「WAアフタヌーンティー」から読み解くホテル インターコンチネンタル 東京ベイのリノベーション精神
和を取り入れるホテル
「【桜スイーツ】50周年を迎えるホテルニューオータニの想い」でご紹介したように、ホテルニューオータニは桜の季節に合わせて重箱の「お花見菓子重」を販売しています。重箱に入れられていますが、和菓子ではなく洋菓子というのがモダンな印象を与え、和洋折衷なので外国人はもちろん、日本人も興味を引かれます。
オープン前から話題となっていた東京ステーションホテルやパレスホテル東京は、コンセプトを「おもてなし」と明確に謳っており、和を意識していることが分かります。
こういった日本系のホテルではなく、外資系ブランドのホテルでも和を意識的に取り入れているホテルがあります。
それは、ホテル インターコンチネンタル 東京ベイです。2011年にゲストハウスウェディングのリーディングカンパニーである「ベストブライダル」が親会社となり、ベストブライダル創業者であり、ミスター・ブライダルと呼ばれる塚田正由記氏が社長を務めるようになってから、全館を挙げてのリノベーションを施し、売上が対昨年期比で伸びています。
ロビーをリノベーション
リノベーション前まで、エントランスを入ったロビーには暖炉や大きな鏡があって洋風のシックな造りでしたが、2013年春に大きく変わりました。
わざわざニューヨークのオークションで競り落としてきた京都の「洛中洛外図屏風」の屏風がロビー中央に飾られたり、家紋をイメージした格子状の装飾が施されたりと、日本風のイメージを強く打ち出しています。洛中洛外図屏風はガラスで囲まれてもおらず、間近で見られるようになっており、見せることへのこだわりが強く感じられます。
取締役 営業本部長 前原孝行氏は「インターコンチネンタルグループでは、お客さまが今ご自分がどの国にいらっしゃるのか実感していただくことを大切にしている」とし、「外国人のお客さまが5割を超えるので、ホテルに入った瞬間から日本らしさを感じていただきたい」という理由で、ロビーのリノベーションに踏み切ったと説明します。
日本らしさを感じていただく
そのホテル インターコンチネンタル 東京ベイの「ニューヨーク ラウンジ」で3月25日から「WAアフタヌーンティー」という新しい試みのアフタヌーンティーが始められました。
営業本部 営業企画・個人営業部 担当部長 奥園恵美子氏は「外国人のお客さまにもっと喜んでいただかなければならない」として、「日本と言えば桜。桜の季節に合わせて日本らしさを感じていただける商品を考えた」とアフタヌーンティーを重箱で提供した理由を述べます。
前原氏は「日本の『和』とお客さまが喜んで驚いてくださる『ワッ』をかけた」として「WA」というキーワードに対するこだわりも説明します。
WAアフタヌーンティー
市松模様の重箱が使われています。平日は3333円、土日祝日は3833円と、高級ホテルのアフタヌーンティーとしては、決して高くありません。
奥園氏は「日中だけではご利用できないお客さまが多い」として「オペレーションを改善して夜遅くにもご利用できるようにした」と負荷がかかることを承知の上で、11時~17時および17時30分~22時と、ほぼ終日にかけて提供するようにしたと述べます。
- ファーストディッシュ
ジャガイモのハーブスープ
- アミューズ・ブッシュ
信玄鶏胸肉のヘルシーカナッペ、カリフォルニア寿司ロール、季節のアミューズ
- スコーン
色鮮やかな桜を使ったスコーン、香り高い抹茶スコーン、サワークリームを練り込んださっくり&ふっくらスコーン
- プティガトー
サクサクした食感が心地よいマカロン2種(フランボワーズ&チーズ)
- スイーツ
チョコレートのミニパフェ、桜プリン、抹茶の香りとゆずのバランス 抹茶オペラ
- 厳選日本茶コレクション
コーヒー、紅茶、緑茶、ほうじ茶など
ファーストディッシュ
アフタヌーンティーの王道は英国風の2~3段プレートによる提供で、プレートと紅茶が出されて終了ということが一般的です。しかし、WAアフタヌーンティーでは、最初にファーストディッシュを提供します。ファーストディッシュはスープをパンで包み込んだ面白い一品で、これからアフタヌーンティーを始める前に、胃腸の調子を整えるための体に優しいスープを食べてもらいたいという「おもてなし」の心です。
実はこのファーストディッシュはホテル インターコンチネンタル 東京ベイが考え出した手法で、3階の人気ブッフェレストラン「シェフズ ライブ キッチン」で最初に提供を始めてから話題となっているものです。シェフズ ライブ キッチンでは季節変わりのパイ包みスープを提供していますが、WAアフタヌーンティーでは「同じではつまらない」という前原氏の考えをもとにして新しく商品を開発したのです。
一の重はアミューズ・ブッシュ
ファーストディッシュの後に、三段の重箱が運ばれて来ます。
重箱の段もコース意識した流れになっており、一の重にはアミューズ・ブッシュが詰め合わせられています。奥園氏が「外国人のお客さまに親しみのあるものをご用意した」と言う通り、カリフォルニア寿司ロールとカナッペは定番に据えて、他に季節の2品を含む、全4品を提供しています。
二の重はプティガトー
二の重はプティガトーです。マカロン、ミニパフェ、プリン、オペラといった洋菓子ばかりかと思っていると、プリンは桜風味で趣があったり、オペラは抹茶とゆずを使った意欲的なものであったりと、和洋折衷の洋菓子となっています。
三の重はスコーン
三の重はスコーンで英国風のアフタヌーンティーらしい内容となっており、クロテッドクリームとホテルメイドのフルーツジャム2種類が添えられています。桜や抹茶を使ったスコーンも用意されており、二の重と同じように和を感じさせています。
スコーンはラウンジ内に併設するデザート工房「アトリエ・デセール」からできたてが届けられています。
ドリンクはお代わり自由
アフタヌーンティーのドリンクは、1杯だけというところや差し湯なら可能といったところが多いです。WAアフタヌーンティーではメニューにあるドリンクは好きに選んでお代わりできるので非常に良心的であると言えます。
日本茶は緑色の土瓶で提供されるので印象深いです。
真似されることは光栄
ホテル インターコンチネンタル 東京ベイは、シェフズ ライブ キッチンでブッフェレストランで初めて「フレッシュ」「ビューティー」「ヘルシー」といったコンセプトを明確に打ち出したり、鉄板焼「匠」でオーセンティックな鉄板焼にしては画期的な「つけジュレ」やトマトの丸焼きといった手法を発明したり、「【パンケーキの日】パンケーキは日本の国民食となれるのか?」でご紹介したようにパンケーキツアーズに参画したりと、新しいことに対して非常に前向きです。
前原氏は「他と同じことをやっていたら面白くない」として、むしろ「新しいことを考える。真似されることは光栄」として自信の程を覗かせます。
実は、重箱を使ったメニューは珍しいものではなく、東京ステーションホテル「ブラン・ルージュ」の前菜や、パレスホテル東京「ザ パレス ラウンジ」やホテル日航東京「ベランダ」のアフタヌーンティーで用いられています。
しかし、ホテル インターコンチネンタル 東京ベイでは重箱に加えて、ファーストディッシュ、アトリエ・デセールからのできたて、ドリンクお代わり自由、ラグジュアリーなニューヨークスタイルといった付加価値も提供しているのです。
現状に満足しているとリノベーションは生まれない
前原氏は「現状に満足していると、新しい創造は生まれない」と述べ、ホテル インターコンチネンタル 東京ベイの売り上げが伸びている理由は常にリノベーションを行っているからであると説明します。
ホテル インターコンチネンタル 東京ベイのリノベーションは2014年に一段落つく予定です。しかし、前原氏はもちろん、社長である塚田氏が現状に満足することは決してないでしょう。そういった意味で、ホテル インターコンチネンタル 東京ベイのリノベーションは今後もずっと続いていくはずです。
■情報
2014/03/25~04/20
11:00~17:00、17:30~22:00
「WAアフタヌーンティー」
平日 3333円、土日祝日 3833円
詳しくは公式サイトをご確認ください。
■参考