Yahoo!ニュース

北朝鮮軍傘下で「ドローン爆発」…中国から大量導入

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央通信)

北朝鮮の軍傘下でパイロットおよび航空専門家を養成している「新義州(シニジュ)航空倶楽部」で今月、ドローンの操縦訓練中に爆発事故があり、負傷者が出たという。

デイリーNKの現地情報筋によれば今月4日、新義州航空倶楽部の野外訓練基地がある義州(ウィジュ)郡で、20人余りの訓練生が2人1組でドローン操縦訓練をしていたところ、1組のリモコンとドローン本体が爆発する事態が起きた。

これにより訓練生2人が負傷し、直ちに病院に運ばれたが、大事には至らなかったという。

新義州航空倶楽部は今回の事故の原因を、今年9月に中国から大量に輸入したバッテリーとリモコンの品質不良と指摘したという。

情報筋によれば、同航空倶楽部は先月、朝鮮労働党平安北道(ピョンアンブクト)委員会の全面的な支援を受け、ドローンに装着するバッテリーや充電器など、さまざまな部品を、道内の貿易会社を通じて、中国から大量に買い付けたという。

北朝鮮軍のウクライナ派兵の動向が注目されている時期に、気になる情報ではある。

(参考記事:金正恩命令も完全無視…ウクライナ派兵「特殊部隊」のグダグダな実態

ちなみに、北朝鮮には全国に航空倶楽部が作られており、その表向きの名目は民間の「パラシューティング」の選手育成だ。着地の正確さを競ったり、複数競技者が隊形を変化させながら降下したりするエアスポーツのひとつである。

しかし、金正恩総書記が各地の航空倶楽部を視察する際には、ほぼ必ず軍首脳が脇を固めていることからも、軍事と無縁でないことがうかがえる。

一方、新義州航空倶楽部は今年、例年よりも早い8月13日からパラシュート降下訓練を開始し、地域住民の間で「戦争でも始まるのか」と不安の声が上がったという。

(参考記事:【写真】金正恩の愛娘「眼前で兵士ら墜落死」のおぞましい場面

従来であれば秋の収穫をすべて終え、整理された農地が訓練に使用されるのに、例年より10日も早く開始されたという。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

高英起の最近の記事