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ACL、”日韓対決シリーズ”が始まる。川崎F、広島、浦和、鹿島と対戦するKリーグクラブの横顔。

ACL歴代最多ゴール記録(37)を持つイ・ドング(チョンブク)も来日。筆者撮影。

4月9日(火)ー10日(水)そして23日(火)ー24日(水)。

J1リーグも開幕から1ヶ月以上が経ち、徐々にシーズンの輪郭が見え始めるこの時期に、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)2019の”日韓対決シリーズ”が行われる。両国からグループリーグに出場する計8チームがそれぞれホーム&アウエーで対戦するのだ。Jリーグ勢にとって、タフな戦いが続くKリーグ勢との対戦は、序盤のひとつのヤマではないか。

MD(マッチデイ)3とMD4のスケジュールは次の通りだ。

4月9日  

慶南FCー鹿島アントラーズ(グループE)

浦和レッズー全北現代モータース(同G)

4月10日

サンフレッチェ広島ー大邸FC(同F)

蔚山現代ー川崎フロンターレ(同H)

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4月23日

川崎フロンターレー蔚山現代

大邸FCーサンフレッチェ広島

4月24日

全北現代ー浦和レッズ

鹿島アントラーズー慶南

8チームお互いがリーグ戦の日程を挟みながら、ホームとアウエーを行き交う日程だ。

例年のこの大会では、日韓のチームはシーズンの早い時期、2月に対戦することが多かったが、今季は4月のこの時期に行われる。この変更について、Jリーグに問い合わせたところ以下の内容が返ってきた。

「ACLのマッチカードスケジュールはグループ分けのオープンドローの前から、既に決まっています。日程はドローで入ったスロットにより自動的に決まります」(Jリーグ広報部)

アジアのクラブチームが覇を競うこの大会にあって、興行的に魅力があるようにも見える日韓対決。また東アジアー東南アジア間よりも日韓間は移動時間が短いため、開催時期に気が払われていそうなものだが、答えは「日程的な考慮は一切なし」。

また過去に日韓の対決は激闘が”場外・試合後”にまで及ぶこともあったため、「リターンマッチがすぐに行われる」点は危険にも見えるが、この点もAFCとすれば「そのままやりなさい」ということ。ただ、思えば過去の出来事はすべて負ければ終わりというノックアウトステージに起きた。今回の”シリーズ”は、全6試合のグループリーグの3試合、4試合目で行われる。たとえ結果が望むものでなくともまだやり直しは利く、という面はある。

そういったなかでも8日の浦和ー全北戦の前日会見で、全北のチョ・ジュノは「日本にはやはり負けたくないと思う」と口にした。熱戦に期待しよう。

では、Jリーグの各チームと対戦するKリーグ勢の横顔を。クラブのこれまでの実績、戦力という点を考えると、「1+1+2」という構図が分かりやすい。大会常連のソウル、水原三星といったチームが昨年の不振により出場権を逃した。その結果、新興2チームが大会初出場を果たしている。

Kリーグの”1強”。シーズン序盤に苦しむ最大の注目チーム。

浦和レッズと対戦/全北現代モータース:2018年Kリーグチャンピオン/ACL12回目の出場。Kリーグの現順位=3位。

直近5試合の成績

ACL ●ブリーラム・ユナイテッド 0-1

Kリーグ ●江原 0-1

Kリーグ ○浦項 2-0

Kリーグ △慶南 3-3

Kリーグ ○仁川 2-0

現在の「Kリーグ1強」。HYUNDAI自動車が潤沢な資金を注ぎ、GKから最前線まで代表クラスを揃える豪華布陣だ。昨季のメンバーから韓国代表MFイ・ジェソンとDFキム・ミンジェが抜けたが、サガン鳥栖からキム・ミンヒョクを獲得するなどソツのない補強を敢行。194センチのFWキム・シシクなどの攻撃力を活かすサッカーを展開する。

ただ、今季は少し苦しむ姿を見ている。じつに14年も指揮を執ったチェ・ガンヒ前監督が中国に去り、新任のジョゼ・モライス(ポルトガル)が就任。ポルト、レアル・マドリー、チェルシーでジョゼ・モウリーニョ監督をコーチとして補佐した存在だが、アジアでの第一歩は苦しんでいる。

4-2-3-1、4-4-2、時には3バックを採用しつつポゼッションサッカーを志向するが、リーグ戦開幕でいきなりドロースタートを切るなど、思い通りに行っていない。14年間やってきたサッカーは、サイドから果敢に前線の大型選手に長いボールを入れるスタイルだったためだ。

ACLの前節、ブリーラム・ユナイテッド戦(アウェー)。AFC公式サイトより。

今季はACLとリーグ戦のターンオーバー制を組むが、ここでも歪みが出ている。3月13日にACLアウェーでブリーラム・ユナイテッドに敗戦。その後リーグ戦で江原に敗戦、さらに4月2日の慶南戦では、3-0とリードしながら残り10分で3失点する失態を演じ、ドロー。直近のKリーグではサブ選手を大量に起用し、リーグ戦最下位のインチョンに2-0と勝利。選手を10日近く休ませ、浦和戦に焦点を合わせてきた。

ちなみに直前のリーグ戦日程は、Jリーグ勢としては見るべきところがある。4月に8試合を戦うチームに対し、Kリーグ側の配慮が見えるからだ。4月6日にアウエー仁川戦が組まれたおかげで、ソウル首都圏から一度約200キロ離れた全州に戻らず、そのまま仁川国際空港から出国できる日程が組めた。筆者が2017年にKリーグ関係者に取材した際、「ACL出場チームのために日程面の工夫をしている」という話を聞いたことがある。

伝統を有する強豪。日本との縁にも注目

川崎フロンターレと対戦/蔚山現代:2018年Kリーグ3位/プレーオフ勝ち抜き/ACL7回目の出場。Kリーグでの現順位=首位。

直近5試合の成績

ACL ○上海上港 1-0

Kリーグ △大邸 1-1

Kリーグ ○済州 2-1

Kリーグ ○ソウル 2-1

Kリーグ ○尚州 1-0

全北が「1強」なら、蔚山は「その下のトップグループ」という位置づけだ。HYUNDAI重工業が工場のある蔚山にチームを設立し、伝統的に力のあるチームを作っている。2000年中盤~2010年代前半までは、ソウル、水原三星、城南(当時の城南一和)とともに、Kリーグの「四大龍」と呼ばれた。

川崎フロンターレとは昨年に続いての対戦。かつてJリーグ神戸でも活躍したキム・ドフン監督率いるここで紹介せずとも、おおよそのイメージはあるか。今季は特に柏レイソルからレンタルで新加入のMFキム・ボギョンがキレキレ。YouTube上で彼のスキル集が出回るほどの好調ぶりだ。チームもここ5戦で4勝1分けと無敗。リーグ戦でも首位に立っており、現時点の勢いでは全北をも上回る。

直近のACLでのゲーム。上海上港とのアウェーゲーム

ここではこのクラブと、日本との縁についての話を。2012年以降、日本人選手を積極的に迎え入れてきた。

家長昭博 2012

増田誓志 2013-2016

阿部拓馬 2017

豊田陽平 2018

エスクデロ競飛王 2018

発端は2009年から13年まで指揮を執った、キム・ホゴン監督からだ。2012年にキム監督の下この大会を制したチームは、194センチFWキム・シヌクにロングボールを当て、その間に一気に後方から選手が攻め上がる「鉄槌サッカー」というスタイルを確立した。しかし指揮官のキムは「本当はポゼッションをやりたい。やりたいサッカーと勝てるサッカーは別」と考えていた。なんとか中盤でゲームを作れる存在を加えたい。それが「日本人選手」だと。キム自身、延世大学時代に培った、慶応大学との交流の縁を大切にしてきたという面もある。

2012年、このクラブには家長昭博が2月から7月まで在籍した。スペインのマジョルカからのレンタル移籍だった。しかし家長はフィットせず、ガンバ大阪に再度レンタル移籍した。結果、蔚山はポゼッションを諦め、ロングパスベースのサッカーに転ずる。そしてこの年にアジアの頂点を極めた。クラブ最大の栄冠の”引き金”が家長だとしたら、後に彼がJリーグ最優秀選手となり、再び蔚山と対決するというのは大きな縁ではないか。

新進クラブ。スタジアムに注目を

サンフレッチェ広島と対戦/大邸FC:2018年 大韓サッカー協会 FAカップ優勝/ACL初出場。Kリーグでの現順位=5位。

直近5試合の成績

Kリーグ ○広州恒大 3-1

Kリーグ △蔚山1-1

Kリーグ ●慶南1-2

Kリーグ ○仁川3-0

Kリーグ △城南1-1

2017年よりKリーグ1部に復帰し、復帰2年めの昨年にカップ戦王者となった。

現在のKリーグで”旬なチーム”。2018年W杯で活躍、先日の国際Aマッチデーでもビッグセーブを連発したGKチョ・ヒョヌのほか、FWキム・ジニョクが得点ランキング1位、FWセジーニャがアシストランキング1位。さらに新スタジアムの話題でもポジティブなイメージを持たれている。

老朽化した市内の陸上競技場をリモデリング。「大邸フォレストスタジアム(リーグ戦時には「大邸銀行DBCスタジアム」)として今季のリーグ戦から使用している。この動きに大きく寄与したのが、クラブのチョ・グァンレ代表。かつて2012年に韓国代表監督を更迭された過去を払拭し、地域に新たな活力をもたらそうとしている。「スタジアムの良さなしでは、Kリーグは興行として成り立たない」と言い切る。小さなクラブだからこそ、インフラを。そういう考え方だ。

クラブ公式チャンネルより

経営母体を持たない市民クラブがどう躍進を遂げていくのか。戦力面もさることながら、この点にも注目を。Jリーグからもこの先、スモールクラブが本大会出場権を得ることがあるだろうか。

話題多き新進クラブ。果たしてシーズンの行方は。

鹿島アントラーズと対戦/慶南FC:2018年Kリーグ 2位/ACL初出場。。リーグ戦での現順位=6位

ACL △ジョホール(マレーシア)1-1

Kリーグ ●浦項1-4

Kリーグ ○大邸2-1

Kリーグ △全北3-3

Kリーグ ●ソウル1-2

監督はオールドファンには懐かしい、金鐘夫(キム・ジョンブ)。ストライカーとして83年のメキシコワールドユースでベスト4入り。その後86年メキシコワールドカップにも出場した。

こちらも大邸と同じく市民クラブ。2017年まで2部リーグに在籍しながら、昨年の躍進により出場権を獲得した。今季は選手を大量に獲得し、ターンオーバー制に取り組んでいる。負傷者が続出したシーズン序盤は苦しい戦いが続いているが、いっぽうで国内でこの点が注目されている。

「すべてのゴールを後半に決めるチーム」。

直近のFCソウル戦では2点をリードされながら終盤にキム・ジョンピル(元徳島ヴォルティス)がヘディングで1ゴールを挽回。さらにゲームのラストプレーでも決定機を掴むなど、大きな話題を呼んだ。

ソウル戦でのキム・ジョンピルのゴール

一方でクラブに暗い影を落とすのが”政治問題”だ。保守野党韓国自由党代表で、次期大統領候補とみなされるファン・ギョアン氏がスタジアム内で地元候補応援のために遊説。Kリーグの規約に明らかに反する行為にも、本人は謝罪をしない事態となっている。クラブ側は「法的責任を問う」としているが、火種は燻ったままだ。

KBSニュースより

慶南のシーズン全体の有り様はJリーグにとっても注目ポイントでもある。Jリーグでは”地盤が整いきれないクラブがACL、リーグと2つを終えば、結果的に降格しかねない”という点が経験値として認識されているが。2013年から1部・2部の入れ替えが実施されているKリーグの地で、はたしてどう転ぶか。

(了)

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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