Yahoo!ニュース

【3.11】継続支援って“無理ゲー”なんですかね?

安藤光展サステナビリティ・コンサルタント
企業の継続的な復興支援は“先細り”と言われるが…(写真:アフロ)

■東日本大震災から丸5年

この3月11日で、東日本大震災から丸5年となります。

政府サイドで設定した5年間という「集中復興期間」も終わり、企業の多くも慈善事業的な関わり方から、戦略的な取組みとして昇華すべく動き出した企業もいます。しかし、実際には、圧倒的に東北被災地との関わりを終了する(単発では支援する所もあるけど)企業が多いように感じます。

慈善活動的な取組みは、その行為自体は大変意義深いものの、企業側にほとんどメリットがなく継続継続が困難な状況(お金がある大手しかできない)が続いていたので、一旦休憩をして、今後、中長期的にどのように関わるべきか、改めて考える時期に来たのは間違いありません。

物事は“始める”より“継続”が難しいのです。

本記事では、5年間の情報アーカイブの紹介、企業のCSR(企業の社会的責任)活動事例、などについてまとめます。

※以降紹介するコンテンツの一部には、当時のそのままの画像・映像や音が流れるものがあります。気をつけてご視聴ください。

■情報アーカイブ

被災地の復興状況の詳細は、復興庁の「ウェブサイト」もしくは「復興5年ポータルサイト」でご確認ください。随分進んだ部分、まったく進んでいない部分なども確認できるし、「空から見る復興の状況について」というコンテンツの画像比較データは、現地に行っていない人でも分かりやすい資料かと思います。

東日本大震災の情報ウェブアーカイブについては、以下のコンテンツがかなりまとまっていて見やすいと思います。

国立国会図書館|NDL東日本大震災アーカイブ

NHK|地震発生から72時間

FNN|3.11 忘れない FNN東日本大震災アーカイブ

■Yahoo!、Amazon、Googleの取組み事例

あんまり褒めるとステマ扱いされますが、まずはYahoo!JAPANの事例から。当メディア運営主のYahoo!でも、東日本大震災関連の特集コンテンツを作っています。

Yahoo!JAPAN|Search for 3.11

Yahoo!JAPAN|東日本大震災と福島第一原発事故から5年

ウェブ系ニュースメディアで、ここまで復興支援関連の情報をまとめるのは日本でYahoo!だけです。手前味噌でもなんでもなく、この情報量のコミットメントはさすがだと思います。よく5年もいろんなプロジェクトを継続してますよね。

Amazon|記憶の継承

Amazonは、電子書籍などに情報をまとめ無料で本日より公開しています。まさか、Amazonがアーカイブ・プロジェクトをするなんて。CSR界隈では一切、その活動を聞いたことがなかったのですが、プラットフォーマーの日本法人でこのような取組みをするのは素晴らしいです。

Google|未来への学び

Google|未来へのキオク

Googleは自社テクノロジーを使った復興支援活動を行なっていました。震災直後から対応しており、この文脈では非常に評価の高い企業です。「Googleの東日本震災への取り組みは5年で終わらない、“Respond”“Remember”から長期的な“Rebuild”へ」という記事ではGoogleとして今後もコミットメントししていくとしておりました。

プラットフォーマーと呼ばれる企業たちは、自社の影響力の大きさを知っているので、こういった社会貢献活動は積極的に行なっているのですが、いわゆるコンプライアンス/ガバナンスの基本的なCSRだったり、人権・労働慣行などの情報開示は基本しないんですよね。実は。ですので、ソーシャルセクターでは人気でも、CSR界隈では非常に評価の低い企業となっています。もったいないですね、ここまで社会的インパクト出してるのに。

ちなみに、新聞系メディアはウェブに“アーカイブ的な記事”をアップしているものの、アーカイブ記事をまとめるコンテンツページがないため、結局アーカイブにはなっていないという。新聞系メディア企業は、もともと“後世に語り継ごう”的な発想をウェブに求めていないのでしょう。

■今後の目標

もちろん、地震発生から5年たったというのはただ期間で区切ったにすぎず、現場は5年だろうがなんだろうが日常に変わりはありません。また、東京商工リサーチの「“震災から5年”「東日本大震災」関連倒産状況」という記事によれば、今でも震災関連倒産が続いているとしています。

直接被害があった企業、間接被害で経営不振に陥ってしまった企業、復興支援を続ける企業、などなど、日本には様々な立場の企業がありますが、どの企業にも唯一共通していることがあります。それはあの時、誰もが当事者になった企業である、ということです。

ちなみに、原発事故の例はほとんど上げませんでしたが、昨年3月に、当メディア「Yahoo!ニュース・個人」の執筆者・編集部の方々と、福島第一原発の取材をまとめた「原発の現場は案外“普通”だった!? 地方創生と福島と東電の現状」を書いたのですが、今ではもっと進んで防護服なしで作業ができるようになったとか。実際にあの作業服を着て作業ってめっちゃ大変だったから、それ自体は関係者の努力の賜物だと思っています。

記事執筆のために、様々な調べものをしていく中で、改めて“自分なり”の継続をしていこうと感じました。まず、微々たる貢献ですが、今後も復興支援活動をしているNPO団体に寄付をしていきます。他にもこういったメディアで、東日本大震災の企業動向を紹介し、多くの人にその取組みを知ってもらう活度を続けていきます。

5年たって膨大な企業・個人の復興支援事例を見てきましたが、結局継続できている所は「身の丈にあった関係性作り」をしているのだとわかりました。あなたは、明日から、どんな関わり方をしていきますか?

サステナビリティ・コンサルタント

サステナビリティ経営の専門家。一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事。著書は『未来ビジネス図解 SX&SDGs』(エムディエヌ)、『創発型責任経営』(日本経済新聞出版)ほか多数。「日本のサステナビリティをアップデートする」をミッションとし、上場企業を中心にサステナビリティ経営支援を行う。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。1981年長野県中野市生まれ。

安藤光展の最近の記事