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降雪日に史上最速のさくら開花の理由

饒村曜気象予報士
東京でさくらが開花した日の地上天気図と衛星画像(3月14日15時)

東京でさくら開花

 気象庁では、令和2年(2020年)13時59分、東京でさくら(ソメイヨシノ)が開花したと発表しました(写真)。

写真 靖国神社のさくら(3月14日12時頃、山谷亨氏撮影)
写真 靖国神社のさくら(3月14日12時頃、山谷亨氏撮影)

 平年より12日早く、昨年より7日早い開花です。

 沖縄・奄美のさくら(ヒカンサクラ)を除くと、東京が全国トップとなりました。

 ウェザーマップの片山由紀子気象予報士によると、全国(沖縄・奄美を除く)で最初にさくらが開花した地点(現在も観測が行われている地点)は、統計がある昭和28年(1953年)以降の67年間では、高知の18回が最多です。

 次いで、熊本の8回、鹿児島、福岡の7回などとなっており、東京は5回と6位タイです。

 令和2年(2020年)のさくらの開花で、東京が6回となり、長崎と並んで5位タイになります。

 これは、1月下旬以降の高温の影響が非常に大きかかったため、平年より大幅に早い開花となったとみられていますが、東京のトップは、近年になってから増えています。

 都市化の影響が考えられていますので、東京が徐々にランクアップすると考えられています。

 なお、東京のさくら開花の最早記録は3月16日ですので、これより2日早い開花でした。

 暗いニュースが多い中、さくらの開花は明るい話題として、多くのマスメディアで伝えられました。

 また、(株)タカラトミー「リカちゃん」の公式SNSなど、多くのSNSでも東京でのさくら開花がとりあげられました。

雨に雪が混じる寒さの中でのさくらの開花発表

 東京のさくら開花日とは、靖国神社にある標本木(観察する対象の木)で5~6輪以上の花が開いた状態となった最初の日のことです。

 気象庁の観測員が靖国神社にでかけ、東京のさくらの開花を発表し時は、雨に雪が混じり、気温が3度以下の寒い日でした。

 この寒い中でさくらが開花したわけではありません。

 さくらの開花は、観測員が常時さくらを観測しているわけではなく、おおむね平日は10時頃と14時頃、土日や休日は14時頃に観測を行っています。

 3月13日の金曜日の14時頃の観測では標本木に2輪(咲きかけのものを含めても3輪)でしたので、13日の開花発表はありませんでした。

 しかし、13日の14時以降も花芽が成長するといわれる15度以上の気温が続いており、13日中にあと数輪は咲いたと思われます。

 ただ、観測員の確認は14日14時頃であり、この頃は南岸低気圧の通過によって気温が急降下していました(タイトル画像参照)。

 つまり、寒いときにさくらが咲いたのではなく、前日のさくらの観測後の高温で開花が進み、その後の気温急降下時の観測で確認されたのです(図1)。

図1 東京の気温変化(3月13~15日)
図1 東京の気温変化(3月13~15日)

九州より東北が先に咲く?

 上空に強い寒気が南下してますので、全国的に寒い週明けになりそうです。

 しかし、週の後半からは最高気温が15度を超える地域が多くなり、植物の活動が活発になってきます(図2)。

図2 各地の週間天気予報(3月15日5時に気象庁発表)
図2 各地の週間天気予報(3月15日5時に気象庁発表)

 東京に続き、各地からさくら開花のたよりが届くと思います。

 ウェザーマップのさくら開花予報によると、仙台と福島の開花が3月24日と、鹿児島の3月27日より早くなっています。

 さくらは、一定の寒さに晒されると、その後の暖かさでも開花を急ぐ性質があります。

 これを、休眠打破と言うのですが、西日本を中心とした記録的な暖冬により、西日本では休眠打破が起きていない可能性があります。

 令和2年(2020年)の西日本のさくらが冬を感じていないことにより、九州より東北が先に咲くという珍しい現象がおきるかもしれません。

==東京の満開は約1週間後==

 さくら満開日とは、標本木で80%以上のつぼみが開いた状態となった最初の日のことをいいます。

 東京では、この状態になるのが約1週間後の3月22日の日曜日頃と予想され、見頃は3月20日から28日頃となっています(図3)。

図3 東京のさくらの見頃予報
図3 東京のさくらの見頃予報

 これは、週の始めは気温が低いものの、週の後半以降は、来週も含めて気温が高い日が続くからです(図4)。

図4 東京の3月の気温(3月15日の最高気温~21日は気象庁、22日~31日は予報)と3月22日以降の天気予報
図4 東京の3月の気温(3月15日の最高気温~21日は気象庁、22日~31日は予報)と3月22日以降の天気予報

 晴れの日も多く、最低気温も極端に下がらないという、例年であれば、お花見に適した天気予報です。

 今年は、これからも楽しい花見を続けることができるように、各自が注意しながらの花見となります。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図2の出典:ウェザーマップ資料に著者加筆。

図3の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:気象庁資料とウェザーマップ資料をもとに著者作成。

写真の出典:ウェザーマップ・山谷亨氏提供

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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