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ジャズ界随一の伊達男とはチェット・ベイカーのことらしい

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

ラグス マックレガー 2013年春夏コレクション - 50年代のジャズスタイルを現代に | ニュース - ファッションプレス

ラグス マックレガー 2013年春夏コレクション - 50年代のジャズスタイルを
ラグス マックレガー 2013年春夏コレクション - 50年代のジャズスタイルを

年末にネット記事を整理してみると、こんな記事をチェックしていたのを忘れていました。

ファッション関係のサイトの記事。アメリカの老舗ファッションブランド「マックレガー(McGREGOR)」の「ラグス」というレーベルが発表した2013年春夏コレクションのコンセプトがジャズに関係しているというものです。

若き頃のチェット・ベイカーの姿を収めた写真集『Young Chet』からインスパイアされた、50年代のモダンジャズマンのスタイルがテーマ。1954年にレコーディングされた『Chet Baker Sings』の中の1曲『That Old Feeling』をモチーフに、ウエストコースト・ジャズのプレイヤーたちが愛した50年代ファッションがイメージソースとなっている。(引用:ラグス マックレガー 2013年春夏コレクション- 50年代のジャズスタイルを現代に | ニュース- ファッションプレス)

出典:ラグス マックレガー 2013年春夏コレクション - 50年代のジャズスタイルを現代に | ニュース - ファッションプレス

1950年代の黄金期、ジャズは“文化の基点”として、芸術全般に関する流行の発信源としても重要な役割を担っていました。

なかでもカリスマ的な影響力を発揮したのが、この記事に出てくるチェット・ベイカー。いまでこそ、その繊細なトランペット演奏や、ボサノヴァのルーツにもなったといわれる囁くような歌唱法など、音楽的に評価されることが多いのですが、当時は音楽以上に容姿や身のこなし、その装いなどへの言及が多く見られたようです。

しかし、没後25年経っても流行のアイコンとして復活するくらいですから、その魅力たるや次元を超えた“本物”であると断言できるでしょう。

せっかくですから、それほどカッコイイと言われたチェット・ベイカーが、どんなジャズを表現していたのかも、ぜひ知っておいてください。

♪Chet Baker- Time After Time

歌ってトランペットも吹くというスタイルは、ジャズのオリジネイターであるルイ・アームストロングも取り入れていたエンタテインメントなアプローチですが、チェット・ベイカーはルイ・アームストロングとはまったく逆の、スマートでソフトなイメージをジャズに持ち込むことに成功しました。それにしても、彼が「君にこの曲を捧げるよ」とかなんとか言って演奏し始めたら、そりゃあ、女性はまいってしまうでしょうね……。

♪"My Funny Valentine" with Stan Getz and Chet Baker

彼の代表的なパフォーマンスとして知られる「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」を、話題になった1950年代のものではなく、1983年のライヴで見てみましょう。この当時で54歳(5年後にはホテルの窓から転落というショッキングな事故で亡くなってしまうのですが)、年齢を重ねて渋くなった分だけますますモテ度がアップしているんじゃないでしょうか。

それにしても、ジャズというと装飾音の多さや速いパッセージなど一部のテクニックにばかり目が向きがちになりますが、彼の演奏を聴いているとメロディをストレートに奏でることがどれだけ大切なのかを改めて教えられる気がします。

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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