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北朝鮮が発射するのはICBMか、衛星ロケットか? 発射時期は?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
グアム制圧を想定した地図を背にした金正恩委員長

 米CNNテレビは2日前(12月27日)、米情報当局者の話として北朝鮮が新たなミサイル発射を準備している兆候が確認されたと伝えていた。韓国のメディアも北朝鮮が近いうちに弾道ミサイルもしくは人工衛星用ロケットを発射する可能性があると一斉に報じている。

 日本海に面した咸鏡北道花台郡の東海衛星発射場なのか、黄海(西海)側の平安北道東倉里の西海衛星発射場なのか、あるいはその他のミサイル発射場なのか、発射場については明らかにされてないが、関連装備が移動している姿が米韓情報当局の監視装置によってキャッチされたことがその根拠となっているようだ。こうしたことから韓国軍は「米国と共助してあらゆる可能性に備え」(合同参謀本部広報室長)先週から非常待機状態にある。

(参考資料:どこからでも発射可能! 北朝鮮ミサイル発射場の全貌

 衛星について言うならば、金正恩委員長は昨年2月に地球観測衛星「光明星4号」を発射した際に「実用衛星をもっと多く発射せよ」との指示を出していた。北朝鮮の国家宇宙開発局(NADA)はこの指示を受け、7か月後には新型の停止衛星運搬ロケット用大出力エンジン地上噴出実験を行い、成功させている。これに気を良くした金委員長は今年(2017年)の新年辞で「これにより宇宙征服に向かう道が敷かれた」と胸を張っていた。

 当時、米航空宇宙研究機関の「エアロスペース」のジョン・シリング研究員は北朝鮮の核とミサイルを監視している米国の北朝鮮分析サイト「38ノース」への寄稿文で「北朝鮮が公開したエンジンは小型無人月探索装備を発射するには充分である。停止軌道に通信衛星など多様な低高度偵察衛星を発射するに適合している」と解析していた。

 「光明星4号」の1段推進体は27tfのノドン・ミサイルエンジンを4つ束ねて発射されていたが、新型の大出力エンジンの推進力は80tfある。北朝鮮は僅か7か月で推力が約3倍のエンジンを開発したことになる。

 「白頭山エンジン」と称されるこのエンジンはグアムを狙った「火星12号」や米国の西海岸に届く「火星14号」の一段エンジンに使われているが、11月29日に発射に成功した米本土を網羅するICBM「火星15号」では二つ束ねて使用されていた。こうしたことから北朝鮮が「火星15号」を今度はロフテッド(高角度)ではなく、正常角度で発射させるため、また、核爆弾搭載に向けて衛星を発射させるのではとみる向きもある。

 人工衛星を管轄する北朝鮮の国家宇宙開発局の幹部は11月中旬に平壌を訪れたロシアの軍事専門家との面談で「数メートルの解像度を持つ重さ100kg以上の地球観測衛星と静止軌道に投入する数トン以上の通信衛星をほぼ完成させた」と語っているが、衛星発射が目的であったとしても、北朝鮮の狙いは軍事衛星にあると米韓軍当局は警戒している。

 ミサイルにせよ、衛星にせよCNNによれば「数日~数週間で発射される可能性がある」とのことだが、CNNの報道から2日も経過しているので「数日内」ならば、明日(30日)がタイムリミットとなる。ちなみに12月30日は金正恩委員長が父・金正日総書記の急死を受け、最高司令官に就任した日である。

 韓国紙「中央日報」(12月26日付)は「発射されるのは光明星5号」で「移動式発射台から発射されるかもしれない」と報じているが、ならば、「数日内」に発射されるのはミサイルの可能性が大だ。移動式発射台からの人工衛星発射は前代未聞であるからだ。また、人工衛星ならば、1998年のテポドン1号を例外として、北朝鮮から必ず事前予告がある。国際民間航空機構(ICAO)や国際海事機構(IMO)、国際電気通信連合(ITU)にも事前通告がある。

 北朝鮮は人工衛星と称して事実上の長距離弾道ミサイル(テポドン)を過去6回発射しているが、2009年からの過去4回はいずれも発射前に事前予告している。

 金正日政権下の2009年4月5日に発射された「光明星2号」は朝鮮宇宙空間技術委員会が2月24日に東海衛星発射場で「人工衛星打ち上げの準備を行っている」と発表。早くも3月13日には「4月4-8日の間に人工衛星を打ち上げる」とICAOとIMOに通告していた。そして発射前日の4月4日に朝鮮宇宙空間技術委員会は「間もなく発射する」と発表して、打ち上げていた。

 外国からマスコミを招請し、鳴り物入りで宣伝して失敗した2012年4月13日の「光明星3号」も宇宙空間技術委員会が3月16日に「4月12-16日の間に発射」と予告していた。

 再度トライした同年12月12日の発射も12月1日に朝鮮宇宙空間技術委員会が「12月10~22日の間に発射する」と発表していた。

 直近の昨年2月7日の「光明星4号」も2月2日に「8-25日の間に発射する」とITUに通告していた。しかし、この時は、6日になって「7-14日に」に変更すると通告し、予告開始日の7日に発射していた。いずれにせよ最初の予告から5日目の発射であった

 仮に「数日」、即ち、年内ではなく「数週間内」の発射ならば、1月中ということになるが、昨年も北朝鮮が発射を正式に公表する4日前に「38ノース」が1月25日に撮影された衛星写真から▲西海衛星発射場の雪がきれいにはけていた▲車両や作業員の姿が確認された▲発射台のクレーンタワーを含め発射準備の重要な作業場がすべて白い幕に覆われていたことなど「疑わしき動き」を伝えていた。

 米国による迎撃を恐れてか、回数を重ねる度に予告から発射までの時間が短縮されているものの仮に北朝鮮が人工衛星を発射するならば必ず宇宙空間技術委員会の名による予告があるはずだ。

(参考資料:米国は北朝鮮のICBMを撃墜できるか

 仮に1月中の発射ならば、金正恩委員長の誕生日の8日前後が「Xデー」となる公算が高いが、2月に延びるならば朝鮮人民軍正規軍創建70周年の8日か、16日の金正日総書記の生誕日に合わせるかもしれない。ミサイルにせよ、人工衛星にせよ、冬季の発射は悪条件とされているが、北朝鮮の直近の2度の衛星発射は12月と1月に行われている。

 北朝鮮が発射を強行すれば、2月9日から開幕する平昌冬季五輪への影響は避けられないだろう。

(参考資料トランプ政権への北朝鮮の7枚の「対抗カード」

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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