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筑後遠征・その3 地元の九州で“セミファイナル”を終えた安藤優也投手《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
1イニングを0点に抑えた安藤優也投手(右)とガッチリ握手を交わす新井良太選手。

 きょう26日から、今季最後の公式戦3試合に臨んでいる阪神ファーム。相手は優勝へのマジックナンバーを2とした広島です。残り試合が3でマジック2ですから、2位・中日にも優勝の可能性はまだあります。たとえば、中日がソフトバンクに3連勝すれば、広島が阪神に3連敗か、2敗1分けか、1勝2敗でも逆転可能。

 きょう鳴尾浜で行われた阪神‐広島戦は、0対7の8回に阪神が怒涛の反撃!1点差まで追い上げたものの結局、7対6で広島の勝ち。よって現時点でのマジックは1となりました。今夜、タマスタ筑後で行われるソフトバンク戦に中日が負けるか、もしくは引き分けで広島カープの親子優勝が決まります。ちなみに今季の阪神は、これで広島に9勝16敗3分け。見事なアシストぶりですね…。

 さて22日から24日までタマスタで行われた、ウエスタン・ソフトバンク3連戦の結果を順次ご紹介してきましたが、きょうは最後で24日の試合詳細です。

3軍の午前の練習が終わり、挨拶に訪れた佐々木3軍監督(右)と高波コーチ(左)。
3軍の午前の練習が終わり、挨拶に訪れた佐々木3軍監督(右)と高波コーチ(左)。

 この日は阪神の安藤優也投手(39)が6回に登板。ソフトバンクはケガから復帰の内川聖一選手(35)が、前日に続き4番DHで先発出場。同じ大分出身の2人が対戦するのを見たいなと試合前に話していたものの、内川選手は2打席で退くだろうとのことでした。しかし打順も回り、内川選手も打席に立っています。詳しくは試合経過をご覧ください。

 

《ウエスタン公式戦》9月24日

ソフトバンク-阪神 30回戦 (タマスタ)

 阪神 000 110 000 = 2

 ソフ 020 000 31X = 6

 

◆バッテリー

【阪神】田面-安藤-●高宮(3敗)-福永-守屋 / 小宮山

【ソフ】笠原(5回)-岡本(1回)-○伊藤祐(2勝4敗)(2回)-加治屋(1回) / 谷川原-堀内(8回~)

◆三塁打 ソ:釜元

◆二塁打 神:北條 ソ:堀内

◆打撃   (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

1]中:高山  (4-1-1 / 1-0 / 0 / 0) .313

2]二:荒木  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .218

3]左:キャン (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .304

〃左:板山  (2-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .203

4]遊:北條  (4-1-1 / 1-0 / 0 / 0) .218

5]一:新井  (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .288

6]指:狩野  (3-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .257

7]三:今成  (3-1-0 / 0-0 / 0 / 1) .243

8]捕:小宮山 (2-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .213

9]右:緒方  (2-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .242

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率)

田面  5回 66球 (3-2-0 / 2-1 / 4.96)

安藤  1回 21球 (1-2-0 / 0-0 / 3.95)

高宮 0.1回 12球 (0-0-2 / 2-2 / 5.35)

福永 0.2回 11球 (2-1-0 / 1-1 / 3.14)

守屋  1回 18球 (3-1-0 / 1-1 / 5.10)

《試合経過》 ※敬称略

 ソフトバンク先発・笠原の前に1回、2回と三者凡退だった阪神打線。こちらの先発・田面も1回は三者凡退の立ち上がりでしたが、2回は先頭の内川に中前打され、三ゴロの送球エラーなどで1死一、二塁となったあと、7番・釜元の右中間三塁打で2点を先取されます。

 しかし4回の攻撃は、1死から荒木がセカンド内野安打で出塁。2死後に北條が左中間へのタイムリー二塁打を放って1点差!5回には狩野と小宮山が四球を選ぶなど2死一、二塁とし、高山が中前タイムリー!一塁走者の小宮山は二塁と三塁の間で挟まれ、ショート茶谷と接触して倒れたところをジェンセンにタッチされてアウト(8-5-6-3)。と思ったら、これが走塁妨害との判定により2死二、三塁で続行。でも結局、同点のままで終わりました。

田面投手はちょうど3週間ぶりの登板。
田面投手はちょうど3週間ぶりの登板。

 田面は3回、4回と三者凡退。5回は先頭の釜元にセカンドへの内野安打を許しますが、小宮山の盗塁阻止(釜元は盗塁成功24で、これで失敗が16個とリーグワースト)もあり3人で終了。5回を投げた田面は3安打2失点(自責1)、ほとんどがゴロアウトで、しかも無四球でした。

 6回は予定通り、安藤が登板。アナウンスの前に姿を現したため、一斉にという感じではなかったけれども、大きな拍手と歓声が起こります。まず先頭の城所は3球で空振り三振。2番・川瀬はファウルで粘って7球目を打ちショートへの内野安打。そして、なんとボークで二塁へ(審判さんもなかなか厳しいですね…)

6回に登板した安藤投手。ものすごい声援でした!
6回に登板した安藤投手。ものすごい声援でした!
これまたスタンドが沸いた内川選手(右)と安藤投手との対戦。
これまたスタンドが沸いた内川選手(右)と安藤投手との対戦。
いろいろあったものの0点に抑えて終了。小宮山選手(右)と。
いろいろあったものの0点に抑えて終了。小宮山選手(右)と。

 続く茶谷のゴロを安藤が捕って三塁へ送球するもセーフ。この野選で1死一、三塁となり、打席には内川。一段とスタンドが沸きましたが3球目で一ゴロ。新井が捕り、走ってくる内川にタッチして2死二、三塁。次のジェンセンはフォークで空振り三振。打者5人に21球を投げ、1安打2三振0四球。ボークや野選など、いろいろあった1イニングです。

 7回は高宮が先頭の代打・黒瀬に死球を与え、犠打と幸山への四球で1死一、二塁として降板。代わった福永は代打・吉村をスライダーで空振り三振に切って取るも、城所に初球の真っすぐを打たれて左前タイムリー。なおも2死二、三塁で川瀬の中前タイムリーで2人を還し、この回3点を勝ち越されました。

 8回は守屋。この日4打席目の内川に右前打され、バント失敗のあと途中出場の堀内に右翼線へポトリと落ちる二塁打を許して1死二、三塁。釜元から見逃し三振を奪って2死としながら、続く幸山にショートへのタイムリー内野安打。6点目が入っています。

 ところで阪神打線はというと、同点に追いついたあと6回は先頭の板山が右前打し、2死後にピッチャーの牽制悪送球で二塁へ進みますが得点ならず。7回は伊藤祐に対して2死から四球を選んだ緒方が、牽制で刺され3人で終了。8回は三者凡退。9回も加治屋の前に三者凡退で試合が終わりました。

3戦連続タイムリー二塁打!北條選手

試合前、ティー打撃中の北條選手。
試合前、ティー打撃中の北條選手。

 掛布雅之監督は、この3連戦でタイムリー二塁打3本の北條選手に「窮屈に打っていなくて、動くようになってる。よかったと思うよ」と話しています。ちょっとスローイングがスムーズなかったように見えた点は「北條らしくないね。心配だけど、気にせず腕を振って投げろと言っている」とのこと。

 またバッティングでアドバイスをした高山選手について「左ピッチャーに対する右肩の角度とか、少し話したんだけど。ちょっと入りすぎていたんで。すぐ対応するね」と掛布監督。高山選手は筑後から帰った翌日、きのう25日に1軍再昇格となりました。代わりに陽川選手が戻ってきたんですね。

 北條史也選手にも3試合でタイムリー二塁打3本について聞いてみると「自分のスイングができているかなと思います。打てている時は」という返事。凡打している内容も悪くないでしょう?「そうですね。前よりはよくなりました」。それとスローイングがうまくいかなかったけど、試合で右手の指を気にしていたのは?「マメですね」。あ、マメができていたってことですか。なるほど。ちなみに、きょう26日の試合では力強く放れていたように思います。

先発した田面投手は5回3安打で自責点1。
先発した田面投手は5回3安打で自責点1。

 先発した田面巧二郎投手は、5回を投げて3安打、2三振、無四球で2失点(自責1)。内野ゴロがほとんどでしたね。低めを意識して?と聞いたら「前回が、といってもだいぶ前ですけど」と苦笑。そうなんですよ、前回の登板は9月3日の広島戦(北広島町)で、先発して4回3安打4四球に暴投ありの4失点でした。それからちょうど3週間です。

 「その時は球が高かったので、意識はしました。きょうはしっかり腕が振れていたし、感覚はよかったです」。久保投手コーチも「低めを丁寧に投げていた。よかったですよ」という評価でした。

今も変わらない制球力はさすが

 最後は安藤優也投手です。試合後、いろんな方との挨拶などがあったであろうところに声をかけると「え、僕の話?そんな…僕でいいんですか?」と言いながら、しっかり立ち止まって時間を作ってくれる、まさに安藤さんらしい対応でした。感謝します!

16年間、いえアマ時代から変わらないコントロールです。
16年間、いえアマ時代から変わらないコントロールです。

 同じ大分出身の内川聖一選手との対戦、これまではどうだったんですか?「いや~打たれているイメージしかないですねえ。結構打たれていますよ。でも、最後は気を使ってくれましたね(笑)」。地元・九州で最後のマウンドは?「九州でこうやって投げられたのが本当によかったと思うし、親や親戚が呼べて、その前で何とかゼロに抑えられてよかったです」

 それにしてもコントロールの良さは健在ですねと言われ「はは!それしかないから。でも気を使わせてしまって申し訳なかったです」と話しましたが、まあボークまで取られたので遠慮はいらないでしょう(笑)。投げ終えてベンチへ戻る時に、ひときわ大きな声援が。あったことには「ありがたいですねえ。ほんとに阪神ファンは熱い!」と感謝の意を表しています。

大分商業から入団して2年目の川瀬選手(左)が、マウンドを降りる安藤投手の元へ。
大分商業から入団して2年目の川瀬選手(左)が、マウンドを降りる安藤投手の元へ。

 ちなみに内野安打した川瀬晃選手も大分出身で、安藤投手は「いつも試合があったら、挨拶しに来てくれるんですよ」と言っていました。投げ終わった時も、ランナーで残っていたサードからやってきて握手。20歳になったばかりの川瀬選手なので、安藤投手のちょうど半分ですよ。何か言葉をかけられて恐縮している感じ。また先頭打者だった城所龍磨選手は、3球三振に「もう阪神ファンの声がすごくて…」と苦笑いだったとか。つまりスタンドに後押しされた三振ってことですかね。

その気遣いが心に残るエース

マウンドに立つ、この頼もしい背中がもう見られないのは寂しいですね。
マウンドに立つ、この頼もしい背中がもう見られないのは寂しいですね。

 この日は大分の実家からご両親と、お母さんの弟(叔父)さんご夫妻など計8人が来られての観戦でした。投げる姿を生で見るのは、ことし初めてだとか。もちろんタマスタ筑後も初参戦です。試合前にお話を伺ったところ、お父さんは「寂しいですけど、終わりはいつか来るものなので。本人は肩の荷が下りたと言っていましたが、我々も同じです。小学校4年からピッチャーオンリーで30年ですからねえ」としみじみした口調。

 お母さんは「こんなに長くやれるとは思っていませんでした。本当にご苦労様と、そのひとことです」とおっしゃいます。おふたりとも10月6日の甲子園には行かれないそうで、今回の筑後遠征も、登板も何よりの親孝行だったでしょうね。ご両親にも、長い間お疲れ様でしたと申し上げたいです。

 ところで、試合が終わってから約1時間15分後のこと。監督やコーチ、選手のほとんどが既に博多へ移動中か、もしくは駅のホームにいたと思われる頃、新幹線の筑後船小屋駅前に、ちょっとした行列がありました。皆さん、服装や持ち物で阪神ファンとお見受けしますが…いったいなぜ並んでいらっしゃるのでしょう?

 近くまで行って見てみたら、安藤投手がいます。なるほど、次の新幹線までの時間を利用して即席のサイン会中だったんですね。安藤投手が駅に着いた時、おそらく見送ろうと待つファンの方々がおられたのでしょう。そこでサインを書きはじめたようです。在来線の駅へ向かいながら、サインをもらった方に伺ってみると「もう何十分か、ずっと」とのこと。

投げ終えてベンチへ戻る安藤投手の後ろ、スクリーンには『六甲おろし』の歌詞が。
投げ終えてベンチへ戻る安藤投手の後ろ、スクリーンには『六甲おろし』の歌詞が。

 私が気づいてからも10分以上は経ったので、球場を出たタイミングから考えると30分近く続いていたと思われます。やがて17時すぎ、サインをもらっても帰らず待っていた方々に見送られて、駅へ入っていった安藤投手。ファンの皆さんの心に、その活躍だけでなく優しい人柄も、ずっとずっと残るに違いありません。

     <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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