「総額5億6120万ドル」の補強をしても、ポストシーズン進出にはまだ足りない!?
今オフ、テキサス・レンジャーズは、FA市場から4人の選手を迎え入れた。それぞれ、コリー・シーガーと10年3億2500万ドル、マーカス・シミエンと7年1億7500万ドル、ジョン・グレイと4年5600万ドル、コール・カルフーンと1年520万ドルの契約を交わした。総額は5億6120万ドル。レンジャーズに次ぐ、ニューヨーク・メッツ(2億5450万ドル)とデトロイト・タイガース(2億1700万ドル)の総額を足しても、4億7150万ドルだ。レンジャーズの総額は、2球団の合計を9000万ドル近く上回る。
シーガーとシミエンは、遊撃と二塁を守り、併殺デュオを組む。グレイはローテーションの1番手として投げ、カルフーンはライトを守る。
ただ、この4人が加わっても、来年のポストシーズンにたどり着けるかどうかは、まだわからない。2021年のレンジャーズは、リーグで2番目に多い102敗を喫し、地区最下位に沈んだ。ヒューストン・アストロズには35ゲーム差をつけられ、4位のロサンゼルス・エンジェルスとも17ゲーム離れていた。得失点差-190はリーグ・ワースト2位。625得点はリーグで最も少なく、防御率4.79は3番目に高かった。
レンジャーズで200打席以上の14人中、OPS.760以上を記録したのは、.869のジョーイ・ギャロ――夏にニューヨーク・ヤンキースへ移籍――と.771のナサニエル・ロウだけ。出塁率.325以上も、この2人(.379と.357)しかいなかった。31本塁打のアドリス・ガルシアは、出塁率.286とOPS.741だ。同じポジションのギャロと比べると、カルフーンは、プラスではなくマイナスだろう。打線を機能させるには、シーガーとシミエンほどでなくても、打てる選手、あるいは出塁できる選手が欲しいところだ。
ローテーションは、さらに不安が残る。こちらも、夏にフィラデルフィア・フィリーズへ移ったカイル・ギブソンを除くと、先発登板が二桁の6人とも防御率4.50以上。グレイは、打者天国のクアーズ・フィールドを離れることで成績の向上が期待されるが、アウェーの防御率が低かったわけではない。20先発以上の5シーズン(2016~19年と2021年)に、ホームで防御率3.50未満は2度あるが、アウェーはすべて防御率4.00以上だ。5シーズンとも、アウェーの防御率はホームよりも高く、2021年は、ホームの4.02に対し、アウェーは5.22だった。
ブルペンでは、ギブソンとともに移籍したイアン・ケネディに代わるクローザーとして、6月にデビューしたジョー・バーロウが11セーブと成功率91.7%を記録した。もっとも、バーロウは29.0イニングで防御率1.55ながら、レンジャーズでリリーフとして30イニング以上を投げた、ケネディ以外の8人のなかに、防御率3.15未満はいない。
ロックアウトが終わった後も、レンジャーズは補強を続けるだろう。1人の選手と総額1億ドル以上の大型契約を交わすことはなくても、例えば、DHとして、カイル・シュワーバーのような選手を手に入れようとするか、トレードにより、一塁手のマット・オルソン(オークランド・アスレティックス)を獲得する可能性も皆無ではない(その場合、ロウは一塁からDHへ移る)。ローテーションとブルペンも、このまま開幕を迎えるつもりはない――結果としてそうなるにしても――はずだ。