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約20キロの減量に成功! 人生をエンタメにした歌姫・華原朋美の魅力とは?

ラリー遠田作家・お笑い評論家

『アウト×デラックス』ではふくよかな体をさらけ出してダイエット企画に挑戦し、『お笑いの日2021』ではおいでやすこがとのコラボ漫才を演じて、『爆笑!ターンテーブル』では過去の恋愛エピソードを歌ネタにして披露した。2021年に最も身を削っていたバラエティタレント、それが華原朋美である。

バラエティ番組に出るタレントは、どれだけ身を削れるかのチキンレースをやっているようなところがある。時代の寵児だったカリスマ音楽プロデューサーとの大恋愛と大失恋を経て、その後も浮き沈みの激しい芸能生活を送り、何かと世間を騒がせてきた華原は、削れる身の分厚さが尋常ではない上に、それをあっけらかんとやってのけるサービス精神にあふれている。

危なっかしくて目が離せない90年代の「朋ちゃん」

小室哲哉が手がける音楽がヒットチャートを席巻していた90年代中盤に、華原朋美は彼にその才能を見出され、歌手として鮮烈なデビューを飾った。「I BELIEVE」「I'm proud」などのヒット曲を連発して、CMにも多数出演して、若い女性の憧れの存在になった。私生活では小室と恋愛関係にあり、浮世離れしたゴージャスな暮らしをしているとも噂されていた。

当時、若者だった世代の人間は、今でも華原のことを「朋ちゃん」と呼ぶ。その呼称に込められた特別な思いを、同世代ではない人に理解してもらうのは難しいかもしれない。恐るべき純粋さと明るさと危なっかしさをはらんでいるからこそ、彼女は「朋ちゃん」と呼ばれるのだ。

90年代当時の華原は圧倒的な存在感があったし、特に同性からの人気は高かった。でも、ほとんどの人は、手放しで絶賛してるというよりは、その危なっかしさも含めて目が離せない、という感覚を持っていたように思う。

その後、華原は小室と破局して、苦難の道を歩むことになった。歌手やタレントとして断続的に活動を行っていたが、心身の不調や私生活のトラブルで活動が途絶えることもあった。

壮絶な過去を笑い飛ばす復活劇

でも、そんな朋ちゃんがようやく帰ってきた。2021年4月に『アウト×デラックス』に出演。登場するなり「金がすべてっすよ」と言い切り、視聴者の度肝を抜いた。すっかりぽっちゃり体型になっていた彼女は「1歳の子供のためにフェラーリを買った」といった桁外れの散財エピソードを披露して、貫禄を見せつけた。

その後は、前述の通り、数々のバラエティ番組に出演した。壮絶な過去を背負いながらも、タブーなしで何でもネタにして明るく話す彼女は、良くも悪くもあの頃のままの「朋ちゃん」だった。

8月17日には、オンライン会見にて彼女のマネジメントを手がける男性との結婚を発表した。ここで普通なら「めでたしめでたし」となるところだが、彼女の場合はそうは問屋が卸さない。

会見では「もし旦那さんが浮気したら?」と質問されて「私の方が浮気するんじゃないかな」と結婚会見にあるまじき回答をしていたし、なぜか安室奈美恵の結婚発表のときとほぼ同じ服装をしていた。波風は立たせるもの、物議は醸すもの。そんな朋ちゃんらしい前代未聞の珍会見だった。

勝俣州和のYouTubeチャンネルの動画では、夫にカレーを食べさせたところ、夫の全身に蕁麻疹が出たというエピソードを語っていた。料理のときにまな板と包丁を洗う習慣がなく、ずっと同じ状態のものを使い回しているのが原因かもしれないと指摘されていた。世界よ、これが朋ちゃんだ。

今年に入ってからは約20キロの減量に成功したことでも話題になった。ダイエットにも前向きに取り組み、心身ともに好調であることがうかがえる。

上質なエンターテインメントはかすかな苦味を残すものだ。人生をエンタメにした日本一ほっとけない女、朋ちゃんは、危険だけど面白い。回り続けるコマのように、これからも不安定という安定を保っていてほしい。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行う。主な著書に『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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