや従来のサイドミラーの役割を持つ『サイドカメラミラーシステム』といった先進機能を取り入れることで、シームレスなボディーデザインを際立たせています。インテリアには上質な素材を使用し、ラウンジのような心地良い空間を作り出しています。また、直感的かつマルチタスクの操作が可能な大型ディスプレーを採用し、コネクテッドサービスをはじめとする、さまざまな機能をお使いいただけます」といった具合で、先進性を積極的に取り入れた電気自動車であることもアピールした。

電気自動車シフトする欧州での発表

 3月5日からプレスデーが始まるジュネーブショーにおいて、電気自動車のプロトタイプを発表するというタイミングは実に絶妙だ。なぜなら2019年はこれまで以上に電気自動車に注目が集まる年だからである。事実、欧州で発表する理由は、既に現地の自動車メーカーの多くがEVを発表している”待ったなし”の状況だからでもある。アウディは昨年初の電気自動車「e-tron」を発表し、メルセデス・ベンツも先日量産の電気自動車である「EQC」を発表。また今回のジュネーブではボルボの電動ブランドであるPolestarが初の電気自動車である「Polestar2」を発表するなど、これまで以上に現実的なEVシフトを色濃く感じるショーになるのは間違いない。

 そうした状況を鑑みると、今回の「ホンダ e」がジュネーブショーの主役になる可能性も少なくない。加えて国内においては、最近ホンダに4輪商品分野における注目が少なかったのも事実。業績は好調かもしれないが国内のビジネスに驚くような注目点は感じられず、先日の事業運営体制変更に関する会見が一定の注目を集めたものの、多くの人の注目を集めるトピックには欠けていたのが実際だろう。

 しかしながら、そうした状況が今回「ホンダ e」で少し変わる可能性はある。ジュネーブショーで今後発表されるクルマであるにもかかわらず、昨日の報道の多さはやはり多くの方が気になるメーカーだからこそだといえる。筆者の記すこの記事も含めて、報道的な注目が集まっていることは間違いないし、一般の方もそうした記事に相当数の方が反応しているはずだ。

 ちなみにニュースリリースには「新開発のEV専用プラットフォームは、コンパクトなボディーながらロングホイールベースと短いオーバーハングを実現し、街中での取り回しの良さと優れた走行性能を両立しています。さらに、力強いモーターと後輪駆動による走りの楽しさを実現しながら、EV走行距離は200km以上(WLTPモード)を達成。30分で80%まで充電が可能な急速充電にも対応しています。本モデルをベースとした電気自動車を、2019年後半に生産開始する予定です」と記されている。ユニークなのは先日、日産が62kWhというハイパフォーマンス版のリーフe+を追加したばかりだが、それとは方向性が異なる比較的容量の小さなバッテリーを搭載していること。また後輪駆動を採用しているという点も独自で見逃せない部分。そしてこの車の開発責任者は、ホンダの屋台骨を支える基幹モデルである「フィット」や、軽自動車で圧倒的な販売台数を誇る「N-WGN」などを手がけた人見康平氏という、ホンダのMr.コンパクトカーともいえる方が務めるだけに、日本市場のことも相当に考え抜いているはず。実際に日本では2020年に発売される、と言われている。

愛されるホンダの復活?

 先日、日産リーフに加わった新たなハイパフォーマンスモデルである「e+」をはじめ、今年はジャガーの「i-Pace」やアウディの「e-tron」、そしてメルセデス・ベンツの「EQC」も上陸すると伝えられる。そうした中にあって、国産メーカーの動きはどうなのか? というところに、今回の「ホンダ e」のニュースは飛び込んできた。

 ホンダはかつて「シビック」や「シティ」、そして「フィット」や「N-WGN」など、身近なコンパクトカーで存在感を示してきた。それと同時に、ホンダというブランドに対する多くの人の期待も醸成してきた。そしてそんな文脈からすれば、今回ジュネーブショーで発表されるこの「ホンダ e」と名付けられたモデルは、今後世の中を変えて再び「愛されるホンダ」を復活させるきっかけになるのではないか? というようなことを想像させる。

 ひとつのモデルのお披露目ながらも筆者も含め、多くの人に強い期待を抱かせる力がホンダというブランドにはあるし、そのブランドから送り出されるクルマにもあることは間違いない。

 そう考えると、この1週間のうちに実物が登場し、筆者もジュネーブショーでこのクルマに関する取材ができるのが楽しみでならない。そしてこんな風に興奮できることこそが、ホンダというブランドの持っている強い強い求心力に他ならないと思うのである。

写真提供:本田技研工業株式会社
写真提供:本田技研工業株式会社
自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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