北朝鮮、公開処刑を大幅に減らす方針か…国際社会の風当たり強く
193の国連加盟国のうち、実質的に刑罰としての死刑を執行している国は、現在54カ国だ。そのうち、公開処刑を行っているのはサウジアラビア、イランなどごく一部に限られる。
北朝鮮もそのひとつだが、死刑制度そのものの廃止が世界的潮流となっている中での公開処刑だ。風当たりは当然強い。実際に一時期、公開処刑を自粛したこともあったが、その後の治安悪化を受けて再開された。
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そして北朝鮮は再び、公開処刑の抑制に動き出したもようだ。
デイリーNKの内部情報筋によると、司法機関の処刑基準を強化し、非公開処刑を制度化することについての「1号批准課題」が先月13日、国家保衛省(秘密警察)と社会安全省(警察庁)傘下の司法機関に下された。1号批准課題とは、金正恩総書記の承認を受けた事業のことを指す。
朝鮮労働党中央委員会と地方の党安全委員会が、公開処刑と非公開処刑の基準を明確に区分し、審査基準を強化して決定を下すように指示した。これについて、情報筋は次のように説明した。
「今まで公開処刑は、中央の包括的な検討なしに地方の党安全委員会の判断で迅速に承認されていたが、今後は中央の司法機関の包括的な批准と強化された審議を必ず経るようになった」
注目すべきは次の点だ。
「特別な事案を除いたほとんどの処刑は非公開で執行し、そのための批准審議の付則も制定した」
今までは地方の行政機関がてんでばらばらに決めていた公開処刑の可否判断を中央が集約し、今後は原則から外れた公開処刑を認めないというものだ。
この批准課題は、公開処刑、非公開処刑の基準を明確にする作業を経た後、来月1日から正式に施行されるという。
しかし、現場には異論があるようだ。公開処刑で恐怖を煽ることが、国民のコントロールに欠かせないというものだ。情報筋は、ある保衛員(末端の秘密警察)の話を次のように伝えた。
「公開処刑が住民を覚醒させるのに最も効果的だ」
「法よりも元帥様(金正恩氏)の一言で生死が決まるという認識は変えられない」
今回の第1号批准課題は、今月7日にスイスのジュネーブで行われた、北朝鮮の人権をテーマに開かれた国連の第4回普遍的・定期的審査(UPR)後に行われたという点で注目される。
今回の審査で、北朝鮮は公開処刑を実施していることを認めた。死刑は非公開が原則だが、例外がありうるというものだ。これは、北朝鮮が体制維持、住民統制の手段として依然として公開処刑方式を活用してきたことを示唆する。
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韓国のNGO「転換期正義ワーキンググループ(Transitional Justice Working Group=TJWG)」の法律分析担当のシン・ヒシク氏は、「北朝鮮は2019年の第3次UPRに続き、今回の第4次UPRでも凶悪犯の場合、被害者家族が希望すれば公開処刑をすると正当化したが、今回の批准課題指針は、それにもかかわらず、北朝鮮が国際社会の公開処刑批判を意識してこれを減らそうとしていることを示している」と述べた。
また「1号批准課題に被害者家族の意思に対する言及がないことを見ると、国連で被害者家族を口実にしているのではないかという疑念がある」「公開処刑の可否決定に党安全委員会の批准も必要であることが確認された点も意味がある」と述べた。