ノート(45) 供述調書も量産体制に突入 その作成順序とは
~解脱編(17)
勾留16日目(続)
明渡し猶予
この日の中村孝検事の取調べは、最高検の圓山慶二検事との面会を終えた後、午後5時半ころから午後10時ころまでの間、4時間半ほどにわたって行われた。
まず冒頭で、中村検事が「忘れないうちに」と言い、官舎の件を切り出した。圓山検事との面会の際、中村検事を通じて結果を伝えるという話になっていたからだ。
中村検事によると、官舎の明渡し猶予制度は懲戒免職者にも適用されるが、財務局に上申書を提出して申請し、その審査を経る必要がある、とのことだった。
検事が入居する官舎には、法務省が所管する「省庁別宿舎」と呼ばれるものと、財務省の各財務局が所管する「合同宿舎」と呼ばれるものがあった。前者は、例えば刑務所や拘置所に併設されている刑務官用の小規模な官舎が挙げられ、検事にも一部が割り当てられていた。
ただ、ほとんどの場合、他官庁の国家公務員とともに財務局の大規模な合同宿舎に入居していた。この時の僕の官舎も、近畿財務局が所管する5階建てのものだった。
中村検事の話を聞き、財務局との交渉次第で家族が直ちに官舎を追い出されなくて済むと分かり、一安心した。
もちろん、こうした被疑者の様々な心配ごとに気を回し、彼らが知りたい正確な情報を弁護人よりも先に調べて伝え、安心させてやることも、被疑者から信頼を得るための取調べ官のテクニックにほかならない。
資料を添付する狙い
その後、この日は2通の供述調書にサインをした。
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