ボランティアにお辞儀した羽生結弦選手に中国人が感激した、日本人が知らない「別の理由」
北京冬季五輪が終わり、日本選手団も帰国したが、北京の空港を去る際も、現地ボランティアに深々とお辞儀をしたフィギュア男子の羽生結弦選手に、中国では賞賛の声が高まっている。
中国メディア「新浪体育」は「羽生結弦選手がボランティアにもお辞儀をした」と報道。
SNSでも「日本の有名なスターなのに、ここまで私たちに丁寧に対応してくれるとは……」と喜びや驚きのコメントが多数投稿され、羽生フィーバーは今も続いている。
羽生選手の神対応は今回だけではなく、いつもやっていることだが、中国では「ボランティアにもお辞儀をしてくれた」ことが、ボランティアたちだけでなく、一般国民の「感激の理由」にもなっている。
それは何なのか。
中国の偉い人の対応は……
日本留学経験のある、ある中国人はこう説明する。
「中国では社会的地位の高い人や富裕層、芸能人などは、いつも偉そうにしていて、清掃員などのスタッフやボランティアに対して『上から目線』なことが多く、何かやってくれても、お辞儀をするということはあまりありません。
従業員や労働者に厳しい態度で接する人も多いのです。
コロナ禍により、ロックダウンの最中などにボランティアをする人が増え、ボランティアにお礼を言う人も増えてきてはいるのですが、基本的に偉い人と、下働きの人という関係は、中国ではあまり変わりません。
家政婦などに対する態度もそうで、自分が雇っている場合はとくに、何かやってもらって当たり前、という態度を取る中国人が多いのです。メンツの問題もあり、自分より下だと思っている人に頭を下げるということはありません。
ですが、羽生選手だけでなく、日本人はそういうことはないですよね。ふだんから、清掃スタッフにもお礼を言ったりすることは多いと思います。
中国のネットで記事を見かけましたが、羽生選手はホテルを出るときにも、ベッドの上をきちんと整えると書いてありました。
そういう細やかな気遣いが、中国人にはまだなかなかできない。それが、中国でも賞賛されている理由だと思います」
羽生選手が中国人に与えた影響
確かに、中国の都市部では労働者などを見下している人が多い。
中国の都市部では、労働者の多くは地方や農村出身で、教育格差、職業差別などもあることが「見下す」原因の一つになっているが、日本ではそういうことはない。
また、偉くなればなるほど、日本では他人に優しく接する、という文化もあるため、日本人の中には、羽生選手のような対応をする人も少なくないが、メンツを重視する中国ではまだ少ないといえる。
羽生選手の対応を見て、五輪のボランティアやスタッフたちが「報われた」「ボランティアをやって本当によかった」と思い、感激した気持ちは、多くの国民も共有しており、「やりがいを感じることにつながる」と評判になっている。
コロナ禍の数年前からだが、海外旅行をするようになった中国人は、日本のレストランや旅館などでのスタッフのサービスやホスピタリティを目の当たりにし、感激した。
そうした影響もあり、中国国内の飲食店などでも、ここ数年、店員の態度は急速によくなっている。
羽生選手のボランティアやスタッフに対する丁寧な対応は、誰かに奉仕する仕事に携わる人々だけでなく、奉仕される側にとっても、「こうありたい」という気持ちにさせるという点で、彼らに与えた影響は大きい。