楽天モバイルが「契約数」を公開。申し込み数とどう違う?
11月11日、楽天グループは7-9月期決算を発表しました。モバイル事業への先行投資で引き続き赤字となっているのはやむを得ないところですが、新たな情報として実際の「契約数」が明らかになりました。
これまで楽天が主に使ってきたのは「累計契約申込数」という指標です。これは文字通り「申し込みの数」であり、中には申し込むだけで開通に至らない人や、開通後に解約する人も含まれるため、実際の契約数とは異なることが指摘されてきました。
ただ、楽天が公開したスライドはMVNOとの合算になっているため、自社回線(MNO)のみに注目して作り直したグラフがこちらです。具体的な数値が書かれていない月については、グラフの長さに基づいて計算しています。
このグラフから、2021年2月から4月には「1年間無料キャンペーン」の申し込み終了に伴う駆け込み需要によって大きく伸びていたことが分かります。その後の伸び率は落ち着いているものの、4月に有料化が始まってからも契約数は着実に伸びているようです。
それでは、これまで楽天が多用してきた「申込数」との違いはどうでしょうか。過去に公開された累計契約申込数のグラフと組み合わせたものがこちらです。
楽天は2020年6月末に申込数が100万件を突破したことを発表したものの、実際の契約数が100万件を超えたのは9月と、2ヶ月以上の開きがあったことが読み取れます。申込数と契約数の絶対的な差は増え続ける傾向にあり、2021年6月には約75万件に達しています。
一方、申込数に対する契約数の比率に注目すると、最近は8割程度で安定しており、申込数という指標が実態と乖離しているわけではなさそうです。とはいえ、他キャリアと比較しやすいこともあり、楽天には今後も契約数の公表を期待したいところです。
「人口カバー率96%」がゴールではない
モバイル事業の収益改善に向けた道筋も徐々に見えてきました。2022年3月には楽天の自社エリアで人口カバー率96%を達成し、4月からローミングエリアをさらに縮小できる見込みとのこと。そうなればKDDIに支払うローミング費用が減り、収益は改善する見通しです。
楽天の料金プランは、自社エリアではデータ無制限となる3278円までの段階制が適用されるため、5GBで頭打ちとなるローミングエリアに比べてユーザー1人あたりの売上が高まりやすいと楽天は見ています。
ただ、筆者が気になるのは「人口カバー率96%」を強調しすぎている点です。この数字は総務省も利用する業界共通の指標ですが、「日本の96%の地域でつながる」わけではありません。この点を誤解した人が増えていくと、どこかで大炎上する恐れがあると筆者は考えています。
日本のユーザーは大手3キャリアの高品質なネットワークに慣れており、それが当たり前になっています。楽天モバイル自身も、人口カバー率96%がゴールとは考えていないようです。むしろそこから何年もかかるエリア改善作業のスタート地点になるでしょう。