Yahoo!ニュース

マイナーリーグ契約で引き留めようとした球団を去り、ライバル球団からメジャーリーグ契約を得る

宇根夏樹ベースボール・ライター
シェルビー・ミラー(手前左)Oct 1, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 サンフランシスコ・ジャイアンツからFAになったシェルビー・ミラーは、ロサンゼルス・ドジャースに入団するらしい。ジ・アスレティックのケン・ローゼンタールが最初に報じ、続いて、ESPNのカイリー・マクダニエルが1年150万ドルの契約に出来高がつくと伝えている。サンフランシスコ・クロニクルのスーザン・スラッサーによると、ジャイアンツはミラーを引き留めようとしたが、申し出たのはマイナーリーグ契約だったという。

 今から約10年前、ミラーは、トップ・クラスのプロスペクトと目されてきた。2013~15年は、3シーズン続けて規定投球回に達し、いずれも3点台の防御率、3.06、3.74、3.02を記録した。だが、その後は故障もあって低迷。2020年は全休を選択し、ここ2シーズンはリリーバーとして登板している。メジャーリーグで投げたのは、2シーズンで計19.2イニングに過ぎず、自責点は18、防御率は8.24だ。今年10月には、32歳の誕生日を迎えた。

 ジャイアンツの提示がマイナーリーグ契約だったのも、わからなくはない。だが、ドジャースにとって、ミラーとのメジャーリーグ契約は、ディスカウント価格になる可能性を秘めている。

 今シーズン、ミラーは、メジャーリーグの4登板で7.0イニングを投げ、防御率は6.43ながら、14三振を奪った。これだけではあまりにサンプル数が少なすぎるが、AAAでも奪った三振は多く、53.1イニングで奪三振率11.64を記録している。こちらの防御率は2.87だ。

 先発マウンドに上がっていた当時、ミラーは、4シーム、カッター、シンカー、カーブ、チェンジアップを投げていた。現在は、4シームとスライダーのほぼ2球種だ。年齢もキャリアもすでにベテランの域ながら、スライダーに関しては、まだ2シーズンしか投げていない。この球種にさらなる磨きがかかれば、リリーバーとして成功を収めてもおかしくない。

 ジャイアンツとドジャースは、同じナ・リーグ西地区にいるだけでなく、ニューヨークに本拠を構えていた頃からのライバルだ。ジャイアンツは、ミラーにメジャーリーグ契約を申し出ておけばよかった、と後悔することになるかもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事