前年比で1915円増加の4万557円…2023年のサラリーマンこづかい事情
日本の就労者の就業職種のうち少なからぬ割合を占めるサラリーマンにおける生活様式は、それらの人々自身はもちろん、日本の社会全体の状況を推し量る一つの指標となる。SBI新生銀行では毎年1回、このサラリーマン(など)の日常生活に関する調査「サラリーマンのお小遣い調査」(※)を行い、その結果を報告書として発表している。今回はその最新版にあたる、2023年6月に発表した「2023年サラリーマンのお小遣い調査」の結果などを基に、直近、そして近年におけるサラリーマンのこづかい事情を確認する。
直近分も含むここ数年における、回答者年齢階層別のサラリーマンのこづかいの実情は次の通り。
全体としては前年から転じて増加の動きを見せ、前年比プラス1915円の4万557円。報告書では「2020年から2022年まで微減している状況が続いていましたが、2022年から2023年にかけては増加して推移しております。(2010年以降では)最も高い2010年(41910円)に次ぐ金額となっております」と説明している。後ほど示す中長期的なグラフからも分かる通り、調査の限りでは2011年以降はほぼ横ばいを維持しており、2023年の前年比での増加も、誤差領域の動きとの解釈ができる。
金額そのものは20代がもっとも大きく4万6453円、次いで40代の4万801円、50代が3万7911円、そして30代の3万7178円と続いている。
前年比は次の通り。
20代は前年に前年比8789円の減少と大幅な減少を示していたため、その反動があったのだろう。
数年来続いていた傾向だが、20代から50代のサラリーマンでは、給与が一番少ないはずの20代ではなく、30代か40代の中年層が一番、こづかいの額面では小さな値を示していた。子供がいる世帯が多く、家計内でのやりくり事情の影響だろう。2023年では30代のこづかいが前年比で大きく減少したことで、一番小さい結果となってしまっている。
既婚と未婚で区分すると未婚者の方が平均こづかい額は高い。グラフ化は略するが、未婚者全体では4万7484円、既婚で子供無し・共働きでは4万437円、既婚で子供あり・専業主婦では2万9260円にまで額が減る。同時に付き合いも増え半ば強制的な出費もかさむこの年齢階層には、お財布事情が厳しい時代のようである。
余談ではあるが、公開されているデータを基に、毎年のサラリーマンのこづかい状況の推移と、日経平均株価(年末の終値、2023年は7月24日終値)をかぶせると次のようなグラフが完成する。
グラフの形状、さらには過去の報告書でも指摘されていたが、1991年以降のバブル崩壊後においては、サラリーマンの平均こづかい額は日経平均株価に1年から2年遅行する形で連動する動きを示していた。これはまさに景気対策・政策の実行と、その成果が民間ベースにまで浸透するタイミングと近いもので、興味深い傾向でもある。
もっとも2011年以降は日経平均株価が上昇傾向にあるにもかかわらず、サラリーマンの平均こづかい額はほぼ横ばいの傾向に。連動性が薄くなったのには、何か理由があるのだろうか。子育ての経費がかさむようになった、サラリーマンの世帯内での社会的立ち位置が弱くなった、例えば携帯電話代のようなこづかいとは別あつかいの別の支出が家計から生じている、色々と理由が考えられる。
2023年においては前年と比べて株価は上昇、つまり経済そのものは堅調さを見せていることになる。こづかい額は前年から上昇。連動して欲しくないと思う人は多いだろうが、連動してしまっている。増えた理由を見ると(グラフ化は略)、「給料が上がったから」「副業をはじめたから」「投資などを始めて儲かったから」が上位を占めている。給料アップはともかく、副業や投資については、素直に喜んでよいのか考えさせられる話ではある。
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※サラリーマンのお小遣い調査
直近年分となる2023年分は2023年4月25日から28日にインターネット経由で行われたもので、有効回答数は2718人。男女会社員(正社員・契約社員・派遣社員)に加え、男女パート・アルバイト就業者も含む。公開資料で多くを占める会社員は男性1252人・女性842人。年齢階層別構成比は20代から50代まで10歳区切りでほぼ均等割り当て(実社員数を基にしたウェイトバックはかけられていないので、全体値では社会の実情と比べて偏りを示している場合がある)。未婚・既婚比は男性が43.5対56.5、女性は56.8対33.2。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。