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チューニングキャンディー 圧巻のダンス動画が話題の『ダイナミック琉球』に込められた、5人の思い

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/プロダクション尾木

「ダイナミック琉球」
「ダイナミック琉球」

5人組ダンス&ボーカルグループ・チューニングキャンディー(チュニキャン)が、3月22日に配信した「ダイナミック琉球」のパフォーマンス動画が、約195万回再生(7月24日現在)と注目を集めている。この曲は沖縄在住のアーティスト・イクマあきらが2008年に発表し、エイサーや、高校野球の応援歌として甲子園でも定番になっている人気曲で、首里城再建支援へ向けた応援歌(収益の一部を首里城再建支援のために那覇市役所を通じて寄付)として彼女たちがカバーした。クリエイター陣も豪華だ。アレンジ監修を音楽プロデューサー・武部聡志が手がけ、振付の監修は、沖縄県出身の世界的なダンスエンターテイナー仲宗根梨乃。沖縄県出身の5人、ソフィー、ゆうり、琴音、LILI、愛子が魂を込めて歌い踊るこの曲について、話を聞いた。

「5人の全く違う個性、声、歌を楽しんで欲しい。沖縄魂を込めて歌っているので聴いて欲しい」

ソフィー
ソフィー

「まずこの作品は、たくさんの人の協力があってできた曲なので、感謝の気持ちをメンバー一人ひとりがしっかり感じ、皆さんに届けたいです。私達5人の個性、一人ひとりの声も、歌い方も全然違うので、そこを楽しんで欲しいですし、沖縄魂というか、みんな気持ちを込めて歌っているので、聴いて欲しいです。ダンスも沖縄の歴史や龍を表現しているので、きちんと伝えていきたいです。仲宗根梨乃さんがすごく気持ちが強い方だったので、それを受け継いで、みんなで力を合わせてパフォーマンスをやっていきたいと思うので、YouTubeとそしていつかライヴにも遊びに来て欲しいです」。リーダーのソフィーは「ダイナミック琉球」に込めた思いを力強く語ってくれた。

「沖縄の誰もが知っている原曲のよさも保ちつつ、どうやって自分たちのカラーにしていくのか考えました」

LILI
LILI

「ダイナミック琉球」は2008年に発売されて以来、沖縄県内各地のエイサーの団体が使用し、沖縄では知らない人がいない曲だ。そんな有名曲をカバーするということで、逆にプレッシャーはなかったのだろうか。「やっぱりありました。原曲のよさも保ちつつ、どうやって自分たちのカラーにしていくのかを考えました。(仲宗根)梨乃さんの振り付けが私たちの個性も引き出してくれたと思っています」(LILI)。「イクマさんにもこの曲の歌詞やメロディに込めた思いをお聞きすることができて、海に行って感じるものを表現したそうです。沖縄の海って爽やかではなくて、めっちゃ風が強くて荒波だとおっしゃっていて、そのイメージを思い浮かべながら歌い、踊っています」(ソフィー)。

「振り付けでは、沖縄の心を教えていただいたので、チュニキャンにとって心を落ち着かせる練習にもなりました」

愛子
愛子

EDMと琉球音階がうまく溶け合ったアレンジで、琉球舞踊、カチャーシー、空手を取り入れたキレのあるダンスは「(仲宗根)梨乃さんのスタイリッシュさも入って、故郷を思いつつ、でも東京で頑張るという私たちの気持ちも込められていて、すごくしっくりきています」(愛子)、「琉球舞踊とか空手とか初めて経験して、空手ではどこに力を入れるとか、体のどの部分を中心に使うかとか、一から教えてくださって。琉球舞踊の動きは結構細かくて、手の指先までちゃんと見られているから、そこも意識してとアドバイスしていただきました。沖縄の心を教えていただいたので、チュニキャンにとって、心を落ち着かせる練習にもなりました」(ソフィー)。

チュニキャン史上最高難度だったというダンスは「丸4日間くらいレッスンして、筋肉痛が半端なかったです」(ゆうり)、「フォーメーションも技も空気感も、最終日になってもOKをもらえなくて、みんなでさらに練習を重ねました」(琴音)と、自分達のものにするまでに苦戦したようだ。

高校野球甲子園大会ではおなじみの応援曲。ソフトバンクホークス東浜巨投手の今季の登場曲にも起用される

演奏には甲子園で沖縄代表校を応援する兵庫県・市立尼崎高校吹奏楽部も参加している。実は尼崎高校は春夏の甲子園で沖縄代表校を、40年近くブラスバンドで友情応援し続けている。同ブラスバンド部を率いるのは、沖縄出身の羽地靖隆氏で、今年の夏の甲子園の開催は見送られたが、大阪桐蔭など強豪校も定番の応援曲としており、来年の春夏の甲子園では、この曲が高らかに鳴り響くことを楽しみに待ちたい。

さらにプロ野球福岡ソフトバンクホークス・東浜巨投手の、今季の登場曲としても使用されていて、同選手は「マウンドに上がる時に、沖縄の風を感じられるのはいいですし、元気が出る曲です。高校の時の雰囲気も感じることができて、どこか懐かしいという思い出もありつつ、この曲が首里城復興ソングと聞いていますので、エールを送る曲としてピッタリだと思います」と絶賛している。

「上京したての頃の寂しい気持ち、故郷の大切さや親への感謝…3年目に入ってみんなすごく感じていて、そんな色々な思いが乗っている、今だからこそ歌える曲」

チュニキャンは2013年に沖縄のキャッツアイタレントスクール生で結成され、2018年3月にシングル「Dance with me」でメジャーデビューを果たし、いきなり「日本レコード大賞」新人賞を獲得するなど大きな注目を集めた。故郷・沖縄を離れ、慣れない環境で共同生活し、苦労しながらも全員で楽しみ、とにかく前進あるのみで活動してきた。2019年にはメンバー二人が脱退し5人体制となり、精神的にも成長した中での「ダイナミック沖縄」という“大きな”作品への挑戦だった。そしてそれぞれのチューニングキャンディーというグループに対する思いにも変化があったという。

琴音
琴音
ゆうり
ゆうり

「色々なことを経て、チューニングキャンディーというグループについて、ひとり一人考える時間が増えたと思います。最初の頃は、とにかく言われたことをこなすだけでいっぱいいぱいという感じでした。5人になった時は正直不安でした。でも一人ひとりが意識改革できたので、やっていけると確信を持てました。3年目になって、上京したての頃の寂しかった気持ちとか、故郷の大切さや親への感謝を、みんなすごく感じていて、そんな色々な思いがこの曲にのっていると思います。今だからこそ歌える楽曲だと思います」(ソフィー)、「チュニキャンをもっとレベルアップしたい、もっとたくさんの人に知ってもらいたいとか、もっとチームワークをよくしたいということを、以前よりも意識し始めたというか。5人になって、ミーティングでもみんな自分の気持ちや意見をそれまで以上に言えるようになって、チームワークがさらによくなったと思います。『ダイナミック琉球』でも、その見せ方について何回も話し合いました。だんだんこの曲のダンス動画のYouTubeの再生回数上がってきて、まだまだですが、少し努力が報われたのかなと感じています」(LILI)、「最初は歌って踊るだけで精一杯でした。でもメンバーが少なくなって5人体制になってからは、いかに歌とダンスで思いを届けるかということがもっと重要になってきて、ダンス&ボーカルグループとして、ちゃんと生で歌わせていただいていますので、この曲をどうやって色々な人に伝えるのかを、しっかり考えながらパフォーマンスしています」(ゆうり)、「今まではメンバーに対して“できない”ということが言えなかったのですが、3年目に入って、メンバーに頼れるようになって、気持ちが変わりました。『ダイナミック琉球』をパフォーマンスしていると、本当にこのグループでよかったと思うし、周りのスタッフさんにも恵まれていると思います。もちろんファンの皆さんにもたくさん応援していただいて、感謝の気持ちでいっぱいです」(琴音)。

リーダー・ソフィーの母校・沖縄尚学で「ダイナミック琉球」のMVの撮影予定だったが……

『ダイナミック琉球』のミュージックビデオは当初、リーダー・ソフィーの母校であり、ソフトバンクホークス東浜投手の母校でもある沖縄尚学高校で撮影される予定だったが、コロナウイルスの影響で延期になり、パフォーマンス動画を制作した。このMVの撮影をメンバーも沖縄の人々も心待ちにしている。

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「早く母校でMVの撮影をやりたいです。今はファンの皆さんや、この曲を気に入ってくださった方に会いに行くことはできませんが、歌とダンスを通して、何か伝わるものがあったらいいなって思います。大変な時だからこそ、みなさんを励ますことができる曲でもあると思っています」(ソフィー)

『ダイナミック沖縄』はまだライヴで披露していない。ライヴで歌い、そして魂のダンスを披露し、5人の思いとファン、そして聴いてくれた人の思いとが交錯し生まれる感動という名の“熱”を、多くの人に放熱して初めてこの曲は「完成」する。そしてさらに破壊力を増して、世界中の人に感動を与えそうだ。

5人は、8月8日オンエアの『MUSIC FAIR』(フジテレビ系/18時~)に出演する。

Chuning Candy オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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