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女王ロドリゲスを制しタランテッロが優勝、日本の秦が3位。パリへの横浜パラトライアスロン・エリート

佐々木延江国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表
女王ロドリゲスを制し優勝したタランテッロ 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生

 横浜山下公園を舞台に5月11日「ワールドトライアスロンパラシリーズ2024横浜」が朝6時50分にスタートした。ロンドンから12年ぶりのヨーロッパ開催となるパラリンピックにヨーロッパ勢が張り切る。JTUハイパフォーマンスディレクター富川理充氏は「我々が東京を目指したように、ヨーロッパ勢は長い時間をかけてパリの選手を育成してきた」と言う。パリの会場であるセーヌ川の表彰台を目指す選手たちの熱戦が横浜で繰り広げられた。

 女子PTVIクラスのフランチェスカ・タランテッロ(ITA)とガイドのシルビア・ヴィサッジは、スイム、バイク、ランの全ステージで世界選手権4勝の女王スザナ・ロドリゲス(ESP)を破って優勝した。

女子PTS2は、ヘイリー ダンズ(USA)が優勝、日本の秦由加子が3位!

女子PTS2の表彰式。1位:ヘイリー・ダンズ(USA)、2位:アヌ・フランシス(AUS)、3位:秦由加子 写真・PARAPHOTO/山下元気
女子PTS2の表彰式。1位:ヘイリー・ダンズ(USA)、2位:アヌ・フランシス(AUS)、3位:秦由加子 写真・PARAPHOTO/山下元気


 アメリカ勢もまた、敵が強ければ強いほど、より強くなるという結束した姿勢を見せてくれた。女子PTS2ではヘイリー・ダンズ(USA)がスイムを11:49のトップタイムで終え、バイクは2位、ランは1位でトータル1:13:24のタイムで優勝した。

バイク、ランの実力をつけた、秦のフィニッシュシーン 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生
バイク、ランの実力をつけた、秦のフィニッシュシーン 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生

 東京パラリンピック銀メダリスト、日本の秦由加子(キヤノンマーケティングジャパン・マーズフラッグ・ブリヂストン/千葉)は、手術後の回復が良い形に向かい今シーズンの好調ぶりを示し3位。いいコンディションでレースを堪能した。

男子PTS5クリス・ハマーが優勝! 日本の佐藤は8位からパリを目指す

クリス・ハマー(USA)とステファン・ダニエル(CAN)ランパートでの競り合い 写真・PARAPHOTO/山下元気
クリス・ハマー(USA)とステファン・ダニエル(CAN)ランパートでの競り合い 写真・PARAPHOTO/山下元気


 男子PTS5クラスでは、スイム・スタートでトム・ウィリアムソン(IRL)が先頭に立ち、その後、クリス・ハマー(USA)がランでトップになり最終的にフィニッシュテープを切った。若い選手がひしめくこのクラスでは、ステファン・ダニエル(CAN)が5秒差で2位に入った。T2まではダニエルがリードしていたが「ランが伸びず、ランでクリスに逆転された」と話していた。

 冬季パラリンピック・クロスカントリースキーの日本代表でもある佐藤圭一は8位。二刀流は厳しくはないか?との質問に「厳しいかどうかより、日本からも夏も冬もいけるスター選手が生まれたらと願っている、仲間を増やしたい」と話していた。


男子PTVI(視覚障害)はデイブ・エリス(GER)が優勝!

スイムをトップの9:30で終えてトランジッションへ向かうデイブ・エリス(GER/右)とガイド 写真・PARAPHOTO/山下元気
スイムをトップの9:30で終えてトランジッションへ向かうデイブ・エリス(GER/右)とガイド 写真・PARAPHOTO/山下元気


 最多のクラス9組が出場し、デイブ・エリス(GER)が2位以下を1分以上離してフィニッシュした。

 日本の米岡聡(三井住友海上/東京)とガイドの阿部有希は、59:51と昨年より1分以上タイム縮めることができた。

男子PTS4は、セーヌ川の主役、アレクシ・アンカンカン!

表彰後、最多の17人がエントリーした、パリパラリンピック開催国フランスチームが記念撮影 写真・PARAPHOTO/山下元気
表彰後、最多の17人がエントリーした、パリパラリンピック開催国フランスチームが記念撮影 写真・PARAPHOTO/山下元気

アレクシ・アンカンカン(FRA)のフィニッシュ 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生
アレクシ・アンカンカン(FRA)のフィニッシュ 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生


 公式戦24連勝のアレクシ・アンカンカン(FRA)、「競争の中で勝ち続けることが重要なんだ。東京で得た金メダルをパリでも再び獲得する」と、自国開催となるパラリンピックへの意気込みを、英語は苦手と言いながらも日本人記者たちに伝えるため、英語で語ってくれた。 

 フランス国民からメダルへのプレッシャーを感じるか?と質問すると、「パラリンピックの魅力が理解されておらず、期待されるほどポピュラーではない」と冷静に分析する。「だからこそ、パリの大会を通じてこのスポーツを見れば、パラリンピック、トライアスロンが好きになるだろう」と、思いを語っていた。

男子PTWCはヘールト・スキパー(NED)が優勝

57分38秒で優勝したヘールト・スキパー(NED)表彰式で 写真・PARAPHOTO/山下元気
57分38秒で優勝したヘールト・スキパー(NED)表彰式で 写真・PARAPHOTO/山下元気

 男子PTWCクラスは高速レースを展開した。57分38秒で優勝したヘールト・スキパー(NED)は「完璧なレースを実現した」と語っていた。2位のフローリアン・ブルングラバー(AUT)とスイム、バイクは拮抗していたがランで引き離し、フィニッシュでは1分以上離した。

木村潤平(Challenge Active Foundation/東京)ミックスゾーンで「僕の日じゃなかった」 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生
木村潤平(Challenge Active Foundation/東京)ミックスゾーンで「僕の日じゃなかった」 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生


 日本の木村潤平(Challenge Active Foundation/東京)は、スイムでアクシデントがおき7位に終わった。「ウエットスーツが剥がれてしまって抵抗のあるまま泳いでいた。こんなトラブルめったにない。”僕の日”じゃなかった」と悔しい気持ちを語った。

女子PTWHはローレン・パーカーが優勝

女子PTWCの表彰式。1位:ローレン・パーカー(AUS)、2位:リアン テイラー(CAN)、 3位:ジェシカ フェレイラ(BRA) 写真・PARAPHOTO/山下元気
女子PTWCの表彰式。1位:ローレン・パーカー(AUS)、2位:リアン テイラー(CAN)、 3位:ジェシカ フェレイラ(BRA) 写真・PARAPHOTO/山下元気


 女子PTWCでは、4位までが激しい競い合いを展開したが、最終的にバイク、トランジッションでタイムを縮めたローレン・パーカーH1が2位以下を2秒離してフィニッシュ。2位〜4位は僅差だった。

ロシア、ウクライナ、イスラエルのアスリートが出場

PTVI ビタ・オレクシウク B1(UKR)とガイドのバイクパート 写真・PARAPHOTO/山下元気
PTVI ビタ・オレクシウク B1(UKR)とガイドのバイクパート 写真・PARAPHOTO/山下元気

 ビタ・オレクシウク B1(UKR)は、PTVIで7位だった。キエフにとどまり、週6回の練習をこなして参加してきた。

「今日のレースは、スイム、バイクは悪くなかったがランがともかく悪かった」と自己分析。ロシアの参加について、「ロシア選手が参加することは世界にとってよくない」と答えた。キエフでの練習は、警報とロケットに怯えて大変危険で思った通りの練習ができないと語ったが、やはり外の世界にでて活動するダイナミズムがトライアスロンの魅力だと語っていた。

女子PTS3の表彰式。個人資格で参加したロシアのアンナ・ プロトニコワ(AIN)がトータル1:17:02で優勝した(右)。2位はレイチェル・ワッツ(USA) 写真・PARAPHOTO/山下元気
女子PTS3の表彰式。個人資格で参加したロシアのアンナ・ プロトニコワ(AIN)がトータル1:17:02で優勝した(右)。2位はレイチェル・ワッツ(USA) 写真・PARAPHOTO/山下元気

女子PTS4、谷真海が復帰

女子PTS4は、ケリー・エルムリンガー(USA)が1:10:52のタイムで優勝。東京大会出場後、競技から離れていた谷真海(東京都トライアスロン連合)は今シーズンから復帰、1:15:03で5位でフィニッシュした。

バイクパートを走る谷真海(東京都トライアスロン連合) 写真・PARAPHOTO/山下元気
バイクパートを走る谷真海(東京都トライアスロン連合) 写真・PARAPHOTO/山下元気


 谷は1月から、北京2008オリンピック日本代表・庭田清美氏をコーチに心強い支援を手に入れ練習を始めた。

 この日の山下公園の天候は快晴で、気温は20.9度、水温は19.5度という申し分のない気候条件の下、レースが行われた。立位・座位・視覚障害のある22カ国から80名(男子42名・女子38名)の選手が、障害の種類と程度により男・女6クラスずつに別れ出場した。

 9月1日、2日に行われるパリパラリンピックに向けて、表彰台を目指す国々の意気込みが感じられる横浜での大会だった。タイムでは立位・座位・視覚障害の各クラスで個々の強みや技術を活かしてぶつかり合い、どのクラスにも優勝の可能性があると思わせる「競争の魅力」がある。パリパラリンピックへの予選の終盤と言うにふさわしいレースで、すべての選手にとって有意義なものとなったことは間違いない。

(取材編集協力・校正=地主光太郎、木下未希 写真=秋冨哲生、山下元気)

※この記事はPARAPHOTOに掲載したものをベースにしています。







国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表

パラスポーツを伝えるファンのメディア「パラフォト」(国際障害者スポーツ写真連絡協議会)代表。2000年シドニー大会から夏・冬のパラリンピックをNPOメディアのチームで取材。パラアスリートの感性や現地観戦・交流によるインスピレーションでパラスポーツの街づくりが進むことを願っている。

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