VAR(Video Assistant Referee)関連特許について調べてみた
日本のスペイン戦勝利を正しく判定してくれたVAR(Video Assistant Referee)の関連特許について調べてみました。
ネット検索でいろいろ調べると、テクノロジでボール競技の審判を支援する発明として知られる初期のもののひとつが英国の出願(公開番号2357207)です。発明の名称は”Ball tracking and trajectory prediction”(ボールの追跡と軌道予測)です。出願日は2000年1月28日です。
イギリスらしくクリケットを前提とした発明になっています。少なくとも4台のカメラを使ってボールの軌跡を予測することが発明のポイントです(これによって仮にボールがプレイヤーによって隠された位置にあっても判定ができます)が、2004年に自発取下になっています(理由は不明ですが、球技のビデオ判定のアイデア自体はもっと昔からあり新規性を欠くと判断されたからではないかと思います)。また、この出願に優先権を指定してオーストラリアおよびPCT国際出願が行われていますが、いずれも権利化されていません(仮に特許化されたとしても権利は既に満了していますが)。
この発明の発明者の一人であるPaul Hawkins氏が独立して始めた会社がHawk-Eye Innovationです(名前のHawkinsと鷹(の目)をかけているわけですね、”誰うま”です)。その後、2010年にHawk-Eye Innovation社はSONY傘下となり、テニス等のスポーツのビデオ判定のデファクトとなっています(参照Wikipediaエントリー)。
このPaul Hawkins氏を発明者とする特許が何件か登録されていますが、どちらかというと改良発明です。またの機会にご紹介したいと思います。
カタール大会でミリ単位の精度で判定をしてくれたVARでは、このHawk-Eyeに加えて KINEXON(キネクソン)というドイツのIoTスタートアップ企業によるテクノロジが使用されているようです(参考記事)。ボール内にセンサーを組み込み、UWB(Ultra Wide Band)とIMU(慣性計測ユニット)によりボールの正確な位置を測定するテクノロジです(参考記事)。KINEXON社の出願による特許を調べてみましたが、現時点で登録されているものは1件しかありません(US11150321)。電波による物体の位置測定の精度を向上するための発明であり、VARに関係していそうですが、カタール大会で実際に使われたかどうかは定かではありません。
また、ボール内にセンサーを仕込んだ位置測定に関連する基本的発明がAdidasにより特許化されています(たとえば、US9849361)。これについても追って記事を書く予定です。