なぜか「残業愛」が強すぎる人たち ~そんなに残業やりたければ「フリーランス」になればいい!
1988年から約3年間放映された『やっぱり猫が好き』というコメディドラマがあります。このタイトルと同じような感覚で『やっぱり残業が好き』という会社員は、潜在的に多いと言えるでしょう。「猫が好き」とは人前で堂々と言えるでしょうが、「残業が好き」とは言えない時代になってきましたが、実際にはいるのです。
「ウォント」でなくて「マスト」。残業がやりたいわけではなく、残業をしなければならないので、仕方がなくやっているだけだと口では言っていますが、でも心の中で「やっぱり残業が好き!」と思っている輩はたくさんいます。
現場に入って組織改革のコンサルティングをしていると、定時後になると途端に生き生きしてくる連中を見ます。「定時を過ぎた。10分でも20分でも早く仕事を終わらせて帰りたい」と焦って仕事をするのが普通の感覚のはず。なのに、
「6時を過ぎたので、さて、そろそろエンジンかけますか。その前にコンビニ行って夜食でも買ってくるかな」
という感じ。これからお楽しみの残業がはじまる。昨日はドーナッツとコーヒーだったから、今日は肉まんとお茶にしようかな、などと思っているのか、「それじゃちょっとコンビニ行ってきます」だなんてほくそ笑んでいる姿を見ると、そんなに残業が楽しいかと突っ込みたくなります。
夜遅くまでオフィスに残って時間外労働するのがイヤでイヤでしょうがない、という人もいれば、「なんか夜遅くまで仕事してるのっていいよね。人がまばらになった深夜のオフィスにひとりでいると、頑張ってる自分に出会えた気がしてこれまた格別」と”残業愛”が強すぎる人もいます。こういう人は残業代が出ようが出まいが関係ありません。いろいろな理由をつけて残業をしたがるのです。
「残業愛」が強い人は、生活を犠牲にする仕事中毒(ワーカホリック)とは違います。単に夜の残業が好きなのです。
「どうしても1日12時間働きたいのなら、朝の4時から夕方の6時まで働きたまえ。朝と昼に1時間ずつ休憩をとれば合計12時間になる」
と言われてもイヤでしょう。何がイヤかというと、夕方の6時にオフィスを出るのがイヤなのです。「深夜残業するぐらいなら早朝出てこい」と言われるより、
「昼の1時に出勤して、夜の11時まで仕事しなさい」
と言われたほうがしっくりくる。とにかく夜遅くまでオフィスにいたい、あの「人がまばらになったオフィスで私働いてます!」という感覚に浸りたいのです。
こういった「残業愛」に燃えている人が上司だったら、部下たちは最悪です。「暗黙の定時」が夜の10時とか11時とかになり、その時間に退社する習慣が部下につくまで仕事量を調節するだろうからです。「よほど用事がない限り、私より早く帰るな」的なスタンスで部下に接してくるから、昨今よく言われるブラック上司のようです。
「残業愛」が強い人、とにかく夜に残業したい人はいったん会社を辞めてフリーランスになりましょう。会社との雇用契約がなくなれば、自由な時間帯に働くことができます。「いくらフリーになったとはいえ、組織の風土が悪くなっては困るので残業はほどほどに」と総務部から指摘されるかもしれませんが、法的な束縛からは逃れられます。
「そうは言われても、やるべきことが残ってますので」
と言い返すこともできます。もちろんご自身に実力があり、その会社に付加価値を提供できなければ、いつ仕事を打ち切られるかわかりません。しかし、巷で言われている「働き方改革」とは、本来こういうものではないでしょうか。自由を手に入れたいのであれば、それなりの責務が課せられます。
時代の流れとともに働き方が変わって当然。しかし会社として、組織として守るべき「あり方」はあるのです。そこにギャップが生じるのであれば、自ら自由(フリー)な道を選択すればいい。
昔はなかった「喫煙ルーム」が当たり前のようにオフィスにできているように、「残業愛好家の方々は残業ルーム」、という時代になるのかもしれません。また、フリーランスになって雇用のあり方を見直そう、と言われるようになるのかもしれません。いずれにしても、「残業がお楽しみ」と考えている人がマイノリティになっていくのは確実と思います。