公的年金が変わる?改革による年金額への影響は?
2024年4月16日に厚生労働省の社会保障審議会年金部会が開催されました。会議のテーマは令和6年財政検証で、今後の公的年金の持続可能性や改定の方向性が示されています。少子化が収まらず、高齢者が多い現状が変化しない日本の公的年金は今後どうなるのでしょうか。
■そもそも財政検証って何?
財政検証、聞いたことあるような無いような専門用語のような名称です。厚生労働省の説明によると、公的年金の健康診断に相当するものとされています。概ね5年ごとに年金財政の持続可能性を維持する調査を行い、今後の見通しを発表しています。
公的年金の財源は、①保険料収入、②過去の積立金、③税金で賄われています。限られた財源の中で、年金を支払っています。当初手取りの7割程度であった年金の支給率は6割に減少し、今後5割に向けて推移しており、日本経済の行方によっては4割台に落ち込む可能性があります。
■2040年代に年金財源の不足から積立金の取り崩しが始まる
公的年金の財源における、保険料収入は段階ジュニア世代の引退(定年)を境に減少が明確になります。不足する財源として過去の積立金の取り崩しが始まります。
出典:https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001200632.pdf
■公的年金の抜本的な解決は4つしかない
(1)給付額を減らす
金額を減らすことは反対が多く非現実的です。実際に、過去に払いすぎてきましたが、減らすことができていませんでした。公的年金にはマクロ経済スライドという、物価上昇時に年金の実質的な支払い額を減らす仕組みが導入されています。そのため、今後継続的に物価が上昇すると、年金財政は改善されていきます。
(2)支給開始年齢を引上げる
既に公的年金は60歳の受給開始から、65歳受給開始へと支給開始年齢が引上げられています。5年支払いを遅らせることは、その間の就労が期待でき保険料収入の増加が期待されます。また、年金の支払いを遅らせることで、支給開始までに死亡する人が一定割合いることから給付対象者を減らす効果があります。
(3)保険料を増やす
最もわかりやすく年金財政を改善する可能性があるのが、年金保険料を増やすことです。物価上昇時に保険料負担を増やすことは難しいと考えられますが、賃金が増えれば付随して保険料収入も増えることから、賃金の引上げは長期的に年金財政の維持にプラスに働きます。
(4)経済を成長させる
経済を成長させることは、長期的に年金財政に貢献します。賃金の上昇による保険料の増加、積立金の運用における運用益の獲得、物価上昇に伴う実質的年金額の抑制など、年金財政全般的に好影響を与えます。
■今後の公的年金はどんな変化が起こりうるか
(あ)保険加入の適用拡大
既にニュースで見聞きした人もいるでしょうパート就労者への厚生年金の加入に力を入れています。保険料を納付していない第3号被保険者をいかに、保険料納付者に変えるかに腐心しています。子育て世帯や、フルタイムで働く事のできない人には苦しい変化と言えるでしょう。
(い)在職老齢年金制度の改定
年金を受給している高齢者が一定以上の収入を得ると年金が減らされるという就労意欲を削ぐ制度を改善し、年金を減らさないような仕組みへ変更していきます。これにより年金の給付額が増えますので、年金財源にはマイナス要因です。
(う)高所得者の保険料負担を増やす
厚生年金保険料には保険料の計算上、上限となる収入が決まっています。その計算根拠となる標準報酬月額の区分けを増やし高所得者には相応の保険料を負担してもらうようになる可能性があります。反対する人が少ないと思いますので、年金の改定はスムーズに導入に至ると予想します。
今後は、少子化以外の公的年金の対策は順次進んでいくでしょう。公的年金改定が進んでいくにつれて、年金財政の持続可能性は高まりますが、金融危機などが発生すれば積立金の多くが棄損し、年金財政が一気に不安定化する可能性があります。その際は、自助努力である企業型確定拠出年金、iDeCo、NISAでの投資内容もダメージを受けている可能性が高いため、株式市場が安定して価値を増やしていくことが期待されます。