即興プレーが「味」を生む? 山沢拓也は「サンウルブズを楽しむ」。【ラグビー旬な一問一答】
6月12日、静岡のエコパスタジアムで日本代表の強化試合がある。
相手はサンウルブズ。国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦したプロクラブで、今回は代表予備軍や6月8日までの日本代表・大分合宿に参加していたメンバーによりチームが編成される。
サンウルブズの登録メンバーの1人には、長らく「ファンタジスタ」と謳われてきた山沢拓也もいる。
パナソニック所属の山沢は、深谷高校3年時から日本代表候補に選ばれたスタンドオフだ。優れたボディバランスを活かした走りに鋭いパス、キックを持ち味とし、2019年にもワールドカップ日本大会に挑む日本代表の選考レースに参加していた。
一線級のアスリートの群れにあって、とりわけ努力家とも謳われている。
6月9日の練習後、オンラインでの取材に応じた。
以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
——きょうの練習時は、長くグラウンドに残ってゴールキックを蹴っていた。
「ゴールキックをするうえで、どのポイントが重要かというのをここ何週間か探しているところで。そのポイントを見つけられているわけではないですが、少しずつ手ごたえを感じている。1回、1回、蹴って、『あそこはこうだったな』と修正点、改善策を見つけていけば、いいゴールキックになると思います」
——サンウルブズに選考された。
「メンバーにも若い選手が多かったり、代表からも合流してくる選手がいたりイレギュラーな感じで、準備期間も1週間しかない。ただサンウルブズがスーパーラグビーでやっていた時も、準備期間が短いなかでチームとして仲を深め、サンウルブズの試合を体現しようとしていた。その点、(今回も)いままでのサンウルブズとそんなに違いはないのかなと思います。
細かいところを詰め切れない部分も味になる。個々の強みを活かすプレーができれば面白くなるんじゃないかと思います」
チームプレーを整備する時間が限られている分、相手も的を絞りづらい即興的な動きを披露できるかもしれない。その可能性を、山沢は「味」と表現したようだ。
——本来、日本代表側にいたかったのでは。
「自分のなかでは割り切っていて、サンウルブズとして試合を楽しむということだけにフォーカスしている。自分のなかでは複雑な気持ちというのはないですね。(日本代表にいる)パナソニックのメンバーとは(敵同士で)やる機会がなく、正直(敵に回すと)嫌だなという選手の方が多いですが、やるのが楽しみというのもあります」
——今季はパナソニックでも、先発スタンドオフの座を同級生の松田力也選手に譲ることが多かった。そんななかでも成長した点は。
「スタートで出る10番(スタンドオフ)と途中で出るパターンとではなかなか役割が違う。今季のトップリーグではゲームの組み立てを力也がやってくれて、相手が疲労した残り20分で自分が試合に出て自分がテンポを上げたり、空いているところをひたすら攻めたりした。(明確な)役割があったので、そこを思い切ってできたのが一番よかったことではないかなと思っています」
——試合によっては、最後尾のフルバックや端側のウイングにも入った。
「フルバックに入った時は10番の時に比べ、チームを動かすことよりも——そのチャンスで自分がどうアタックするかなど——自分にフォーカスできた。フルバックなどで出た時は、自分の思い通りというか、やりたいようにできた気持ちがあった。10番とは全然違う視点、役割があった。難しい面もたくさんありましたけど、思い切ってアタックできるのは楽しいと思いました」
——今後の希望ポジションは。
「基本的には10番をやりたいです。そこにこだわりすぎているわけではないですけど、10番を高めていきたいです」
——サンウルブズのジャージィを着る意味。価値について。
「自分が2019年にサンウルブズに合流した時もパッと行って合流してすぐに遠征、試合と、準備する期間がなかったのですが、ほとんど初めて会うようなチームメイトたちにたくさんサポートしてくれて、そのおかげでチームにも早くなじめたし、楽しく過ごすことができた。今回もその文化は残っている。初めて会うメンバーも多くいますが、早めに皆で色々と話せて、チームの仲も深まっている。いい歴史が引き継がれているサンウルブズでプレーできるのは、誇らしいことだと思います」
この試合でのアピール次第では、秋以降に代表入りするチャンスもある。ただし当の本人は「いまのところは、そういうことは捉えていない」と強調。「サンウルブズでプレーを楽しみたいというだけでこの1週間を過ごしていきたい」と続ける。逆境に立ち向かってきたクラブの一員として、日本で一番強い集団へ挑む。