ロナウドの”髪ゴール”はなかったと判定したAdidasのセンサー内蔵ボール特許について
前回の記事でワールド杯カタール大会のVAR(Video Assistant Referee)に関連する特許についてご紹介しました。本記事では、サッカーにおける高精度のボールのトラッキングに必要となる、センサー内蔵ボールに関するAdidas社の特許についてご紹介します。KINEXON社のウェブサイトによると、このボールはConnected Ballと呼ばれ、同社とAdidas社の共同開発によるものだそうです。
ちょうど、このテクノロジに関連して「ポルトガル連勝で決勝T進出!ロナウドの”髪ゴール”はさわってないと判定され得点者変更に」というニュースもありました。対ウルグアイ戦において、クリスティアーノ・ロナウドのヘディングによるとされていたゴールがボール内センサーの情報によりロナウド選手には触れていなかったことが明らかになったとのことです(得点者の記録が変更になっただけでゴールが無効になったわけではありません)。
ボール内にセンサーを内蔵すると一口にいっても、よくよく考えてみると、ゴルフや野球のボールのように中身が詰まったボールであればまだしも、サッカーボールのように中に空気を入れて使うタイプの場合、どうすれば良いのか気になりますが、結論から言えばタイトル画像のような仕組みで複数の支え棒を使って、ボール中央部にセンサーを支持しています。
この発明は前回記事で紹介した、センサー内蔵ボールを使ってボール位置を把握するAdidas社の基本特許の関連特許として登録されています(US8231487等)。日本でも同等特許が成立しています(4448077号)。出願日は、2005年9月20日(優先日2004年9月17日)、発明の名称は「ボールの内袋およびボール」です。
この特許発明、実際に製品化するとなると、激しいプレイにも対応できて、センサーを常に中央部に維持し、精度を維持できるようなボールを実際に作るのは相当に大変ではないかと思います(出願から20年弱を経てようやく大舞台で採用されたのも頷けます)。この特許の権利は2025年に満了します(次のワールドカップの時は権利切れです)が、特許の内容だけ見て他社が同じ物を作るのは困難ではと思います。
ところで、内蔵センサーの充電ですが、当然ながらワイヤレス充電で行います。専用の充電台があるわけではなく、普通のテーブルタップを使って充電しているのでちょっとシュールです。